(読み)ユ

デジタル大辞泉の解説

ゆ【揺】

琴などを弾くとき、余韻を波うたせるために左手の指先を軽く弦に当てて揺すること。また、その奏法や音。
「―の音(ね)深う澄ましたり」〈明石

よう【揺〔搖〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]ヨウ(エウ)(呉)(漢) [訓]ゆれる ゆる ゆらぐ ゆるぐ ゆする ゆさぶる ゆすぶる
ゆらゆらとゆれ動く。「揺曳(ようえい)揺揺揺籃(ようらん)蕩揺(とうよう)動揺
[難読]揺蕩(たゆた)う揺籃(ゆりかご)

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大辞林 第三版の解説

ゆ【揺】

琴をひくとき、左手で弦を揺する奏法。また、その音。 「 -の音、ふかう澄ましたり/源氏 明石

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精選版 日本国語大辞典の解説

あゆが・す【揺】

〘他サ四〙 ものを動かす。ゆるがす。
拾遺(1005‐07頃か)物名・四一〇「はし鷹のをき餌にせんとかまへたるおしあゆがすなねずみとるべく〈藤原輔相〉」

あゆ・く【揺】

〘自カ四〙 (後世「あゆぐ」とも) ものが揺れ動く。また、気持や感情が動揺する。ゆれる。あよく。
※書紀(720)崇峻即位前(図書寮本訓)「衛士等、詐(あさむ)か被(れ)て、揺(アユク)竹を指して馳せて言はく」
※拾遺(1005‐07頃か)物名・四〇九「雲まよひ星のあゆくと見えつるは蛍の空に飛ぶにぞありける〈藤原輔相〉」

あよ・く【揺】

〘自カ四〙 ものや気持などがゆらぐ。ゆれ動く。あゆく。
※書紀(720)敏達元年五月(前田本訓)「愀然(みこころアヨキ)たまひて歎きて曰はく」

いす・る【揺】

〘他ラ五(四)〙 (「ゆする(揺)」の変化した語)
ゆり動かす。
② (強請) いいがかりなどをつけて金銭をおどしとる。

いぶ・る【揺】

〘他ラ四〙 (「ゆぶる(揺)」の変化した語) 揺り動かす。特に、赤子を泣きやませるために揺すってあやす。
御伽草子・福富長者物語(室町末)「孫(おまご)はいぶられて、何心なく笑ふ」

とおら・う とをらふ【揺】

〘自ハ四〙 揺れ動く。たゆとう。
万葉(8C後)九・一七四〇「春の日の 霞める時に 住吉(すみのえ)の 岸に出でゐて 釣船の 得乎良布(トヲラフ)見れば 古の 事そ思ほゆる」
[補注]「万葉‐四三八五」東歌に見える「行こ先に浪な等恵良比(トヱラヒ)」の「とゑらふ」は、この転と見られる。

ゆ【揺】

〘名〙 琴(きん)や箏(そう)などで、余韻を波うたせるために左の手の指先で絃を左右(琴)、または上下(箏)に幾回かゆすること。また、その音。
源氏(1001‐14頃)明石「手づかひ、いといたう唐めき、ゆの音ふかう澄ましたり」

ゆさ‐ばり【揺】

〘名〙 =ゆさぶり(揺)
袖中抄(1185‐87頃)一七「梅がえにゆさはりしたふ鶯よ梅のむばらに尻あやふたへ 顕昭云、ゆさばりとはゆさぶりと云あそび也」

ゆ‐・す【揺】

〘他サ変〙
① 琴(きん)を弾く時に、右手で弾いた弦を左の指で押して左右に指を動かし、余韻を上下させる。
(そう)で、左指で弦を強く押えて余韻を上下させる。
※源氏(1001‐14頃)紅葉賀「ちひさき御程に、さしやりて、ゆし給ふ御手つきいとうつくしければ」 〔名語記(1275)〕

ゆすり【揺】

〘名〙 (動詞「ゆする(揺)」の連用形名詞化)
① ゆり動かすこと。また、大騒ぎすること。
或る女(1919)〈有島武郎〉前「あの無頓着さうな肩のゆすりの蔭に」
② (強請) おどし。ねだり。
浮世草子・好色盛衰記(1688)二「菟角分別いたしたと座を立てのきけるは、いま時花(はやる)ゆすりといふ仕かけなるに」
③ 高慢なこと。いばっていること。
※談義本・身体山吹色(1799)三「万吉は高慢(ユスリ)ぎみにて、ヱヱしれた事じゃ飯斗り喰て居られるもの歟」
④ 身なりなどに凝ること。
※浄瑠璃・蝶花形名歌島台(1793)四「『兄さんおまへの其の形はえ』『是か、えいゆすりで有らうがな、けふよりはお侍のちゃきちゃき』」
⑤ 風雅なこと。しゃれていること。
洒落本・昇平楽(1800)「扨琶琵ほどゆすりなものはござりますまいな」
⑥ 「ゆすりじ(揺字)」の略。

