成す(読み)ナス

デジタル大辞泉 「成す」の意味・読み・例文・類語

な・す【成す】

[動サ五(四)]
(「為す」とも書く)ある行為をする。「無益の事を―・す」「―・すすべもなく敗れる」
「国のこといとよく―・したりければ」〈落窪・四〉
物を作りあげる。仕上げる。また、事をしとげる。「一代にして産を―・す」
ある形・状態などをしている。「組織の体を―・していない」「球状を―・す」「門前市を―・す」
他の物に変える。他の状態にする。「新しい技法を自己のものと―・す」
「思はむ子を法師に―・したらむこそ心苦しけれ」〈・七〉
役や位につかせる。任命する。
「強ひてそちに―・し奉りて」〈かげろふ・中〉
高貴な方のお出ましを仰ぐ。お出ましのあるようにする。
主上たすけ乗せまゐらせて陽明門より―・し奉る」〈太平記・二〉
(他の動詞の連用形に付いて)意識してそのようにする。わざと…する。「敵と見―・す」
「中の宮をなむいかで人めかしくも扱ひ―・したてまつらむ」〈総角
[可能]なせる
[類語](1行う為る遣る営む(尊敬)されるなさる遊ばす謙譲致すつかまつ/(2果たす遂げる全うする成し遂げる遣り遂げるし遂げるしおおせる遣り通す遣り抜く遣ってのける仕上げる仕立て上げる作り上げる練り上げる物にする叶える完遂する

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「成す」の意味・読み・例文・類語

な・す【成・為・生】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] ( 生 ) 生む。出産する。また、生み出す。産出する。つくる。
    1. [初出の実例]「おのがなさぬ子なれば、心にも従はずなんある」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 「この春、子一人なして、かくれましにき」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
  3. [ 二 ] ( 成・為 )
    1. ある行為をする。行なう。
      1. [初出の実例]「身をなげしにたる物ならば、そのみちなし給へ」(出典:大和物語(947‐957頃)一六八)
      2. 「武蔵の国を預けとらせて、おほやけごともなさせじ」(出典:更級日記(1059頃))
    2. ある気持をおこす。
      1. [初出の実例]「ひたひに手をあてて、信をなしつつききゐたり」(出典:大鏡(12C前)一)
      2. 「ありとしある人は皆浮雲のおもひをなせり」(出典:方丈記(1212))
    3. 物をつくる。つくりあげる。また、事をしとげる。
      1. [初出の実例]「もののふの 八十伴(やそとも)の男は 廬(いほり)して 都成(なし)たり 旅にはあれども」(出典万葉集(8C後)六・九二八)
      2. 「一事を必ずなさんと思はば、他の事の破るるをもいたむべからず」(出典:徒然草(1331頃)一八八)
    4. あるものを別の状態のものにする。
      1. [初出の実例]「大君は神にしませば赤駒のはらばふ田井を都と奈之(ナシ)つ」(出典:万葉集(8C後)一九・四二六〇)
      2. 「思はん子を法師になしたらんこそ心ぐるしけれ」(出典:枕草子(10C終)七)
    5. ある状態にする。ある状態をひき起こす。
      1. [初出の実例]「多くの人の身をいたづらになしてあはざるかぐや姫は、いかばかりの女ぞとまかりて見て参れ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「軒騎群集して、門前市をなす」(出典:平家物語(13C前)一)
    6. ある時期になるのを待つ。また、ある時になるのにまかせる。
      1. [初出の実例]「よるになして京にはいらんと思へば」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一六日)
    7. そのように考える。みなす。
      1. [初出の実例]「かたちこそみ山がくれのくちきなれ心は花になさばなりなん〈兼芸〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・八七五)
      2. 「日ごろ月ごろ、わづらひて、かくなりぬる人をば、今はいふかひなきものになして」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
    8. 官職につける。任命する。
      1. [初出の実例]「しひて帥(そち)になし奉りて、おひくだし奉る」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    9. ある物を他の物であるかのように用いる。
      1. [初出の実例]「高山を 障(へだて)に所為(なし)沖つ藻を 枕に所為(なし)」(出典:万葉集(8C後)一三・三三三六)
    10. 貴人がおでましになるようにうながす。
      1. [初出の実例]「さらば清盛がもとへいれまゐらせよと仰せければ、西八条へなし奉るに」(出典:保元物語(1220頃か)下)
    11. 動詞の連用形に付けて、補助動詞のように用いる。そのように…する。また、意識して…する。
      1. [初出の実例]「味飯を水に醸(か)み成(なし)吾が待ちし代(かひ)はさねなし直にしあらねば」(出典:万葉集(8C後)一六・三八一〇)
      2. 「見ることのやうに語りなせば」(出典:徒然草(1331頃)五六)

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