早川(読み)ハヤカワ

デジタル大辞泉 「早川」の意味・読み・例文・類語

はや‐かわ【早川】[地名]

神奈川県南西部の川。箱根の芦ノ湖北端の湖尻から流れ出て、仙石原・湯本を経て小田原市相模湾に注ぐ。
山梨県西部、早川町を流れる川。白根山系のあいノ岳に源を発し、南流して身延みのぶ町で富士川に注ぐ。

はやかわ【早川】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「早川」姓の人物
早川孝太郎はやかわこうたろう
早川雪洲はやかわせっしゅう

はや‐かわ〔‐かは〕【早川】

流れのはやい川。

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精選版 日本国語大辞典 「早川」の意味・読み・例文・類語

はや‐かわ‥かは【早川】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 流れのはやい川。早瀬川。
      1. [初出の実例]「しただみを い拾(ひり)ひもちきて 石もち つつきやぶり 早川に 洗ひ濯き」(出典:万葉集(8C後)一六・三八八〇)
    2. ( 京都の武士、早川主馬という人がしめていたというところから ) 赤ふんどし。〔随筆・嬉遊笑覧(1830)〕
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 神奈川県西部の川。箱根山の火口原湖である芦ノ湖に源を発し、北東流して湯本で須雲川を合わせ、小田原市で相模湾に注ぐ。全長約三〇キロメートル。
    2. [ 二 ] 山梨県西部の川。南アルプス北部、白根山付近に源を発し、南下して身延町飯富付近で富士川に合流する。全長約六〇キロメートル。

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日本歴史地名大系 「早川」の解説

早川
はやかわ

芦安あしやす村内から南流してきた野呂のろ川と白根しらね三山の東斜面の谷から発したあら川を源流として早川町地内を南下し、町南部で流路を東に転じて蛇行を繰返し、中富なかとみ町・身延みのぶ町境を流れて富士川に合流する一級河川。わし(一五三四メートル)西端で源流二河川が合流し、合流点から上流はそれぞれ野呂川・荒川とよばれるが、河川法上は野呂川も早川に含まれる。流路延長六一キロ。二河川合流後しばらくは鷲ノ住山南麓の谷を東流、やがて流路を南に転ずるが、その間、東方の夜叉神やしやじん峠の山稜西斜面からアザミ沢・カレイ沢などが早川に入る。その後の流路は糸魚川いといがわ―静岡構造線の方向に形成された谷間を南流するが、東・西の山から数多くの支流を集めて南下し、大島おおしま雨畑あめはた川、角瀬すみせ春木はるき川が合流している。

河川名の早川は、弘安元年(一二七八)九月六日の日蓮書状(日蓮聖人遺文)に身延山からみた情景として「北に大河あり、早河と名く、早き事箭をいるか如し」とみえ、その後の書状にも散見する。


早川
はやかわ

芦ノ湖の北岸に源を発し、箱根外輪山明神みようじんヶ岳・明星みようじようヶ岳・とうノ峰、中央火口丘小塚こづか山・だいヶ岳、新期外輪山の浅間せんげん山・湯坂ゆさか山などの沢水を集めて東に流れ、箱根町湯本ゆもと大観たいかん山付近から流れ出る須雲すくも川を合し、小田原市早川で相模湾に注ぐ。全長約三〇キロ。

仁治三年(一二四二)の「東関紀行」は「谷川みなぎりまさり、岩瀬の波たかくむせぶ」と記す。阿仏尼も「十六夜日記」建治三年(一二七七)一〇月二八日に「はやかはといふ河あり、まことにはやし、木のおほく流るゝを、いかにととへば、あまのもしほ木を、うらへいださんとて、ながすなりといふ」と記して「あづまぢのゆさかをこえて見わたせばしほ木ながるゝはや河の水」と詠んでおり、河口の海辺では、潮水を含ませた海藻を焼いて釜で煮る製塩が行われていたらしい。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「早川」の意味・わかりやすい解説

早川(山梨県)
はやかわ

山梨県西部を流れる富士川の支流。赤石山脈(あかいしさんみゃく)に源を発し、同山脈とその前山の巨摩(こま)山地の間を糸魚川‐静岡構造線に沿って流下、早川町高住(こうじゅう)の角瀬(すみせ)付近で東流し、身延(みのぶ)町波高島(はだかじま)の対岸飯富(いいとみ)付近で富士川に合流する。河床勾配(こうばい)が急であること、集水面積が広いこと、また比較的降水量の多い地域であること、さらに地質条件も悪いことから台風時にはしばしば大災害を起こし、奥地の集落を孤立させた。森林資源が豊富であり、その開発のため県が林道開発を行い、また水量を利用した多目的ダムが建設された。さらに古くから知られた西山温泉奈良田(ならだ)温泉もあり、流域はその渓谷美、山岳美がようやく世間に知られるようになった。

