(読み)シン

デジタル大辞泉 「振」の意味・読み・例文・類語

しん【振】[漢字項目]

常用漢字] [音]シン(呉)(漢) [訓]ふる ふるう ふれる
揺れ動く。揺り動かす。「振動振幅強振三振
ふるい立つ。勢いが盛んになる。「振興不振
[名のり]とし・のぶ・ふり

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精選版 日本国語大辞典 「振」の意味・読み・例文・類語

ぶり【振】

  1. 〘 造語要素 〙 ( 「ふり(振)」から )
  2. 名詞またはこれに準ずる語に付いて、曲調・調子の意を表わす。「声(こわ)ぶり」「万葉ぶり」「ますらおぶり」など。
  3. 古代歌謡、とくに宮廷の雅楽寮に伝えられた歌曲の曲名を表わす。「天田ぶり」「高橋ぶり」「夷ぶり」など。
  4. 名詞や動詞の連用形に付いて、その物事の様子、状態の意を添える。「亭主ぶり」「女ぶり」「生活ぶり」「話しぶり」など。なお、語調を強めるとき「っぷり」の形となる。「男っぷり」「使いっぷり」など。
    1. [初出の実例]「飯島夫人の口のききぶりが気に障った」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉八)
  5. 数量を表わす語に付いて、それに相当する意を添える。「大ぶり」「二人ぶり」など。
    1. [初出の実例]「一軒が普通の漁師の五軒ぶりもある家で」(出典:鹿狩(1898)〈国木田独歩〉)
  6. 時間を表わす語に付いて、それだけの時間が経過した意を表わす。
    1. [初出の実例]「一年ぶりに顔を見て」(出典:浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)上)

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普及版 字通 「振」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音] シン
[字訓] ふるう・ふる・すくう・おさめる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は辰(しん)。辰は蜃の初文。その蜃肉・蜃器は呪器・祭器として祭儀に用いることがあった。〔説文〕十二上に「擧げて之れを救ふなり」(段注本)と振救の意とする。〔礼記、月令〕「乏を振(すく)ふ」は賑給の意で、賑と通用する。〔説文〕にまた「一に曰く、奮ふなり」とあり、これは鼓舞する意。軍が出行のとき奉ずる肉と関係があろう。振は辰をもつ意の字である。には魂振りとしての意味があったのであろう。帰還してに告げる礼を帰の礼という。〔詩、小雅、采〕「(軍)を振(をさ)むること(てんてん)たり」、また〔左伝、隠五年〕「三年にして治兵(演習)し、入りて振す」とは、その礼をいう。

[訓義]
1. ふるう、ふるいたつ、ふるいおこす、勇気づける、はげます。
2. うちふる、はらう。
3. 賑と通じ、すくう、たす、にぎわす。
4. おさめる、賑肉をかえす、軍をおさめる、ととのえる、すてる、とまる、やめる。
5. 振古、より、から。
6. 振振、仁厚のさま。

[古辞書の訓]
名義抄〕振 フルフ・ウゴク・ウゴカス・ヲサム・シタガフ・スクフ・ヨル・ヒラク・スツ・ヨリ・トトノフ・ニギハフ 〔字鏡集〕振 テテハフ・ハジク・ウゴク・フルフ・スカフ・ヲサム・シタガフ・ヨル・トトノフ・スツ・スクフ・タスク・トラク・アク・ヨリ

[語系]
振・震・娠tjinは同声。みな振動の意がある。振に振救の意があり、また振旅のようにいうのは、肉による呪儀と関係があろう。辰は蜃zjin、も同声で、とは社肉をいう。

[熟語]
振衣・振威振畏・振羽振纓振掖・振・振・振冠・振感・振起・振気・振奇振飢・振窮・振救・振挙・振恐振矜・振響・振驚・振玉振懼・振敬・振拳・振古・振興振毫・振困・振済・振作・振刷・振施・振錫振粛振恤・振・振女・振除振懾振慴・振振振迅・振世振贍・振藻・振貸・振滞振鐸振旦・振張振剔振滔・振・振盪・振動・振徳・振抜・振万・振播・振臂・振貧・振武・振撫・振怖・振風・振伏・振復・振幅・振憤・振袂・振民・振容・振踊・振耀・振翼・振賚・振理・振慄・振旅・振廩・振・振励・振鷺
[下接語]
威振・一振・気振・翕振・強振・響振・玉振・弘振・高振・刷振・声振・宣振・騰振・波振・不振・奮振・隆振

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「振」の意味・わかりやすい解説


ふり

日本舞踊用語。舞踊の動き全体をさす場合もあるが、「舞(まい)」「踊(おどり)」とともに日本舞踊における三大要素の一つをいうことが多い。「ふりはもんくにあり」(佐渡島(さどしま)長五郎著『しょさの秘伝』)と、歌詞につれその意味することを物まね的な動作で表す技法が古くから行われてきた。これが音楽に適したリズムをもつ舞踊動作で表される。文句にべたづけの味のない「振」は「あてぶり」と非難される。「人形ぶり」は人形の身ぶりを、「仲蔵(なかぞう)ぶり」「のしほぶり」などはその俳優の癖ともいえる特徴を写すものである。

[如月青子]

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