(読み)ホリ

デジタル大辞泉 「堀」の意味・読み・例文・類語

ほり【堀】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「堀」姓の人物
堀晃ほりあきら
堀杏庵ほりきょうあん
堀辰雄ほりたつお
堀麦水ほりばくすい

ほり【堀/×濠/×壕】

土地を掘って水を通した所。掘り割り。
敵の侵入を防ぐために、城の周囲を掘って水をたたえた所。
[類語]外堀内堀掘り割り釣り堀

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精選版 日本国語大辞典 「堀」の意味・読み・例文・類語

ほり【堀・濠・壕・塹】

  1. ( 動詞「ほる(掘)」の連用形の名詞化 )
  2. 地を長く掘って水を通した所。掘割り。
    1. [初出の実例]「堀四処」(出典:九条公爵家所蔵延喜式裏文書‐宝亀四年(773)二月三〇日・太政官符案)
  3. 掘りぐあい。
    1. [初出の実例]「うちの井戸は、掘りが浅いせいか」(出典:大道無門(1926)〈里見弴〉厄日)
  4. ( 「濠」「壕」とも書く ) 城などの周囲を掘って敵の侵入を防ぐ施設。必要に応じて水をたたえたりする。
    1. [初出の実例]「堀(ホリ)の上なる細橋さらさらと走渡り」(出典:太平記(14C後)六)
  5. 魚が産卵するために川底につくる小さなくぼみ。

ほり【堀】

  1. 姓氏の一つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「堀」の意味・わかりやすい解説

堀 (ほり)

濠とも書く。地面を長く線状に掘って,水をたたえ,また通した所で,運輸,防御,灌漑,給排水などを目的としてつくられた。水のない場合は空堀という。外敵から守るため,集落の周囲に堀を設けることは先史以来行われ,縄文・弥生時代の集落址にも周濠が認められるものがある。古代では,仁徳天皇が難波高津宮の北の原野を掘り,南の水(大和川)を引いて西の海(大阪湾)へ入れた堀江,斉明天皇が大和香具山の西から石上山まで,延べ約3万人の人夫を要して掘らせた〈狂心(たぶれこころ)の渠〉などの伝承があるが,664年(天智3)に大宰府防衛のために築かれた水城(みずき)は,高さ14m,延長1kmの土塁,東西の門址,礎石が残る。都城の建設においても,平城京・平安京の堀川や大内裏周囲に堀がつくられた。

 中世においては在地領主の居館や集落を囲む堀がつくられ,転じて土豪屋敷や集落を〈堀の内〉と呼んだ。環濠集落,環濠都市の例は数多いが,戦国時代の京都をみると,応仁の乱中に掘られた〈構(かまえ)〉をはじめとして,乱後も土御門内裏周囲に堀がつくられ,ついで上京,下京をめぐる巨大な〈惣堀〉が築かれた。〈惣構え〉とも呼ばれたこの堀は,堀と土塀とからなり,要所の出入口には木戸門,櫓を構えた。戦国時代の環濠を先蹤(せんしよう)として豊臣秀吉が1591年(天正19)に洛中全体を取り囲むように築いた堀と土居は延長22.5kmに達し,御土居と呼ばれた。寛永年間(1624-44)に六条三筋町から移転した遊郭島原も堀と塀で囲まれ,大門を開けていた。近世城下町の堀には,城郭をめぐる内堀,城下町を部分的に取り込んだ外堀,あるいはその中間にあたる中堀があり,その形状によって,長方形の箱堀,断面が逆台形状の薬研堀(やげんぼり),片方が垂直で片方が傾斜する片薬研堀などがある。中世,山城の空堀では,岸の傾斜の方式に毛抜き,堀込み,猿すべり,駒返しなどがあったという。

 大坂の町づくりの根幹をなしたのが豊臣氏の時代に掘られた大小の堀で,早くは新堀(のちの東横堀)があり,ついで天満堀川西横堀川,阿波堀川がつくられた。東横堀と西横堀を結び木津川へ通じる道頓堀は,河内久宝寺の豪商安井道頓が掘ったという。その後も京町堀や江戸堀などの運河が掘られ,上方経済の動脈となった。米,材木,貨物の運送路として利用された堀は,1611年(慶長16)に開削された名古屋の堀川,1614年角倉了以によって完成され京と伏見・淀川とを結ぶ高瀬川など,少なくない。内陸水面や低湿地では水田を造成するために堀が掘られ,木曾川下流の輪中地帯などにはこうしてつくられた掘上田(ほりあげた)が多い。また,福岡県柳川市など,有明海に面した広い干拓地を縦横に走る小運河も堀の一種といえよう。
執筆者:

都市や城郭や建物を囲む堀は建築の起源と同じくらい古く,たとえば,イラクのテル・グッバで発掘された円形建造物(前3000ころ)も環状の空堀で囲まれていた。古代エジプトの第12王朝(前1870ころ)にヌビアにつくられたブヘンBuhenの要塞は幅9m,深さ7mの空堀で囲まれ,第20王朝の神殿都市マディーナト・ハーブーMadīnat-Hābū(前1200ころ-前1160ころ)の煉瓦造の周壁も空堀で取り巻かれていた。初期の防備施設は土塁を築くことから始まり,土塁用の土を採掘するため,前方に自然に堀がつくられ,堀によって土塁の効果がさらに高められていた。アッシリア新バビロニア,古代ギリシア・ローマ時代には,強固な煉瓦造・石造の城壁が発展したため,堀は必ずしも設けられなくなった。しかし,コンスタンティノープルの全長7kmの大城壁(5世紀)では,二重の城壁の前に堀がつくられ,攻城機械の接近を防いだ。西欧中世初期の城郭では,ふたたび堀から掘り取った土で土塁を築く方法が一般化したが,後期には,攻城法の発展と普及が急速であったため,石造の高い城壁を築いた場合でも,さらに周囲を堀で囲んで防御力を高めることが通例となった。水利のよい場所では,もちろん堀を水で満たしたが,堀の主要な目的は,攻城機械とトンネル作戦による攻撃を防ぐことにあったから,空堀でも十分に役立ったのである。

 ルネサンス以降の城郭や城館は,大砲の発展によってほとんど防備性能を失ってしまい,堀の効能もおおいに薄れたが,それでも小規模な戦争や暴動に対しては有効であったし,都市の安全や治安にはかなり貢献していた。他方,城館や邸宅に多少とも中世城郭のイメージをつくり出すことが,なお領主や都市の尊厳を保つのに役立ったので,主として美的効果と心理的効果のために堀を設けることが18世紀までしばしば行われた。18世紀以降,都市建築の地下階の換気・採光のため,ドライ・エリアdry areaと呼ばれる空堀を設けることが一般化したが,電灯や換気設備の発展で今日では行われていない。

執筆者:

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日本歴史地名大系 「堀」の解説


ほり

[現在地名]上田市大字国分 字上堀・下堀

千曲川北岸で国分寺こくぶんじの南にあたる。近世には堀村とよんだ。東は上沢あげさわ村、西は踏入ふみいり村、南は千曲川を隔てて小牧こまき村、北は国分寺村と境をなす。下堀集落の北側に信濃国分寺跡があり、いま信濃国分寺史跡公園として保存されている。

千曲川沿いに北国脇往還が東西に通じ、往還に沿って東に下堀したぼり、西に上堀うわぼりの集落がある。寛永二年(一六二五)国分寺村から上沢村とともに分村したと伝える(国分村誌)。宝永三年(一七〇六)の小県郡指出帳国分寺村 上沢村 堀村(上田藩村明細帳)に、「堀村」として、総家数三五軒、人数男一三二人、女九三人がある。

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普及版 字通 「堀」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] クツ・コツ
[字訓] あな・ほり

[説文解字]

[字形] 形声
声符は屈(くつ)。屈は獣尾を屈する形。獣穴を掘り、尾を屈して穴に匿(かく)れる意。〔説文〕十三下に「なり」とあり、〔段注〕に穴中より犬の突出する意とする。(突)の初義はおそらく竈突(そうとつ)、地を掘りこんで竈(かまど)としたものであろう。〔説文〕はまた〔詩、曹風、蜉蝣〕「蜉蝣(ふいう)堀(くつえつ)」の句を引く。いま掘閲に作る。地中から脱皮してあらわれるをいう。

[訓義]
1. あな、けもののあな、虫の穴。
2. ほり。国語では、水を貯えた城池などをいう。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕堀 ホル・アバク 〔字鏡集〕堀 ホル・ホリタツ・アバク・ツク

[熟語]
堀閲・堀・堀虚・堀強・堀穴・堀室・堀
[下接語]
崇堀

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【城】より

…8世紀の陸奥の多賀城,それをとりまく桃生(ものう)城,伊治城,玉造柵などや,出羽の秋田城は丘陵に立地する平山城であり,9世紀の胆沢(いさわ)城,志波城は北に川をみる台地上での平城,徳丹(とくたん)城,城輪柵遺跡はまったくの平城で,払田(ほつた)柵遺跡では中央政庁を小丘に築き平地にをめぐらしている(図)。国府都城【坪井 清足】
【中世】
 戦国時代の城を例に城の基本的な構造を述べると,将兵の宿営する建物や倉庫を建てる場所,あるいは戦闘の足場や陣地を確保するために削平された平場が曲輪(くるわ)(郭)で,これを防御する施設としてや土塁のような普請(土木)物,柵,塀,(矢倉),木戸のような作事(建築)物が付属する。山城(やまじろ)では,自然の斜面やこれを補強した切岸が防御施設の代りになるので,堀(空堀,壕)や土塁の伴わない場合があるが,平城では地続きを遮断するための堀(水堀,濠)は不可欠の要素である。…

※「堀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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