ゆす・る【揺】

[1] 〘自ラ四〙
① 揺れ動く。震動する。ゆるぐ。ゆれる。
※宇津保(970‐999頃)吹上下「何心なくかきならすに、天地ゆすりて響く」
② こぞって騒ぐ。揺れ動くほどに大騒ぎをする。皆が動揺して乱れ騒ぐ。どよむ。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「其の楽を上下ゆすりてすれば、鳥も折れ返りて舞ふ」
[2] 〘他ラ五(四)〙
① ゆり動かす。ゆさぶる。ゆすぶる。また、比喩的に、気持を動揺させる。
※仏足石歌(753頃)「御足跡作る石の響きは天に到りつちさへ由須礼(ユスレ)
※湯葉(1960)〈芝木好子〉「わずかな変化が蕗の心をゆするのだった」
② 江戸時代の遊里で、おどしたり口説をしかけたりしてその心をためしさぐる。
※評判記・色道大鏡(1678)一「ゆする 心ただしき人を、おとしかけつ、くぜつしかけつ、心を見る貌なり」
③ (強請) おどしたり、いいがかりをつけたりして、金品などをむりやりに取り上げる。強請する。
※浄瑠璃・椀久末松山(1710頃)上「ままよ、いはばわづかに五十両。しかり立してゆすられて家出やせんとあんじられくふた顔してすませしが」
④ 美しく着飾る。外見を飾りたてる。見栄を張る。また、しゃれる。凝る。
※洒落本・北華通情(1794)「むかふもいまは三丸屋といふかまへにして、座敷などもおおいにゆすったある」
⑤ 意地を張る。
※新撰大阪詞大全(1841)「ゆするとは いじづよいこと」

ゆす・れる【揺】

〘自ラ下一〙 ゆれる。
※落語・牛の嫁入(1890)〈三代目三遊亭円遊〉「だが娘も身躰が悪いから、腕車(くるま)はドンドン動揺(ユスレ)て往(いけ)まいから」

ゆぶ・る【揺】

[1] 〘他ラ四〙
① ゆり動かす。ゆさぶる。ゆする。〔名語記(1275)〕
※松翁道話(1814‐46)一「乳呑子の中から芝居へつれて行き、術無がりて泣くものを、ゆぶったり、乳をねぢ込んだりして」
② 転じて、さわがして回る。吹聴して歩く。
※雑俳・青木賊(1784)「見てほしい・近所をゆぶる鳶が鷹」
[2] 〘自ラ四〙 ゆさぶれる。ゆれる。
※俳諧・俳諧新選(1773)二「ゆりの花雨をたたへてゆぶりけり〈尺布〉」

ゆらか・す【揺】

〘他サ四〙 玉などを触れさせて音を立てさせる。ゆり動かして鳴らす。
※古事記(712)上「御頸珠の玉の緒もゆらに取り由良迦志(ユラカシ)て」

ゆらぎ【揺】

〘名〙 (動詞「ゆらぐ(揺)」の連用形の名詞化)
① 物や光・心がゆれ動くこと。動揺すること。
みだれ髪(1901)〈与謝野晶子臙脂紫臙脂色は誰にかたらむ血のゆらぎ春のおもひのさかりの命」
② 数学で、ある量の平均値は巨視的には一定であっても、微視的には平均値と小さなずれがあること。また、そのずれ。気体分子の熱運動、光の散乱ブラウン運動などにみられる。

ゆら・ぐ【揺】

〘自ガ五(四)〙 (古くは「ゆらく」)
① 玉や鈴などが触れあって音を立てる。
※古事記(712)下・歌謡「浅茅原 小谷を過ぎて 百伝ふ 鐸(ぬて)由良久(ユラク)も 置目(おきめ)来らしも」
② 物や光がゆれる。ゆれうごく。
※二日物語(1892‐1901)〈幸田露伴〉此一日「なむぢ嵐に揺(ユラ)いでは翠光を机上の黄巻に飛ばせば」
③ 物事の基盤がぐらつく。
(イ) 組織などの基盤や勢力が安定しなくなる。「店の身代(しんだい)がゆらぐ」
ノリソダ騒動記(1952‐53)〈杉浦明平〉五「小中山における釜之助の勢力はややゆらいできたけれど」
(ロ) 確固としていた人の信念・気持などが動揺する。「国民の信頼がゆらぐ」
※しろうと農村見学(1954)〈桑原武夫〉「彼の幸福感は当分ゆらぐまいし」

