御霊(読み)ミタマ

デジタル大辞泉 「御霊」の意味・読み・例文・類語

み‐たま【御霊/魂】

神霊祖霊を尊んでいう語。「先祖の―を祭る」
霊威
が主の―賜ひて春さらば奈良の都に召上めさげ給はね」〈・八八二〉
御霊祭り」の略。
「あさましう、―など見るにも」〈かげろふ・下〉
[類語]英霊英魂神霊祖霊霊魂精霊魂魄忠霊尊霊亡魂

ご‐りょう〔‐リヤウ〕【御霊】

霊魂をいう尊敬語みたま
「これ讃岐院さぬきのゐんの―なりとて」〈古活字本保元・下〉
貴人功績のあった人を祭る社。
御霊」の略。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御霊」の意味・読み・例文・類語

ご‐りょう‥リャウ【御霊】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ご」は接頭語 )
  2. 霊魂の敬称。みたま。また、たたりを現わすみたま。
    1. [初出の実例]「天下以為、此災、御霊之所生也」(出典:日本三代実録‐貞観五年(863)五月二〇日)
  3. 高貴な人、あるいは生前功績のあった人をまつる社。
    1. [初出の実例]「御霊の鳥居の前に日を晩して後、若宮大路より宿所につきぬ」(出典:海道記(1223頃)逆川より鎌倉)
  4. ごりょうえ(御霊会)」の略。
    1. [初出の実例]「今日称、御霊有辻祭」(出典:明月記‐建永元年(1206)八月二一日)

御霊の語誌

( 1 )は特に非業の死を遂げ、疫病飢饉をもたらす怨霊として畏怖の対象となったものをいう。挙例「三代実録」の記事に崇道天皇以下六所がまつられたことが記されている。後に吉備真備・菅原道真が加わり八所の御霊となったが、八所の内訳には場合により多少の出入りがある。
( 2 )後には中世の戦乱で没した武士近世の義民が御霊とされたりもした。ことに鎌倉権五郎景政、曾我五郎佐倉惣五郎のように「五郎」の名を持つものは、音の近さによる連想から御霊の中に加えられることもあった。


み‐たま【御霊・御魂】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「み」は接頭語 )
  2. 神の霊。人が死んで、その魂(たましい)が神となったものを尊んでいう。みすたま。みたましい。
    1. [初出の実例]「乃ち神霊(ミタマ)(〈別訓〉みたましひ)白鳥(しらとり)に化(な)りて」(出典:日本書紀(720)仲哀元年一一月(寛文版訓))
  3. 霊威。おかげ
    1. [初出の実例]「あが主(ぬし)の美多麻(ミタマ)賜ひて春さらば奈良の都に召上(めさ)げ給はね」(出典:万葉集(8C後)五・八八二)
  4. みたままつり(御霊祭)」の略。
    1. [初出の実例]「あさましう、みたまなど見るにも」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  5. 盂蘭盆(うらぼん)に先祖の霊に供える供物(くもつ)。〔名語記(1275)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の御霊の言及

【神】より

…タマが人知を超えた力を発揮すると,それはモノノケ(物の怪)の出現ととらえられ,別にタタリ(祟り)と表現された。平安時代のタマの発現とその活動の中に,怨霊や御霊(ごりよう)を認めそれを祟りとみて畏怖したのは,モノノケすなわち霊威に対するその時代の合理的解釈とみなされる。本来は,荒魂の活発な活動が霊威であり,霊威を鎮めることによって,和魂に変化することが,守護霊の大きな前提だといえる。…

【十三塚】より

…また,モンゴルの十三オボーとの関係をとく説もある。いずれにせよ,その背景にまつり手のない御霊(ごりよう)慰撫の信仰があり,築造に修験者が関係していたことが認められる。また,村境に築造され,石神,道祖神,庚申信仰など境界神の信仰と習合している例もある。…

【菅原道真】より

…ほかに《新撰万葉集》,また詩文集の《菅家文草》12巻があり,左遷後の作品を集めた《菅家後集》もある。【土田 直鎮】 道真の亡霊は御霊(ごりよう)(御霊信仰)となってたたりをすると信じられた。《将門記(しようもんき)》(940)によれば,平将門の乱の際に,八幡大菩薩が将門を新皇にするとの託宣をくだしたが,この八幡の神意をとりついだのが道真の霊だとされている。…

【祟り】より

…こうして〈たたり〉が人間に現れる場合は憑霊状態を示し,いわゆるシャマニズムのさまざまな心的機制を生ぜしめることになるが,今日,下北半島のイタコや沖縄のユタなどに伝えられているホトケオロシやカミオロシなどの巫儀も,この〈たたり〉現象に属する。 次に,神霊や死霊の示現が災禍や危害をともなうとされる場合の〈祟り〉は,当の神や死者の怨みや怒り,そして浄められずに空中を浮遊する邪霊,鬼霊の働きなどによるものとされ,とりわけ平安時代になって御霊(ごりよう)や物の怪(もののけ)の現象としてひろく人々の間に浸透し,恐れられた。なかでも〈祟り〉の現象が社会的な規模で強く意識されたのは平安前期の御霊信仰においてである。…

【人神】より

…人の神化に際しては,(1)人が死後神になる場合と,(2)人が生前に神としてまつられる場合とがある。(1)の場合,人の霊が生前に怨念をもったまま死んで御霊(ごりよう)となることが一つの契機となっている。古代社会によく見られた政治的争いに敗れた貴族が,死後怨念をたたりとして発現させ,そのたたりを鎮めるために神にまつったという事例がある。…

※「御霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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