太平楽(読み)タイヘイラク

デジタル大辞泉 「太平楽」の意味・読み・例文・類語

たいへいらく【太平楽】

雅楽。唐楽太食たいしき調で新楽中曲朝小子ちょうこし・武昌楽・合歓塩がっかえんからなる合成曲。舞は四人舞。即位大礼のあとなどに演じる。番舞つがいまい陪臚ばいろなど。武昌破陣楽。
[名・形動]が悠長な曲とされたところから》勝手なことを言ってのんきにしていること。勝手気ままにふるまうこと。また、そのさま。太平。「酒を飲みながら太平楽を並べる」「太平楽な暮らしぶり」
[類語]気楽のんき安楽安閑左団扇能天気気軽気軽いのうのうのほほんぬるま湯につかる

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精選版 日本国語大辞典 「太平楽」の意味・読み・例文・類語

たいへいらく【太平楽】

  1. [ 1 ] 舞楽の一つ。左方の舞楽。楚の項荘・項伯の両名が鴻門の会のとき、剣を抜いて舞ったのを模したという。音楽は、太食(たいしき)調の朝小子(ちょうこし)を序、武昌楽を破、合歓塩(がっかえん)を急として連続演奏する。舞人四人は甲冑姿で太刀をおび、桙を持って舞台に上る。その舞姿は勇壮、衣装は豪華なもので、即位の大礼後の饗宴などに演奏された。
    1. 太平楽<b>[ 一 ]</b>〈舞楽図〉
      太平楽[ 一 ]〈舞楽図〉
    2. [初出の実例]「宴群臣於西閣。奏五帝太平楽」(出典:続日本紀‐大宝二年(702)正月癸未)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 )
    1. 好き勝手なことやでたらめな言い分。また、それをいうことや、そのさま。
      1. [初出の実例]「一体お前がこんな内で太平楽おっしゃるからぢゃ」(出典:浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)二)
    2. 勝手気ままな振舞い。また、そのさま。
      1. [初出の実例]「是気をよくして居れば太平楽な」(出典:洒落本・美地の蛎殻(1779))

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改訂新版 世界大百科事典 「太平楽」の意味・わかりやすい解説

太平楽 (たいへいらく)

雅楽・舞楽の曲名。唐楽に含まれ太食(たいしき)調。四人舞の武ノ舞。《武昌太平楽》《武将破陣楽》《項荘鴻門曲》《五方獅子舞》《城舞》などの別名がある。番舞(つがいまい)は《陪臚(ばいろ)》。《万歳楽(まんざいらく)》とともにめでたい曲として天皇の即位式に奏されてきた。中国風に武装した豪華な出立(いでたち)で舞う。面は用いない。甲をかぶり,鎧をつけたうえに肩喰(かたくい)(木製の獅子頭を模したもの)を肩に,帯喰(おびくい)(木製の鬼の面)を帯の前面につける。さらに魚袋(ぎよたい)(木製の魚)を肩から前面にさげ,籠手(こて),脛当(すねあて)をつけ,胡籙(やなぐい)(矢を納める入れもの,ただし矢は逆に入れ,平和のシンボルとする)を背負い,太刀を腰に収め,鉾を手に舞う。曲の起源や由来は諸説あり,一説に漢の高祖のころ,高祖と項羽の間に争いが起き,鴻門に双方が集まって宴を催した。そのとき,項羽の家臣が剣を抜いて舞を舞い,高祖を討つ機会を待っていたが,項伯(項羽の叔父)が同じく舞を舞いながら袖でその剣をはさんで防いだという故事によるとする。序破急の3楽章が別々の曲で構成される特殊な曲で,演奏次第は,太食調調子・音取(ねとり)-道行《朝小子(ちようこし)》(延四拍子,舞人は鉾を手に登場)-破《武昌楽》(延八拍子,鉾を持って舞う)-急《合歓塩(がつかえん)》(早四拍子,鉾を床に置き,太刀を抜いて舞う)-急の重吹(しげぶき)(再び鉾を持ち,舞いながら退場)。管絃の曲としては《朝小子》《武昌楽》《合歓塩》の3曲が独立してある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「太平楽」の意味・わかりやすい解説

