デジタル大辞泉 「御事」の意味・読み・例文・類語 おん‐こと【御事】 [名]1 人を敬って、その人に関する事柄をいう語。「主上御不予の―と聞こえさせ給ひしかば」〈平家・一〉2 貴人を敬って、その誕生や死を婉曲にいう語。「後朱雀院の―をおぼしめし嘆きて」〈玉葉集・雑四・詞書〉3 人を敬っていう語。おひと。おかた。「まことに尊き―で渡り候はば」〈謡・江口〉[代]二人称の人代名詞。あなたさま。「かやうに付き副ひ奉るも、我らが身の上はさておきぬ。ただ―の苦しさをこそ存じ候へ」〈金刀比羅本保元・中〉 お‐こと【▽御事】 [名]「御事始め」または「御事納め」の略。[代]二人称の人代名詞。あなた。親しみを込めていう語。主に中世・近世に用いた。「ただ―の苦しさをこそ存じ候へ」〈保元・中〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「御事」の意味・読み・例文・類語 おん‐こと【御事】 ( 「おん」は接頭語 )[ 1 ] 〘 名詞 〙① ある人を敬ってその人に関する事柄などをいう語。[初出の実例]「『こはたがぞ、堀川殿の御ことにや』ととへば」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)② 貴人の誕生または死去。敬って、直接に表現することを避けていう。[初出の実例]「いとど皆泣きて、『いふかひなき御事は、ただ、かきくらす心地して侍れば〈略〉』」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)③ ( 貴人を敬って、直接に表現するのを避けるところから ) 「人」の敬称。お人。御方。[初出の実例]「中務の宮わたりの御ことを、御心にいれて、そなたの心よせある人とおぼして」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一〇月一〇余日)④ 性行為、または性器をいう。[初出の実例]「二階から御事(コト)しまふて二人が下(おり)る音に」(出典:談義本・当世穴噺(1771)三)[ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 ( [ 一 ]③から、相手を敬っていう ) 対称。あなた様。おまえ様。[初出の実例]「御ことをのみこそあたらしく心苦しくかなしき物に思ひ聞ゆるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角) お‐こと【御事】 [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語 )① 天皇、上皇、法皇等が崩御されたとき、崩御という言葉を忌み嫌っていう語。[初出の実例]「文保元年九月三日寅刻、法皇有二御事一」(出典:伏見上皇御中陰記(1317))② 小祭の意。特に関東では二月八日の事八日、関西では三、四月頃の春事という年中行事をさす。《 季語・春 》③ 「おことはじめ(御事始)」または「おことおさめ(御事納)」の略。[初出の実例]「事納めとは、十二月八日に其の年の事を終る民間の式日をいふ二月八日の事始めに対していへり。俗間には之をお事と称し来れり」(出典:風俗画報‐二二三号(1900)人事門)[ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 対称。一般に、相手に対して親愛の心をこめて呼ぶ語。男に対しても、女に対しても用いた。御身。そなた。[初出の実例]「昨日までも御事ゆゑに心をくだきつるが、配所さだまりてながされ給ふべき也」(出典:平治物語(1220頃か)下) おおん‐ことおほん‥【御事】 〘 代名詞詞 〙 ( 「おおん」は接頭語。「おほむこと」とも表記 ) 対称。敬い親しんでいう。あなたさま。おこと。[初出の実例]「昔おほんことを思ひそめ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)菊の宴) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通 「御事」の読み・字形・画数・意味 【御事】ぎよじ 官事を治める。その人。〔書、大誥〕(ああ)、大いに爾(なんぢ)多と、爾事とを誥(つ)ぐ。字通「御」の項目を見る。 出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報