御事(読み)オコト

デジタル大辞泉の解説

お‐こと【御事】

[名]御事始め」または「御事納め」の略。
[代]二人称の人代名詞。あなた。親しみを込めていう語。主に中世・近世に用いた。
「ただ―の苦しさをこそ存じ候へ」〈保元・中〉

おん‐こと【御事】

[名]
人を敬って、その人に関する事柄をいう語。
「主上御不予の―と聞こえさせ給ひしかば」〈平家・一〉
貴人を敬って、その誕生や死を婉曲にいう語。
「後朱雀院の―をおぼしめし嘆きて」〈玉葉集・雑四・詞書〉
人を敬っていう語。おひと。おかた。
「まことに尊き―で渡り候はば」〈謡・江口
[代]二人称の人代名詞。あなたさま。
「かやうに付き副ひ奉るも、我らが身の上はさておきぬ。ただ―の苦しさをこそ存じ候へ」〈金刀比羅本保元・中〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

大辞林 第三版の解説

おこと【御事】

( 名 )
「御事始め」または「御事納め」の略。
( 代 )
二人称。相手に対して親しみの情をこめて呼ぶ語。そなた。 「只-の苦しさをこそ存じ候へ/保元

おんこと【御事】

( 名 )
貴人にかかわる「こと」を敬っていう語。 「女院の御なげき、たぐひすくなかりし-なり/保元
特に、貴人の死去のこと。 「後嵯峨院の-ののち/新後撰 雑下詞
人を敬っていう語。おかた。 「これはこの辺りにては見馴れ申さぬ-なり/謡曲・賀茂」
( 代 )
二人称。相手を敬っていう語。あなた様。 「 -をのみなむ、心苦しう思ひ聞こゆるに/源氏 総角

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精選版 日本国語大辞典の解説

おおん‐こと おほん‥【御事】

〘代名〙 (「おおん」は接頭語。「おほむこと」とも表記) 対称。敬い親しんでいう。あなたさま。おこと。
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「昔おほんことを思ひそめ」

お‐こと【御事】

[1] 〘名〙 (「お」は接頭語)
① 天皇、上皇、法皇等が崩御されたとき、崩御という言葉を忌み嫌っていう語。
※伏見上皇御中陰記(1317)「文保元年九月三日寅刻、法皇有御事
② 小祭の意。特に関東では二月八日の事八日、関西では三、四月頃の春事という年中行事をさす。《季・春》
※風俗画報‐二二三号(1900)人事門「事納めとは、十二月八日に其の年の事を終る民間の式日をいふ二月八日の事始めに対していへり。俗間には之をお事と称し来れり」
[2] 〘代名〙 対称。一般に、相手に対して親愛の心をこめて呼ぶ語。男に対しても、女に対しても用いた。御身。そなた。
※平治(1220頃か)下「昨日までも御事ゆゑに心をくだきつるが、配所さだまりてながされ給ふべき也」

おん‐こと【御事】

(「おん」は接頭語)
[1] 〘名〙
① ある人を敬ってその人に関する事柄などをいう語。
※蜻蛉(974頃)下「『こはたがぞ、堀川殿の御ことにや』ととへば」
② 貴人の誕生または死去。敬って、直接に表現することを避けていう。
※源氏(1001‐14頃)葵「いとど皆泣きて、『いふかひなき御事は、ただ、かきくらす心地して侍れば〈略〉』」
③ (貴人を敬って、直接に表現するのを避けるところから) 「人」の敬称。お人。御方。
※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一〇月一〇余日「中務の宮わたりの御ことを、御心にいれて、そなたの心よせある人とおぼして」
④ 性行為、または性器をいう。
※談義本・当世穴噺(1771)三「二階から御事(コト)しまふて二人が下(おり)る音に」
[2] 〘代名〙 ((一)③から、相手を敬っていう) 対称。あなた様。おまえ様。
※源氏(1001‐14頃)総角「御ことをのみこそあたらしく心苦しくかなしき物に思ひ聞ゆるを」

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