多良岳(読み)タラダケ

デジタル大辞泉 「多良岳」の意味・読み・例文・類語

たら‐だけ【多良岳】

長崎・佐賀両県にまたがる火山群の主峰。標高996メートルで山頂付近に多良岳神社や金泉寺がある。最高峰経ヶ岳は1076メートル。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「多良岳」の意味・わかりやすい解説

多良岳
たらだけ

佐賀・長崎両県にまたがる多良火山群の主峰。標高996メートル。頂上は佐賀県藤津(ふじつ)郡太良町(たらちょう)に属する。多良岳信仰や修験道(しゅげんどう)の霊場で知られた名山。多良火山は、東は有明(ありあけ)海、西は大村湾に臨む円錐(えんすい)形の死火山であるが、山頂付近には、多良岳、経(きょう)ヶ岳(1076メートル)、五家原(ごかわら)岳(1057メートル)の三つの主峰がある。8世紀の『肥前国風土記(ひぜんのくにふどき)』にみえる塩田(しおた)川水源の「託羅(たら)の峰」は、多良岳北西方に続く多良火山地をさす。多良岳の凝灰角礫岩(かくれきがん)などの裾野(すその)は鹿島(かしま)市や太良町の佐賀県側有明海岸に広がり、放射谷のみごとな発達をみる。この裾野は国営多良岳パイロット事業で脚光を浴び、谷と谷との間の山林・原野などはミカン園などに急速に開発された。裾野末端の有明海岸に長崎本線や国道207号が通ずる。輝石安山岩類などの多良岳中腹奥地はスギヒノキなどの林業地をなし、多良岳横断林道もできた。佐賀・長崎両県とも多良火山地一帯を多良岳県立自然公園に指定している。多良岳山頂付近は多良岳神社や金泉寺(きんせんじ)などがある霊場で登山者が多く、また山腹にはススキの風配(かざはや)高原や、長崎県側の轟ノ滝(とどろきのたき)などの景勝地がある。東方裾野の太良町大浦(おおうら)で1962年(昭和37)7月、山崩(やまくず)れの大災害を経験した。多良岳民謡「岳(たけ)の新太郎(しんたろう)(ザンザ節)」などが知られる。

[川崎 茂]

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改訂新版 世界大百科事典 「多良岳」の意味・わかりやすい解説

多良岳 (たらだけ)

長崎・佐賀県境に位置する火山群。広大なすそ野は西は大村湾,東は有明海まで達しており,遠望すると一大成層火山の形態を示す。山体上部には東西6.5km,南北4kmにおよぶ凹地形があるが,これがカルデラであるか,単なる浸食地形であるかは不明。この凹地形の縁をなすように,遠目岳(849m),最高峰の経ヶ岳(1076m),多良岳(996m),五家原(ごかばる)岳(1057m)などの峰が連なる。山体主部はおもに角セン石安山岩質の火砕岩類と溶岩からなるが,山麓には基盤岩類とともに新期の玄武岩質溶岩が分布しており,有明海に面した竹崎はスコリア(岩屑)丘の形態をとどめている。しかし全体として古い火山であり,噴火の記録はなく,火山活動のなごりとしては北方山麓に嬉野(うれしの)温泉(重曹泉,92℃)があるのみである。多良岳は古くから修験道場として栄えた山であり,その面影を残す山頂の金泉寺は行基の開基と伝える。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多良岳」の意味・わかりやすい解説

多良岳
たらだけ

佐賀県長崎県の県境にあり,白山火山帯に含まれる円錐火山。頂上は佐賀県太良町に属する。火口爆裂のため臼状をなし,火口壁は最高峰の経ヶ岳(1076m),多良岳(983m)などの峰に分かれる。最下部は玄武岩,中層部は凝灰岩,上層部は安山岩からなる。放射状の谷が発達し,谷の下流部には集落,水田が開け,尾根の丘陵部には第2次世界大戦後ミカンやチャ(茶)の栽培が増加した。上層部には山林,原野が多く,ウシの放牧が行なわれる。多良岳の頂上には空海ゆかりの名刹金泉寺や多良岳権現の小祠があり,中世山伏の修験場となっていた。多良岳県立自然公園に属する。

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百科事典マイペディア 「多良岳」の意味・わかりやすい解説

多良岳【たらだけ】

佐賀・長崎県境にある成層火山。経ヶ岳(1076m),五家原(ごかばる)岳(1057m),烏帽子(えぼし)岳などの外輪山に囲まれた中央火口丘で,標高996m。下部は玄武岩,中層は凝灰岩,上層は安山岩を主とする。山麓は地滑りが多い。周辺では玄武岩採石,ミカン栽培,牛の放牧が盛ん。《肥前国風土記》には託羅之峰とある。
→関連項目小長井[町]高来[町]太良[町]

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事典・日本の観光資源 「多良岳」の解説

多良岳

(佐賀県藤津郡太良町)
21世紀に残したい日本の自然100選」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の多良岳の言及

【小長井[町]】より

…人口6797(1995)。多良岳の南東斜面に位置し,南東は有明海に臨む。農業が主産業で,1960年代以降ミカン栽培,乳牛,肉牛の飼養,養豚などが導入され農業の基幹をなしている。…

※「多良岳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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