ゆら・す【揺】

〘他サ五(四)〙 物をゆりうごかす。ゆさぶる。ゆする。
※永久百首(1116)恋「白浪にゆらされてくるより竹の一よもねねば恋しかりけり〈源兼昌〉」

ゆり【揺】

〘名〙 (動詞「ゆる(揺)」の連用形の名詞化)
① ゆれうごくこと。また、ゆさぶること。動揺。震動。ゆれ。
※乾坤弁説(1656)利「第三の循環は、日月星常に東西を一回せしむるに、南北へ少ゆること也。此ゆりは数百年の例しを以て見立たるゆり也」
※当世商人気質(1886)〈饗庭篁村〉二「地震がすれば世直し万歳楽(まんざいらく)、それでも揺りが止まねば跣足(はだし)で庭へ駈け出して潰されぬ用心」
② 巫女(みこ)が、死霊の口寄せの時、弓でその上をうち鳴らす具。〔俚言集覧(1797頃)〕
③ 日本の声楽や器楽で、一つの音を細かく上げ下げする定型的な旋律。声明(しょうみょう)・謡曲・義太夫節などには種類が多い。
申楽談儀(1430)祝言の音曲「上げて遣る所をば延ぶると云、言ひ流す所をば永(なが)むると云也。〈略〉ゆりは十也。六・四也」
④ 米を簸(ひ)るための木製の箕(み)。〔日葡辞書(1603‐04)〕

ゆるが・す【揺】

〘他サ五(四)〙
① ゆらぐようにする。ゆり動かす。ゆすぶる。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「おなじしらべながら、はるかにすみのぼりたる声、心細くあはれにて、かみは空をひびかし、しもは地の底をゆるがす」
② 安定していた物事を動揺させる。
※ノリソダ騒動記(1952‐53)〈杉浦明平〉五「釜之助の権力をゆるがしたけれど、くつがえすまでには至らなかった」

ゆるぎ【揺】

〘名〙 (動詞「ゆるぐ(揺)」の連用形の名詞化)
① ゆるぐこと。ゆれること。動揺。
※落窪(10C後)二「打ち叩き、押し引けど、内外につめてければ、ゆるぎだにせず」
② どのようにでも動く状態。不安定な様子。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉下「城井の会計に、ちっとでも余裕(ユルギ)があるなら兎も角も」

ゆる・ぐ【揺】

〘自ガ四〙
① ゆれる。ゆれ動く。動揺する。ゆらぐ。
※源氏(1001‐14頃)関屋「女車多くところせうゆるぎくるに日たけぬ」
※忘却の河(1963)〈福永武彦〉五「もういくら揺すぶってもびくともゆるがなかった」
② 心が動く。気が変わる。心が移る。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「ひとすぢにまつはれて、今めきたる言の葉にゆるぎ給はぬぞねたき事ははたあれ」
※ある女(1973)〈中村光夫〉二「百万円の存在にたいする克巳の信念はゆるがなかった」
③ 悠然とする。ゆったりとしてこせこせしない。
※大鏡(12C前)六「あにどのは、〈略〉公事よりほかのこと他分には申させ給はで、ゆるぎたる所のおはしまさざりしなり」

ゆれ【揺】

〘名〙 (動詞「ゆれる(揺)」の連用形の名詞化)
① ゆれること。ゆれる程度。ゆり。動揺。
※妾の半生涯(1904)〈福田英子〉三「車の揺れの余りに烈しかりしため」
② 一定しないで、不安定な状態にあること。「ことばのゆれ」
※文学志望者の今昔(1932)〈菊池寛〉「ふり切れない過渡期の揺れの中に低迷してゐるのが、今日の一般の青年たちではないだらうか」

ゆ・れる【揺】

〘自ラ下一〙 ゆ・る 〘自ラ下二〙
① ゆらゆらと動く。ゆらめき動く。ふれ動く。動揺する。
※俳諧・元祿風韵(1704‐25頃)花園貞享四江戸「花に遊ぶ虻なくらひそ友雀〈芭蕉〉 猫和らかにゆるる緒柳〈若松〉」
※咄本・無事志有意(1798)玉「駕(かご)がゆれる拍子に」
② 考えや状況、または、組織、基盤などが不安定な状態になる。
※木の上の生活(1969)〈安岡章太郎〉「この家の中での揺れた不安定な心持ちが、逆にヤマシげなものになる」

よ・る【揺】

〘自ラ四〙 ゆれる。ゆれ動く。震え動く。ゆる。
※書紀(720)武烈即位前・歌謡「臣の子の 八符の柴垣 下とよみ 地震(なゐ)が与釐(ヨリ)来ば 破れむ柴垣」

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