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きぬた

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


きぬた

東京都世田谷区南西部にある地区。地名の由来は,をたたいて柔らかくし,同時につやを出すのに使われたを打った土地であることによる。かつて畑作中心の近郊農村であったが,小田急線,玉川電気鉄道 (現東京急行電鉄田園都市線) の開通に伴い宅地化が進展。 1936年には世田谷区に編入された。 NHK技術研究所,映画撮影所があり,南方砧公園がある。


きぬた

能の曲名。四番目物。世阿弥作。訴訟のために都へ上って3年になる九州芦屋の某 (ワキ) は,故郷の妻を案じて下女夕霧 (ツレ) を下す。芦屋にひとり待つ妻 (シテ) は,夕霧から夫が今年の暮れには帰ると聞き,唐土の故事にならって夫を偲びつつ砧を打つ (砧の段,クセ) 。しかし今年も帰れぬという都からの再度の使いに妻は病に伏し,むなしくなる (中入り) 。妻の死を聞いて急ぎ戻った夫は,法要にと形見の砧に梓の弓を掛けると,妻の霊 (後ジテ) が現れ,因果の妄執に苦しむ地獄のありさまを語るが,夫の祈りによって成仏する。この曲趣をかりて1世十寸見河東が半太夫節から享保年間 (1716~36) に河東節に移した曲がある。また地歌箏曲には,砧の音と,それがかもし出す詩情楽想を得てつくられた「砧物」と総称される曲種がある。


きぬた

晒 (さらし) 布を打ちたたいて柔らかくする道具。衣板 (きぬいた) の意で,『倭名類聚抄』では岐沼伊太と読む。布を臼に入れ相対した2名の婦人が米をつくようにして打ったが,後世では布を石板または木板の上に延べ,横杵で交互に打つようになった。


きぬた

木製の体鳴楽器。歌舞伎囃子などで秋の田園情緒を表わすために使われる。砧を打つ単調なリズムを模して,箏や三味線でスクイ爪 (撥) を用い,1つの音をテンレンテンレン,あるいはチンリンチンリンと反復して弾くのを砧地という。砧地にのせて器楽的技巧を楽しむ曲も多く作られた (→砧物 ) 。

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デジタル大辞泉の解説

きぬた【×砧/×碪】

《「きぬいた(衣板)」の音変化》
木槌(きづち)で打って布を柔らかくしたり、つやを出したりするのに用いる木や石の台。また、それを打つこと。 秋》「―打て我に聞かせよや坊が妻/芭蕉
砧拍子(きぬたびょうし)」の略。

きぬた【砧】[曲名]

謡曲。四番目物世阿弥作。長年帰らぬ夫をを打ちつつ待っていた妻が焦がれ死にし、死後も妄執に苦しむ。
箏曲(そうきょく)および地歌の曲名の一類。砧の音を表現する部分(砧地)を含むのが特徴。岡康砧五段砧・新砧などがある。砧物。

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百科事典マイペディアの解説

砧【きぬた】

衣板(きぬいた)の略といい,木づちで布を打つときに用いる木や石の台。また打つこともいう。布をやわらかくし,目をつめ,つやを出すためのもので,おもに麻,木綿など粗目(あらめ)の織物に用いるが,古くは絹も砧で打って光沢を出した(打衣(うちぎぬ))。

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世界大百科事典 第2版の解説

きぬた【砧】

織った布または洗濯した布や着物をたたいてやわらかくし,同時に目をつめて,艶を出すのに用いる道具。〈きぬた〉は〈きぬいた〉の略であるという。木の板あるいは石の上で木の槌を持って布を打つ。今日でも木綿や麻布などは打布機を用いてこれをたたき,いわゆる砧仕上げをするが,以前はみなこの砧で打ったもので,秋の夜長の仕事として婦人が多く行った。その音が遠く近くひびく詩情をよんだ歌や俳句が多い。砧はもともと中国から伝わったもので,中国では擣衣(とうい)といい,古くから詩にうたわれている。

きぬた【砧】

(1)能の曲名。四番目物世阿弥作。シテは芦屋なにがしの妻。九州の芦屋なにがし(ワキ)は訴訟のために上京して久しく,国元の妻は帰国を待ちわびている。3年目の秋,初めて帰国したのは侍女の夕霧(ツレ)一人だった。妻は夫の無情を嘆くが,せめてもの慰めにと,里人の打つ砧を取り寄せて打ちながら,この音がわが思いを乗せて都の夫の心に通じるようにと念じるのだった。だが今年も帰国できないという知らせを聞き,妻は病となり,ついに命を落とす。

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大辞林 第三版の解説

きぬた【砧】

〔「きぬいた(衣板)」の転〕 麻・楮こうぞ・葛くずなどで織った布や絹を槌つちで打って柔らかくし、つやを出すのに用いる木または石の台。また、それを打つことや打つ音。 [季] 秋。 《 声澄みて北斗に響く-かな /芭蕉 》
「砧拍子」の略。

きぬた【砧】

能の一。四番目物。世阿弥ぜあみ作。長年帰国しない夫の無情を恨んで死んだ妻が、帰国した夫の前に亡霊となって現れる。
地歌・箏曲で、ゆるやかな二拍子を繰り返す砧という手を特徴とする一連の曲の総称。地歌に「三段砧」「四段砧」、箏曲に「五段砧」などがある。砧物。

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