(1)仏教教学における僧の役名。学問僧の資格試験〈竪義(りゆうぎ)〉の出題,採否にかかわる最高責任者。竪義は,経論の要義を問答の中で披瀝する論義という形式で行われるが,探題はその論題を選定し,論義の経過を見届けて採否を慎重に吟味し,最終的な判定を行う。受験する学問僧は竪者(りつしや)と称し,問題を発する問者(もんじや)を相手に様式に準じて解釈等の解答を述べる。竪者の解答の様子を審査する役に精義者(せいぎしや)があり,通常の論題にさらに難問を付加したりする。探題はそれらの経過を見届けて最終的な判定を行うから,竪義を実施する上では最も重責を負った役だといえる。竪者が事前の修行(前加行(ぜんけぎよう))の最中に夢で探題から論題を知らされるという様式的な慣例をとる宗派もあり,厳格な中に芸能的要素も加わっている。
執筆者:高橋 美都(2)鎌倉・室町両幕府の職名。広い地域の裁判権や軍事指揮権を中心とする管領権を有する職を呼ぶ。もともとは前記の仏教用語に発するもので,その論題の判定機能のゆえに幕府の裁判担当者の職名に転じたとみなされている。鎌倉幕府では東国の執権・連署が探題と呼ばれ,また西国・九州を単位としてそれぞれ六波羅探題・鎮西探題が置かれたが,その職名は通称であって,正式の職名ではなかったようである。室町幕府では幕府や関東府の管領・執事が探題と呼ばれた例はなく,それ以外の広い地域の管領権を有する職についてのみ探題と呼ばれた。九州を管領する九州探題,陸奥・出羽2国を管領する奥州探題とそれから分化して出羽1国を管領する羽州探題等である。このほか南北朝期の中国管領(中国探題)細川頼之や戦国期の羽柴秀吉の中国探題などの例もある。
執筆者:五味 文彦
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鎌倉・室町幕府の特定の職名をさす、南北朝以降の呼称。鎌倉幕府では執権、連署、六波羅(ろくはら)のこと。室町幕府では遠隔の要地の政治、軍事、裁判などに備えての臨時職として設置されたものが多い。
[編集部]
法会(ほうえ)の席で行われる学僧の資格試験である論議(竪義(りゅうぎ))において、論題を選定する役職。題者(だいしゃ)、探題博士(はくし)、博士とも称する。題目を選定して短冊に記し、従儀師がこれを竪者(りっしゃ)(試問を受ける僧)に渡して問答が始められる。判定の役である証義を兼ねる場合もある。当初は1、2人であったが、12世紀後半から専寺探題と他寺探題を加えて3人と定められた。奈良の三会(さんえ)(金光明会(こんこうみょうえ)・維摩会(ゆいまえ)・最勝会(さいしょうえ))の講師を務めた已講(いこう)、その勅命を受けていまだ終わらない擬講(ぎこう)のうちから任命される。已講の別称としても用いられた。
[大桑 斉]
和歌用語。歌会で、あらかじめ短冊などに記されたいくつかの題を、各自が抽選するようにしてとり、与えられた題によって詠作すること。詩会や句会でも行われた。詩作の探韻などの影響によるものといわれ、平安中期ごろよりみられるが、鎌倉時代に至って盛んに行われ、「続歌(つぎうた)」とよばれる大部な形式のものも催されるようになった。『後撰(ごせん)集』雑四の「左大臣の家にてこれかれ題を探(さぐ)りて歌詠みけるに、露といふ文字を得侍(はべ)りて」、『源順(みなもとのしたごう)集』の「正月雨降る日、東宮に候(さぶら)ひて、雨の心の歌を奉るとて、文字一つを探りて、な文字賜はれり」などが早い例。
[小町谷照彦]
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鎌倉・室町両幕府の職名。政務を裁決する重職に対する呼称。鎌倉幕府では西国を統治した六波羅探題,鎮西を統治した鎮西探題があったほか,長門・周防両国守護を長門探題ともいい,執権・連署も両探題職とよぶことがあった。室町幕府では奥州探題・羽州探題,前代の鎮西探題の後継である九州探題などがおかれ,幕府が遠隔地に設置した出先機関とその長官の呼称として用いられた。
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…戦国期一時中止になったが,江戸時代に復興し,現在は5年に1度大講堂で修せられる。故事にのっとって論義を行う者を竪者(りゆうしや∥りつしや)といい,その論義の判定をなす権威者を探題と称し,一山の長老があたる。法華八講・法華十講なども法華会と称するが,これは講座の数によって名づけられたものである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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