巣・栖・窼(読み)す

精選版 日本国語大辞典 「巣・栖・窼」の意味・読み・例文・類語

す【巣・栖・窼】

〘名〙
鳥獣魚類昆虫などがこもりすむ所。また、産卵したり、雛(ひな)や子を育てたりする所。
書紀(720)皇極二年一一月(岩崎本平安中期訓)「百済の太子余豊、蜜蜂の房(ス)四枚を以て」
※枕(10C終)一五五「ねずみの子の毛もまだ生ひぬを、すの中よりまろぼし出でたる」
② すむ所。住む家。すみか。住居
古事記(712)上「唯僕(あ)が住所(すみか)をば、天つ神の御子の天津日継知らしめす登陀流、天の御巣(す)(な)す」
多情仏心(1922‐23)〈里見弴〉裏切者「僕は彼の女のために、或る小さな巣を用意してやりました」
③ 活動の本拠地。根城となる所。
読本・南総里見八犬伝(1814‐42)一「否、この城はわが巣(ス)なり。もしここを破られなば、何処(いずこ)へか還るべき」
④ 虫や魚などが集まっているところ。また特に良俗に反するような人が大勢集まっている所。
狂言記・武悪(1660)「ああ、ゑいすを見付ておぢゃる。いかいことの雑魚でおぢゃる」
※一兵卒の銃殺(1917)〈田山花袋〉一〇「あやしい女の大勢巣を作ってゐるその一区画は」
⑤ その人がしばしば出かけて行って酒を飲んだり、遊んだりする所。根城。
※春泥(1928)〈久保田万太郎〉三羽烏「実にそこは『中洲』時代のかれのなつかしい『巣』だったのである」
⑥ 子を産む母親の身体。母胎(ぼたい)
※雑俳・ぎんかなめ(1729)「養子ならまア待っしゃれ腹(ス)がわかい」
蜘蛛獲物を捕えるために張る網。
万葉(8C後)五・八九二「竈(かまど)には 火気(ほけ)ふき立てず 甑(こしき)には 蜘蛛の須(ス)懸きて」
⑧ 野菜などを売買する市(いち)。〔随筆・嬉遊笑覧(1830)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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