デジタル大辞泉
「寄せる」の意味・読み・例文・類語
よ・せる【寄せる】
[動サ下一][文]よ・す[サ下二]
1 近づく。寄る。また、攻めて近くに迫る。「波が岸辺に―・せる」「敵勢が―・せて来る」
2 (普通「よせてもらう」「よせていただく」の形で)訪問する意のへりくだった言い方。「今夜―・せてもらいます」
3 ある物を別の物の近くへ寄らせる。近づける。「耳へ口を―・せて話す」「肩を―・せる」「北へ―・せて家を建てる」
4 一か所に集める。まとめて一緒にする。「客を―・せる」「額にしわを―・せる」「義援金が―・せられる」
5 意見・情報などを送り届ける。手紙・文章などを送る。提供する。「回答を―・せる」「便りを―・せる」
6 数を加える。足す。寄せ算をする。「二と二を―・せると四になる」
7 愛情・興味・好意などの気持ちをいだく。思いをかける。「同情を―・せる」「思いを―・せる」
8 頼って一時的に世話になる。「友人宅に身を―・せる」
9 あることに関係づける。かこつける。「他人のことに―・せて文句を言う」
10 性質や特徴をまねて近づける。「かつての人気商品に―・せたデザイン」
11 寒天・葛・ゼラチンなどで、魚のすり身・卵・豆などの材料を固めたり、形づくったりする。
12 おしつける。
「諸の神罪過を素戔嗚尊に―・せ」〈神代紀・上〉
[類語](1)押し寄せる・打ち寄せる・寄せては返す・うねる・荒れ狂う・迫る/(5)送る・届ける・送り付ける・送り届ける・送付する・送達する・発送する・託送する・郵送する・差し出す・仕向ける(便りを)出す・遣る
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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よ・せる【寄】
- [ 1 ] 〘 他動詞 サ行下一段活用 〙
[ 文語形 ]よ・す 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙- [ 一 ] ある物や場所、また、ある側に近づける。
- ① ある所、ある物に近づける。近寄せる。
- [初出の実例]「多胡の嶺に寄せ綱延(は)へて与須礼(ヨスレ)どもあにくやしづしその顔よきに」(出典:万葉集(8C後)一四・三四一一)
- 「御車をよせて、とうとうと申せば、心ならずのり給ふ」(出典:平家物語(13C前)二)
- ② ひと所に集める。寄せ集める。
- [初出の実例]「玉の緒のくくり縁(よせ)つつ末つひに行きは別れず同じ緒にあらむ」(出典:万葉集(8C後)一一・二七九〇)
- 「名所・旧跡の題目ならば、その所によりたらんずる詩歌の、言葉の耳近からんを、能の詰め所によすべし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)六)
- ③ おとずれさせる。立ち寄らせる。近くに来させる。
- [初出の実例]「一条の院に造らせ給ひたる一間のところには、にくき人はさらによせず」(出典:枕草子(10C終)二九二)
- ④ 基準とする位置からある側の方へ近づける。片寄せる。
- [初出の実例]「北によせて障子をへだてて阿彌陀の絵像を安置し」(出典:方丈記(1212))
- ⑤ 身をゆだねる。まかせる。
- [初出の実例]「敬憚(かしこま)りて心を傾け、命を委(ヨセ)て忠誠(まめなる心)を尽くすことを冀ふ」(出典:日本書紀(720)継体即位前(前田本訓))
- ⑥ 寄進する。寄付する。また、贈る。送り届ける。
- [初出の実例]「応下以二伊勢国飯野郡一寄中大神宮上事」(出典:類聚三代格‐一・寛平九年(897)九月一一日)
- 「御門大に感じおぼしめして、五百町の田代を育王山へぞよせられける」(出典:平家物語(13C前)三)
- ⑦ 数を加える。寄せ算をする。
- [初出の実例]「マ大掴(おほづか)み合せて五十円フーム成る程五十円(と折角加(ヨセ)た数を減茶(めっちゃ)にして五十円と置く)」(出典:守銭奴の肚(1887)〈嵯峨之屋御室〉六)
- ⑧ 寒天や、くず粉などで、魚のすり身・卵・豆などの材料を固めたり形づくったりする。
- [ 二 ] ある物事の方に気持を傾ける。
- ① 気持を対象に傾ける。慕う。また、頼りにしたり味方にしたりする。
- [初出の実例]「大伴の名に負ふ靫(ゆき)帯びて万代にたのみし心いづくか寄(よせ)む」(出典:万葉集(8C後)三・四八〇)
- 「日来心をよせ奉りし月卿雲客両方に引わかって」(出典:平家物語(13C前)八)
- ② ある気持、考えなどを、ある物事に対して持つ。
- [初出の実例]「首を稽(いた)し誠を帰(ヨセ)心を至して、彼の諸の世尊を礼敬したてまつる」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)三)
- ③ ある物事に形を借りて、気持を表わす。
- [初出の実例]「あとの白波に、この身をよする朝には、岡の屋にゆきかふ船をながめて、満沙彌が風情を盗み」(出典:方丈記(1212))
- ④ 口実にする。ある物に関係づけて言う。かこつける。
- [初出の実例]「横川にかよふ道のたよりによせて、中将ここにおはしたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
- ⑤ ことづける。依頼する。委託する。
- [初出の実例]「因て其の地を封(ヨセル)こと良以なり」(出典:日本書紀(720)継体二三年四月(前田本訓))
- ⑥ 罪をかぶせる。科する。
- [初出の実例]「諸の神たち罪過(つみ)を素戔嗚尊に帰(ヨセ)て」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
- ⑦ 関連づける。特に、ある人について異性と関係があるとうわさする。また、比較する。
- [初出の実例]「葛飾の真間の手児奈をまことかもわれに余須(ヨス)とふ真間の手児奈を」(出典:万葉集(8C後)一四・三三八四)
- ⑧ ( 特に、歌論用語として ) 関連づける。縁語化する。
- [初出の実例]「右おなじなみあるに、岸によせたればたよりあり」(出典:袋草紙(1157‐59頃)下)
- [ 2 ] 〘 自動詞 サ行下一段活用 〙
[ 文語形 ]よ・す 〘 自動詞 サ行下二段活用 〙- ① (波が)岸などに迫り近づく。打ち寄せる。
- [初出の実例]「高浜に 来寄する波の 沖つ波 与須(ヨス)とも寄らじ 子らにし寄らば」(出典:常陸風土記(717‐724頃)茨城・歌謡)
- ② (軍勢が)ある場所に迫り近づく。押し寄せる。
- [初出の実例]「すはや源氏の大勢のよするは」(出典:平家物語(13C前)五)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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