宮城のこと。平安京、平城京のそれをさすことが多い。京の北部中央に位置し、大垣に囲まれて四面に宮城門が開く。内部には天皇の住む内裏、正庁の朝堂院、諸官衙(かんが)(官庁)があった。難波(なにわ)京、藤原京、平城京、長岡京では発掘調査がなされ、とくに平城京では構造の解明が進んでいる。また平安京では、全面的な発掘調査はむずかしいが、古図や江戸時代の有職故実(ゆうそくこじつ)家裏松光世(うらまつみつよ)(固禅(こぜん))の詳細な考証書『大内裏図考証』その他により、かなり明確に構成がわかっている。
[吉田早苗]
(奈良県橿原(かしはら)市)東西約925メートル、南北約906メートルで、大垣に囲まれていた。南面中央の南門の北に、回廊で囲まれた朝堂院、背後に内裏があり、西方に大規模な官衙があった。
[吉田早苗]
東西約1.3キロメートル、南北約1キロメートルで、東側の北4分の3が約270メートル張り出す。東寄り壬生(みぶ)門の北に朝堂院、その北に築地(ついじ)回廊に囲まれた約180メートル四方の内裏内郭があり、内部には紫宸(ししん)殿にあたる正殿など、多くの建物があった。朱雀(すざく)門北側の一画は発掘調査の結果中宮(ちゅうぐう)院にあたると考えられているが、まだ性格は明らかになっていない。また中宮院北の大膳職(だいぜんしき)その他の官衙や、東院(東に張り出した部分)では大規模な園池などが確認された。
[吉田早苗]
(京都府向日(むこう)市)東西約1150メートル、南北約1440メートルで大垣に囲まれ、中央南部の朝堂院は他に比べて小規模で、朝堂は八堂であった。朝堂院東方に約160メートル四方の内裏があり、内裏、朝堂院とも平城宮、難波宮からの移築であった。
[吉田早苗]
東西384丈(約1164メートル)、南北460丈(約1394メートル)で、築地(ついじ)を周囲に巡らし、その外側には御溝水(みかわみず)が流れていた。築地には南北面に各3、東西面には各4、計14の宮城門が開いていた。正門である朱雀門を入ると広場があり、正面に朝堂院があり、奥に正殿の大極殿(だいごくでん)が建ち、朝堂院の西には豊楽(ぶらく)院が並んだ。内裏は長岡宮と同じく朝堂院の北東方にあり、南寄りに紫宸殿など公的な建物が並び、北側に清涼(せいりょう)殿などの天皇の私的な殿舎があり、各殿舎は廊で結ばれていた。官衙は太政(だいじょう)官などの主要なものが朝堂院の東に、大蔵省関係が大内裏北部にあった。なお、朝堂院などは1177年(治承1)、内裏は1227年(安貞1)に焼亡したのちは再建されなかった。
[吉田早苗]
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12世紀以降現れる用語で,内裏をさす。中世から宮城の意味で使われるようになった。内部のプランは,天皇の日常居所である内裏,国家的な儀式の場である朝堂院(大極(だいごく)殿が正殿),饗宴の場である豊楽(ぶらく)院,諸官司から構成されている。内裏・大極殿・朝堂院という宮城の中枢部は前期難波宮から存在したが,長岡宮以降,内裏と朝堂院は分離した。これは天皇の日常政務の場と国家的儀式の場の分化という変化にともなう変更である。平安宮のプランは当初から基本的に変化はなかった。10世紀以降,日常的に使用されるのは,内裏を中心とした部分だけとなり,院政期に天皇が里内裏に移り,儀式・祭祀のときだけ内裏に遷御するようになると荒廃し,1227年(安貞元)の焼失により廃絶した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…日本の都城制における皇宮を中核とする一区画。中国唐代の長安城や洛陽城では宮城と,官衙区域である皇城が前後に城壁で区画されているが,日本の場合は,都城の中央北寄りの方形の一区画内に,天皇の私的な住居である内裏(だいり)と,本来政治を執る場所であった朝堂院,および官衙に相当する曹司が混在するのが原則で,それはまた大内裏ともよばれた。 宮城の四周は築垣と周濠で囲まれ,一辺に3門ずつを開くのが原型で,南面中央を朱雀門と呼んだ以外は,各門はその守衛を担当した氏の名にちなんで壬生(みぶ)門,的(いくは)門,建部(たけるべ)門などと称したが,平安宮では美福門,郁芳門,待賢門などと改名された(宮城十二門)。…
※「大内裏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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