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形而上学 けいじじょうがくMetaphysica

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

形而上学(アリストテレスの著述)
けいじじょうがく
Metaphysica

アリストテレスの著述。アリストテレス自身の呼び名では「知恵」(ソフィアー)、「神学」(テオロギケー)、「第一哲学」(ヘー・プローテー・フィロソフィアー)とよばれる学問に属する諸論稿の集成。現在の呼び名は、紀元前1世紀の全集の編集者ロードスのアンドロニコスがこの書を自然学関係書の後に置いたことに由来し、「自然学の後の書」(タ・メタ・タ・フィシカ)の意味だとされる。アリストテレスによれば、優れた意味で知識とよばれうるものは「原因による認識」であるが、もしも、すべての存在事物について、それらのいっさいの第一の諸原理や第一の諸原因が認識されるとするならば、この知識はもっとも普遍的な原因認識であり、それこそ「知恵」の名にふさわしいものとなる。それはもっとも尊貴な、もっとも神的な知識であって、神がもつのにふさわしい知識である。だが、もしも、原因による認識が論証による認識を意味するとすれば、それは或(あ)る特定の類に属する存在事物についてのみありえ、すべての存在事物についてはありえないとするのが『分析論』の帰結であった。
 そこで、まず、この普遍学としての「第一哲学」が、どのような資格で一つの学問知識でありうるかが問われる。「すべての存在事物について、それらが〈ある〉といわれる限りにおいて、この〈ある〉を成り立たせている第一の諸原理、諸原因、諸要素を尋ねる」という有名な定式(「存在としての存在の学」)は、この学問の方法的基礎を明示するものである。この「ある」を成り立たせている第一の諸原理、諸原因の秩序が究極には第一の存在者である神になんらかの意味で依存すると構想される限りで、この学問が「神学」ともよばれる理由がある。
 本書は本来、知恵の定義から始めて、「ある」の原因に関するこれまでの哲学者たちの見解を提示し、「ある」の諸義の分析、「ある」の諸義における第一のものである実体(ウーシーアー)の論を経て、最後に、実体の存在を究極に根拠づけるものとしての第一の実体(神)の論にまで上昇する一連の上昇階梯(かいてい)として構想されていたと考えられる。ただし、この構想は何度か構想されながら、終極的にはその完成をみないまま終わった。今日われわれがもつものは、異なった時期に執筆され、相互の脈絡がかならずしも明瞭(めいりょう)ではない、この学問に属する幾群かの論稿の集成である。本書を構成する諸巻の相互関係、その成立史の研究は、20世紀の初めW・イェーガーによるアリストテレス哲学の発展史的研究の端緒になった。[加藤信朗]
『W. Jger Studien zur Entwicklungsgeschichte der Metaphysik des Aristoteles (1912, Berlin) ▽Aristoteles, Grundlegung einer Geschichte seiner Entwicklung (1925, Berlin)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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