(読み)ソ

デジタル大辞泉 「租」の意味・読み・例文・類語

そ【租】[漢字項目]

常用漢字] [音](漢) [訓]みつぎ
田畑の収穫に対して割り当てる税。年貢。また、一般に税金。「租税課租貢租地租田租納租免租・公租公課」
土地や家を借りる。「租界租借
[名のり]つみもと

そ【租】

律令制における基本的物納課税の一。口分田位田功田などに課され、田一段につき稲二束二把(のち一束五把)を納めるもの。正倉に蓄積されて、毎年出挙すいこによる利稲は地方各国の財源となった。→よう調ちょう

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精選版 日本国語大辞典 「租」の意味・読み・例文・類語

そ【租】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 税金。年貢。〔史記‐馮唐伝〕
  3. 令制の税の一種。公民に班給された口分田に対して課税されるもので、他の庸・調・雑徭が人身課税であるのと対照をなす。養老令(田令)では一段の公定収穫五〇束に対し二束二把を徴集する規定であるが慶雲三年(七〇六)格以降一束五把で、課税率は約三パーセントとなる。租は諸国の正倉(しょうそう)に納められて正税と呼ばれ、中央政府に送らず、その国の経費に用いられた。田租。たちから。→輸租田
    1. [初出の実例]「租弐仟玖伯捌拾弐束肆把半」(出典:正倉院文書‐天平二年(730)大倭国正税帳)
    2. 「頻年不稔、民弊特甚、非租、何得自存」(出典:日本後紀‐大同三年(808)九月庚子)

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普及版 字通 「租」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音]
[字訓] みつぎ・かりしろ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は且(そ)。〔説文〕七上に「田賦なり」とあり、田租をいう。金文に且を租の義に用いる例がある。もと薦俎の料として農穀を納めさせ、それがのち租税となった。

[訓義]
1. みつぎ、ねんぐ。
2. かりしろ。
3. (ちよ)と通じ、たくわえる、つむ。
4. 作と通じ、なす、はじめる。

[古辞書の訓]
名義抄〕租 ツム 〔字鏡集〕租 オホチカラ・カシヅク・ツム

[語系]
租tza、且・tziaは声近く、薦の料として納付する農穀を租という。

[熟語]
租委・租屋・租価・租課・租界・租額・租金・租銀・租契・租絹・租貢・租穀・租借・租銖・租芻・租税・租籍・租秩・租調・租賃・租田・租入・租費・租賦・租布・租米・租奉・租庸・租徭・租料・租禄
[下接語]
官租・欠租・租・減租・公租・貢租・催租・歳租・市租・収租・出租・除租・征租・税租・地租・徴租・田租・不租・賦租・米租・本租・免租・輸租・庸租

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改訂新版 世界大百科事典 「租」の意味・わかりやすい解説

租 (そ)

土地の生産物(穀物)を徴収する古代・中世の税。上代では什一(1/10)税の通念が存したが,漢初には1/15,のち1/30が定率となり,六朝ではときに畝当り何升と定められることもあったが,多くは戸調として戸等に応じ戸当り一定額を徴された。北魏で均田法が行われると,丁男・丁妻に対し一定額の租を課することとなり,唐制では丁当り粟2石を標準とし,8世紀末の両税法採用に至り廃された。近世では地主に納付する小作料を一般に租とよぶ。
執筆者:

古代において田に課せられた税。古訓ではタチカラ。田租ともいう。田地からの収穫物の一部を初穂として首長に貢納する慣行から発生したと推測されている。大化前代の国造領にも,田租に相当する税制が存在した可能性が強く,大宝律令以前に,100代の田地から3束の稲を徴収する租法が成立していた。大宝律令では度量衡を改めたので,1段の田地から2束2把の租稲を徴収することとしたが,それ以前の100代から3束を徴収する制度と,実質は同じであった。ただし度量衡の変更によって種々の混乱が生じたので,706年(慶雲3)に〈束〉の量を律令制以前の制度に戻し,1段の田地から1束5把,2段(律令制以前の100代に相当)から3束の租稲を徴収することとした。班田収授法では6歳以上の男子に口分田を2段ずつ班給することになっていたが,上質な田の標準収穫量は2段につき100束であったので,田租3束はその3%にあたる。このように田租の率は低く,国衙の倉庫に収積されて賑給(しんごう)などにあてられるほかは,積極的な財政機能を果たさなかった。