太平楽
たいへいらく

雅楽の曲名。別名を「武将破陣楽」「武昌太平楽」「頂荘鴻曲」「五方獅子舞」「城舞」ともいう。唐楽、太食(たいしき)調。四人舞で、道行(みちゆき)・破・急にそれぞれ『朝小子(ちょうこし)』『武昌楽』『合歓塩(がっかえん)』という曲をあて、組曲形式をとる。代表的な武の舞で、漢の高祖が項羽を討ち天下を統一したさまを描く。太食調調子ののち、序にあたる『朝小子』では4人が一列縦隊でゆっくりと登台、『武昌楽』では鉾(ほこ)を手に勇壮に舞う。『合歓塩』では軽快に曲を繰り返すうちに金の太刀(たち)を抜く。降台は「重吹(しげぶき)」と称して当曲の『合歓塩』をふたたび奏し、また一列縦隊で行う。装束は別装束で、鎧(よろい)、兜(かぶと)、肩喰(かたくい)、各種の武具など約16種、15キログラムにも及ぶ。胡籙(やなぐい)の矢は矢尻(やじり)を上に向けて平和の象徴とする。番舞(つがいまい)は『陪臚(ばいろ)』。

[橋本曜子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太平楽」の意味・わかりやすい解説

太平楽
たいへいらく

日本の雅楽の曲名。唐楽,太食 (たいしき) 調に属する。『朝小子 (ちょうごし) 』『武昌楽 (ぶしょうらく) 』『合歓塩 (がっかえん) 』という独立した3つの楽曲を,道行,破,急に配した大規模な舞楽曲。舞人が戦いにのぞむ姿で舞う「武の舞」の代表曲である。4人舞。舞人は,緋色の袴をはき,金色の鎧,冑を着け,太刀を帯び,鉾を持つ。非常に華麗な装束で,勇壮活発に舞う。まず「太食調調子」の序奏ののち順々に鉾を取って『朝小子』を伴奏に舞人が登台し,出手 (でるて) ののちひざまずいて鉾を置き,向い合せに立つ。次に『武昌楽』で鉾を持って舞い,最後に『合歓塩』では最初剣印を結んで舞い,途中で太刀を抜いて勇ましく舞う。乱声吹止の間に太刀を納め,あらためて鉾を持ち,合歓塩を重ねて奏する (重吹〈しげぶき〉) うち,入綾 (いりあや) で退場する。

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百科事典マイペディア 「太平楽」の意味・わかりやすい解説

太平楽【たいへいらく】

雅楽舞楽の曲名。太食(たいしき)調の唐楽。《朝小子(ちょうこし)》《武昌楽(ぶしょうらく)》《合歓塩(がっかえん)》という3曲を,道行,破,急の3楽章に配したもの。甲冑(かっちゅう)に鉾(ほこ)と太刀(たち)をもって勇壮に4人で舞うもので,武の舞の代表的な曲。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「太平楽」の解説

太平楽
(通称)
たいへいらく

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
富士朝間太平楽
初演
享保6.11(京・重巻和歌浦座)

太平楽
たいへいらく

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
元禄7.1(江戸・松平大和守邸)

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「太平楽」の解説

たいへいらく【太平楽】

秋田の日本酒。酒名は、雅楽の武舞「太平楽」に由来。平成2、7、17年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。蔵元の「太平楽酒造店」は昭和13年(1938)創業。所在地は大館市泉町。

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世界大百科事典(旧版)内の太平楽の言及

【舞楽装束】より

…冠,蛮絵の刺繡(ししゆう)のある袍,下襲,表袴,赤大口,金帯または銀帯,笏,糸鞋,以上で一具となるが,特殊なものとして,《春庭花(しゆんでいか)》(《春庭楽》の二帖のときの曲名)の場合は,太刀も用いる。(3)別装束 個々の曲に固有の装束で,左方では,《散手(さんじゆ)》《抜頭(ばとう)》《陵王》《胡飲酒(こんじゆ)》《蘇莫者(そまくしや)》《還城楽(げんじようらく)》《打球楽(たぎゆうらく)》《青海波》《採桑老(さいそうろう)》《太平楽》等,右方では,《貴徳》《還城楽》《抜頭》《納曾利(なそり)》《八仙》《林歌(りんが)》《陪臚(ばいろ)》等が別装束を用いる。このうち《青海波》《太平楽》《採桑老》《八仙》《林歌》以外は裲襠(りようとう)装束といわれる古代の貫頭衣(かんとうい)で袍の上に着用し,毛縁(けべり)と金襴縁(きんらんべり)とがあり,毛縁は《散手》《抜頭》《陵王》《胡飲酒》《蘇莫者》《還城楽》《貴徳》《納曾利》で用い,赤,茶,黄,紺の元白の染め分けでできた毛(生絹)で縁どられており,胸と背にある2個ずつの丸紋の中には,《陵王》は竜,《納曾利》は鳥,《抜頭》《散手》等は唐花の図案化されたものがそれぞれ織り出されており,唐織物である。…

※「太平楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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