(読み)かつ

精選版 日本国語大辞典 「喝」の意味・読み・例文・類語

かつ【喝】

[1] 〘名〙 (「恐喝」の略語) 恐喝をいう、不良・盗人仲間の隠語。〔特殊語百科辞典(1931)〕
肉体の門(1947)〈田村泰次郎〉「かつ(脅喝)でまきあげるにゃまんじゅう(時計)が、てっとり早えが、足がつくのも早えからな」
[2] 〘感動仏語禅宗で、言語文字では表わしにくい心の働きを示したり、または修行者を叱り、どなりつけて導いたりするために用いる叫び声。転じて、広くどなる声。→一喝(いっかつ)
歌謡・松の葉(1703)四・寛濶一休「いっきうほっすふりあげて、なんぢふどうけなんぢふどけか、あつかかからかのかつととなへたまへば」

かっ‐・す【喝】

〘他サ変〙 声を大きくして責める。どなりつける。しかる。
※道元大和尚仮名法語(1250)向上臨済禅師、僧の門に入を見て、即喝す」

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デジタル大辞泉 「喝」の意味・読み・例文・類語

かつ【喝】[漢字項目]

常用漢字] [音]カツ(漢)
相手を制止するため大声でどなる。「喝破一喝大喝
やんやと声を掛ける。「喝采かっさい
おどす。「威喝恐喝恫喝どうかつ

かつ【喝】

[感]禅宗で、修行者をしかるときなどに大きな声で発する語。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「喝」の意味・わかりやすい解説


かつ

勢いのよい大きな声、人を叱咤(しった)する声、またその声を発すること。禅宗では中国唐代以降、種々の意味をもって使用され、師が言詮(ごんせん)(言語をもって仏法を説き明かすこと)の及ばぬ禅の極意(ごくい)を弟子に示すための方便として盛んに用いられた。その始まりは馬祖道一(ばそどういつ)・百丈懐海(ひゃくじょうえかい)の師資(師弟)間に行われたとされ、「黄檗希運(おうばくきうん)の棒」「臨済義玄(りんざいぎげん)の喝」と並び称され、言語、思慮を超えた悟境を示す手段とされた。とくに臨済宗門下では、「臨済四喝(りんざいしかつ)」とよばれる機関(指導の手段)としてまとめられ、修行の指標とされた。のちには葬儀の際の引導(いんどう)にも用いられるようになった。

[石川力山]

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改訂新版 世界大百科事典 「喝」の意味・わかりやすい解説

喝 (かつ)

大声でどなりつけること。叱る意。中国の禅宗で,師が弟子を導くのに,経典の講義や説法のほか,日常の挨拶や対話を重視して,言葉で叱り,棒で打つなど,直接行為に訴えるのがそれで,徳山の棒,臨済の喝はもっとも有名だが,そうした喝と棒をあわせて棒喝といい,禅の特殊教育の語となる。大喝一声,一喝を与えるなど,必ずしも叱るのではなくて,いきなり相手の仏性を喚起する場合もあり,そうした種々の用例を,金剛王宝剣(仁王の刀),探竿影草(魚をさそう),踞地金毛(獅子のねらい),不作一喝(声をださぬ喝)という,四つに分類する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「喝」の意味・わかりやすい解説


かつ

禅宗の僧侶が用いる叱声。参禅者を励まし導くのに用いる。また,言葉により表現できない絶対の真理を,「喝」によって表わす。

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