 田租は成年男子に対して課せられる調庸とは異なり,田の面積に応じて課せられ,しかも田租の負担者は,田主(口分田の場合には班給された人)ではなく,佃人(実際の耕作人)であった。唐の律令では租は調庸とともに課役(かえき)を構成したが,日本の律令では租は課役に含まれなかった。このような律令時代の田租の性格は,初穂を首長に貢納する原初的な田租の性格を受け継いでいるものと考えられ,水田の開発と維持が首長を中心とする共同労働に依存する度合が高く,個々の農民の水田に対する権利が弱かったことを反映するものと考えられる。
執筆者:

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「租」の解説


田租(でんそ)とも。古訓はタチカラ。律令制下,田の面積に応じて課した税目。1段あたり2束2把(不成斤。成斤では1束5把)で,当時の収穫量の3~5%に相当。各地の収穫の時期に応じて,9月中旬~11月末までに諸国の郡衙におかれた正倉に納められた。全国的な施行は大宝令施行後である。基本的には令の規定どおり奈良時代を通じて穎稲(えいとう)の形状で納められ,租相当量の穎稲を糙成(ぞうせい)して稲穀化し,大税(たいぜい)(734年の官稲混合で正税として一本化)として蓄積するのが原則。708年(和銅元)以降は満倉になったものから不動穀として使用を禁止した。起源については,神に年初の収穫を奉納する初穂(はつほ)儀礼が共同体の首長へ貢納する税となり,大和政権の「タチカラ」をへて,律令制の租にうけつがれたとみる考え方が有力。

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旺文社日本史事典 三訂版 「租」の解説


律令制下,口分田などに課された租税。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「租」の意味・わかりやすい解説

租[日本]
そ[にほん]

「租・庸・調[日本]」のページをご覧ください。


租[中国]
そ[ちゅうごく]

「租・庸・調[中国]」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【租】より

…上代では什一(1/10)税の通念が存したが,漢初には1/15,のち1/30が定率となり,六朝ではときに畝当り何升と定められることもあったが,多くは戸調として戸等に応じ戸当り一定額を徴された。北魏で均田法が行われると,丁男・丁妻に対し一定額の租を課することとなり,唐制では丁当り粟2石を標準とし,8世紀末の両税法採用に至り廃された。近世では地主に納付する小作料を一般に租とよぶ。…

【課役】より

…課は割り当てて徴収する,役は労役に徴発する意味の動詞,名詞で,これを組み合わせて公課の主体を指称した。その内容は(丁あたり粟2石)と調(丁あたり絹2丈,あるいは麻布2丈5尺,それに付属物として絹糸,綿(まわた)あるいは麻糸が加わる)および役(年間20日間の力役,中央政府が徴発し主都の建設,土木工事等に使われる)の3種よりなる。役は1日当り3尺の絹(あるいは3尺7寸5分の麻布)に換算代納されるのが一般となり,これはと呼ばれ,課役は租庸調を意味するようになった。…

【官田】より

…(2)879年(元慶3)に五畿内諸国に設置された計4000町の田地の名称で,官人給与にあてる田地。この官田は正長に請け負わせ,営料を与えて所定の穫稲を収取する直営的経営の方式と,地子(じし)制または賃租制による方式とがある。881年(元慶5)には官田の一部を割いて,諸司要劇(ようげき)料(もとは多忙な劇官に給銭,後に一般化した)と番上粮料等にあてた。…

【租庸調】より

…その完成形態を示す唐の〈開元賦役令〉によりその大体を略述すると,まず徴収対象は九品以上の官人や王公貴族および旌表者(忠孝節義を表彰された者),僧侶道士と身体障害者,部曲・奴隷等の賤民を除く良民の男子正丁に限定され,対象者(課口)でも,老親などのめんどうをみる者(侍丁),服喪者,兵士,色役(しきえき)従事者等は実際の徴収を免除された(見不輸(げんふゆ))。 次に税額は毎丁が粟(あわ)2石(約60l),調が絹(けん)・綾(りよう)・絁(し)というきぬで2丈と綿(まわた)3両,非養蚕地では麻布2丈5尺と麻糸3斤,は力役20日分(閏年には22日分)の代納で1日当り絹3尺または麻布3尺7寸5分の割で,計絹1匹2丈(=6丈),麻布1端2丈5尺(=7丈5尺)となり,調庸は併せて一括徴収されるから,毎丁絹2匹(約24m)あるいは麻布2端(約30m)の負担である。調庸については地域別に特産品で代納することが行われ,嶺南で銀に代えて納入された実物が西安何家村遺跡で発見された。…

※「租」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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