遊ばす(読み)アソバス

デジタル大辞泉 「遊ばす」の意味・読み・例文・類語

あそば・す【遊ばす】

[動サ五(四)]
動詞あそぶ」の未然形+使役の助動詞」から》
遊ぶようにする。遊びをさせる。遊ばせる。「子供を公園で―・す」
人材・場所・道具などを活用しないままでおく。「不況で機械を―・している」「―・してある土地」
《動詞「あそぶ」の未然形+尊敬の助動詞「」から》
する」の尊敬語。「いかが―・しましたか」
遊猟・音楽・詩歌など、遊芸をする意の尊敬語。
㋐音楽をなさる。楽器を演奏なさる。
「昔の殿上人は…御箏、御琵琶など常に弾きなどしつつ―・しけるに」〈今昔・一九・一七〉
㋑詩歌をお詠みになる。
和歌も―・しけるにこそ」〈大鏡・良房〉
㋒字や文をお書きになる。
「御書―・いてうだりけり」〈平家・六〉
補助動詞)「お…あそばす」「ご(御)…あそばす」の形で用いて、尊敬の意を表す。「お読み―・せ」「御免―・せ」「いろいろ御苦労―・すそうで」
[類語]為る行う営む(尊敬)されるなさる謙譲致すつかまつ

あすば・す【遊ばす】

[動サ四]《「あそばす」の音変化》
する」の尊敬語。なさる。
「お孫さまが痘瘡おやくを―・したさうでございますね」〈滑・浮世風呂・三〉
(補助動詞)動詞の連用形接頭語「お」の付いた形に付いて、尊敬の意を添える。…なさる。
「是をお浴び―・してお上り―・せ」〈滑・浮世風呂・二〉
[補説]多く女性が使う。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遊ばす」の意味・読み・例文・類語

あそば‐・す【遊】

  1. [ 1 ] 〘 連語 〙 ( 動詞「あそぶ(遊)」の未然形に、上代の尊敬の助動詞「す」の付いた語 ) 狩猟、歌舞、音楽、遊楽などをなさる。お遊びになる。
    1. [初出の実例]「恐(かしこ)し、我が天皇、猶其の大御琴阿蘇婆勢(アソバセ)〈阿より勢までは音を以ゐよ〉」(出典古事記(712)中)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] ( [ 一 ]が一語化した語 )
      1. 詩歌を詠じたり、音楽を奏したりする意の尊敬語。
        1. [初出の実例]「帝(みかど)、『立田川もみぢみだれてながるめりわたらば錦中や絶えなむ』とぞあそばしたりける」(出典:大和物語(947‐957頃)一五一)
        2. 「御琵琶あそばされけるところに」(出典:平家物語(13C前)五)
      2. ( 広く用いて ) いろいろの物事をする意の尊敬語。
        1. [初出の実例]「かねまさはみさごをつかうまつり、そなたには中島のほどよりにあそばししに、この御鷹は」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)
        2. 「御手跡うつくしうあそばし、御才学すぐれて在(まし)ましければ」(出典:平家物語(13C前)四)
      3. ( 自動詞のように用いて ) ある動作をする意の尊敬語。
        1. [初出の実例]「やり手にも、ずいぶん色をさとられぬやうにあそばしませ」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)四)
      4. 動詞の前に付いて複合語をつくり、その動作をする人に対する敬意を表わす。
        1. [初出の実例]「疵を求の世中候得ば、あそはしかへられ候へかし」(出典:草根集(1473頃)一)
    2. [ 二 ] 補助動詞として用いられる。多く動作性の語に付いて、その動作をする人に対する尊敬の意を表わす。助動詞「る」「ます」を下につけて敬意を強める場合もある。
      1. (イ) 動作性の名詞につく場合。接頭語「御」のついた漢語である場合が多い。
        1. [初出の実例]「一先づ落ちさせ給ふべく候か、又討死あそはし候はんか」(出典:義経記(室町中か)五)
        2. 「お客様の入らっしゃる度に、此子を御吹聴遊(アソ)ばすさうでござります」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
      2. (ロ) 動詞の連用形につく場合。多く、動詞の連用形は、尊敬の接頭語「お」を伴う。
        1. [初出の実例]「まづあれへ御かへりあそばしませ」(出典:評判記・難波鉦(1680)五)

あそば・す【遊】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
    1. 遊ぶことをさせる。子どもに、遊びをするようにしむける。
      1. [初出の実例]「をかしげなるちごの、あからさまにいだきてあそばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし」(出典:枕草子(10C終)一五一)
    2. 金や道具などを使わないでおく。
      1. [初出の実例]「一日も銀をあそばさぬ思案をめぐらしける」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)二)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙あそばせる(遊)

あすば・す【遊】

  1. 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 ( 「あそばす(遊)」の変化した語 )
  2. [ 一 ] いろいろの物事をするの意の尊敬語。なさる。
    1. [初出の実例]「申々、けがあすばすな、そこはふかひと云」(出典:天理本狂言・入間川(室町末‐近世初))
  3. [ 二 ] 補助動詞として用いられる。動詞の連用形に尊敬の接頭語「お」をつけた形につき、その動作をする人に対する尊敬の意を表わす。
    1. [初出の実例]「おまへさん、是をお浴(あび)(アスバ)してお上りあすばせ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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