寄せる(読み)ヨセル

デジタル大辞泉 「寄せる」の意味・読み・例文・類語

よ・せる【寄せる】

[動サ下一][文]よ・す[サ下二]
近づく。寄る。また、攻めて近くに迫る。「波が岸辺に―・せる」「敵勢が―・せて来る」
(普通「よせてもらう」「よせていただく」の形で)訪問する意のへりくだった言い方。「今夜―・せてもらいます」
ある物を別の物の近くへ寄らせる。近づける。「耳へ口を―・せて話す」「肩を―・せる」「北へ―・せて家を建てる」
一か所に集める。まとめて一緒にする。「客を―・せる」「額にしわを―・せる」「義援金が―・せられる」
意見・情報などを送り届ける。手紙・文章などを送る。提供する。「回答を―・せる」「便りを―・せる」
数を加える。足す。寄せ算をする。「二と二を―・せると四になる」
愛情・興味・好意などの気持ちをいだく。思いをかける。「同情を―・せる」「思いを―・せる」
頼って一時的に世話になる。「友人宅に身を―・せる」
あることに関係づける。かこつける。「他人のことに―・せて文句を言う」
10 性質や特徴をまねて近づける。「かつての人気商品に―・せたデザイン」
11 寒天くずゼラチンなどで、魚のすり身・卵・豆などの材料を固めたり、形づくったりする。
12 おしつける。
もろもろかむたち罪過つみ素戔嗚尊すさのをのみことに―・せ」〈神代紀・上〉
[類語](1押し寄せる打ち寄せる・寄せては返す・うねる荒れ狂う迫る/(5送る届ける送り付ける送り届ける送付する送達する発送する託送する郵送する差し出す仕向ける(便りを)出す

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「寄せる」の意味・読み・例文・類語

よ・せる【寄】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]よ・す 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙
    1. [ 一 ] ある物や場所、また、ある側に近づける。
      1. ある所、ある物に近づける。近寄せる。
        1. [初出の実例]「多胡の嶺に寄せ綱延(は)へて与須礼(ヨスレ)どもあにくやしづしその顔よきに」(出典万葉集(8C後)一四・三四一一)
        2. 「御車をよせて、とうとうと申せば、心ならずのり給ふ」(出典:平家物語(13C前)二)
      2. ひと所に集める。寄せ集める。
        1. [初出の実例]「玉の緒のくくり縁(よせ)つつ末つひに行きは別れず同じ緒にあらむ」(出典:万葉集(8C後)一一・二七九〇)
        2. 「名所・旧跡の題目ならば、その所によりたらんずる詩歌の、言葉の耳近からんを、能の詰め所によすべし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)六)
      3. おとずれさせる。立ち寄らせる。近くに来させる。
        1. [初出の実例]「一条の院に造らせ給ひたる一間のところには、にくき人はさらによせず」(出典:枕草子(10C終)二九二)
      4. 基準とする位置からある側の方へ近づける。片寄せる。
        1. [初出の実例]「北によせて障子をへだてて阿彌陀の絵像を安置し」(出典:方丈記(1212))
      5. 身をゆだねる。まかせる。
        1. [初出の実例]「敬憚(かしこま)りて心を傾け、命を委(ヨセ)て忠誠(まめなる心)を尽くすことを冀ふ」(出典:日本書紀(720)継体即位前(前田本訓))
      6. 寄進する。寄付する。また、贈る。送り届ける。
        1. [初出の実例]「応伊勢国飯野郡大神宮事」(出典:類聚三代格‐一・寛平九年(897)九月一一日)
        2. 「御門大に感じおぼしめして、五百町の田代を育王山へぞよせられける」(出典:平家物語(13C前)三)
      7. 数を加える。寄せ算をする。
        1. [初出の実例]「マ大掴(おほづか)み合せて五十円フーム成る程五十円(と折角加(ヨセ)た数を減茶(めっちゃ)にして五十円と置く)」(出典:守銭奴の肚(1887)〈嵯峨之屋御室〉六)
      8. 寒天や、くず粉などで、魚のすり身・卵・豆などの材料を固めたり形づくったりする。
    2. [ 二 ] ある物事の方に気持を傾ける。
      1. 気持を対象に傾ける。慕う。また、頼りにしたり味方にしたりする。
        1. [初出の実例]「大伴の名に負ふ靫(ゆき)帯びて万代にたのみし心いづくか寄(よせ)む」(出典:万葉集(8C後)三・四八〇)
        2. 「日来心をよせ奉りし月卿雲客両方に引わかって」(出典:平家物語(13C前)八)
      2. ある気持、考えなどを、ある物事に対して持つ。
        1. [初出の実例]「首を稽(いた)し誠を帰(ヨセ)心を至して、彼の諸の世尊を礼敬したてまつる」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)三)
      3. ある物事に形を借りて、気持を表わす。
        1. [初出の実例]「あとの白波に、この身をよする朝には、岡の屋にゆきかふ船をながめて、満沙彌が風情を盗み」(出典:方丈記(1212))
      4. 口実にする。ある物に関係づけて言う。かこつける。
        1. [初出の実例]「横川にかよふ道のたよりによせて、中将ここにおはしたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
      5. ことづける。依頼する。委託する。
        1. [初出の実例]「因て其の地を封(ヨセル)こと良以なり」(出典:日本書紀(720)継体二三年四月(前田本訓))
      6. 罪をかぶせる。科する。
        1. [初出の実例]「諸の神たち罪過(つみ)素戔嗚尊に帰(ヨセ)て」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
      7. 関連づける。特に、ある人について異性と関係があるとうわさする。また、比較する。
        1. [初出の実例]「葛飾の真間の手児奈をまことかもわれに余須(ヨス)とふ真間の手児奈を」(出典:万葉集(8C後)一四・三三八四)
      8. ( 特に、歌論用語として ) 関連づける。縁語化する。
        1. [初出の実例]「右おなじなみあるに、岸によせたればたよりあり」(出典:袋草紙(1157‐59頃)下)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]よ・す 〘 自動詞 サ行下二段活用 〙
    1. (波が)岸などに迫り近づく。打ち寄せる。
      1. [初出の実例]「高浜に 来寄する波の 沖つ波 与須(ヨス)とも寄らじ 子らにし寄らば」(出典:常陸風土記(717‐724頃)茨城・歌謡)
    2. 軍勢が)ある場所に迫り近づく。押し寄せる。
      1. [初出の実例]「すはや源氏の大勢のよするは」(出典:平家物語(13C前)五)

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