[吉村 稔]


早川(町)
はやかわ

山梨県南西部、南巨摩郡(みなみこまぐん)にある町。富士川の支流早川の流域を占め、面積は町・村では県で最大(369.96平方キロメートル)だが、その90%が山林である。1956年(昭和31)本建(もとだて)、五箇(ごか)、硯島(すずりじま)、都川(みやこがわ)、三里(みさと)、西山の6村が合併して町制改称。古くは金山があって栄えた地区もあり、昭和30年代までは農林業も盛んであった。その後、早川を利用した水力発電所を建設、山岳・渓谷美と奈良田温泉(ならだおんせん)、西山温泉、白根(しらね)三山、身延(みのぶ)山奥の院のある七面山(しちめんざん)などがあり、観光地化が進んでいる。雨畑硯(あめはたすずり)が特産品である。人口1098(2020)。

横田忠夫

『『早川町誌』(1980・早川町)』



早川(神奈川県)
はやかわ

神奈川県西部、足柄下(あしがらしも)郡箱根町から小田原市にかけて流れる川。延長29.4キロメートル。芦ノ湖(あしのこ)北端の湖尻(こじり)に発し、仙石原(せんごくはら)(火口原)をはじめ中央火口丘と古期外輪山の間を流下する火口瀬(らい)で、湯本で須雲川(すくもがわ)をあわせ、小田原市で相模(さがみ)湾に注ぐ。その流水がきわめて早く雷のような音をたてるというので早川と名づけられたという。本流沿いの谷壁は箱根火山の基盤岩層に近く、至る所に緑や紅葉のうっそうたる樹林、それに清流を配して富士箱根伊豆国立公園の核心的景勝美をなす。加えて古くから湯本、塔ノ沢、堂ヶ島、宮ノ下などの温泉の湧出(ゆうしゅつ)も多い。早川の水は江戸時代から小田原の城下町用水、また沿岸農村の灌漑(かんがい)用水に利用されてきたが、現在は県営発電所の用水にも使われている。

[浅香幸雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「早川」の意味・わかりやすい解説

早川 (はやかわ)

山梨県西部を流れる富士川の支流。長さ約70km。上流は野呂川と呼ばれ,白根三山の間(あい)ノ岳北斜面を水源として北流する。北岳の北を大きくまわって南流し,鷲ノ住山付近で西から荒川を合わせ早川となる。中流はほぼ糸魚川-静岡構造線に沿って南下し,早川町大島で南からの雨畑川を合わせて東流し,身延町の南部で富士川に合流する。早川の流路の多くは糸魚川-静岡構造線やこれに平行する断層に沿っており,地殻変動の影響を強く受けている。また急流で水量も多く,浸食作用が活発で,流域には七面山の大崩壊地をはじめ新旧の崩壊地が各所に見られる。したがって下流部の河床では土砂の堆積が多く,建築用川砂利の採取が盛んに行われている。流域は,モミ,ツガを主とする森林資源が豊富で,近世から木材の伐採が行われ,早川の流れを利用して運ばれた。1952年から早川流域総合開発事業が始められ,西山ダム(奈良田湖)や支流雨畑川の雨畑ダムなどが建設された。上流部は南アルプス国立公園に属し,中流部には西山温泉などの温泉がある。
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早川 (はやかわ)

神奈川県西部の川。箱根火山の火口原湖,芦ノ湖を水源として北岸の湖尻から北流して,仙石原からは南東に向きを変え,宮城野,宮ノ下を経て,箱根湯本で須雲川を合わせ,西流して小田原の市街地南縁で相模湾に注ぐ。幹川流路延長21km,流域面積107km2。宮城野付近までは谷底平野も見られるが,その後は箱根火山の初期外輪山に峡谷を刻み,早瀬となって流下する。木賀から湯本までの数ヵ所で滝も見られる。川沿いには木賀,宮ノ下,底倉,堂ヶ島,芦ノ湯,塔ノ沢,湯本など箱根七湯(ななゆ)に数えられた古くからの温泉群が湧出している。下流では小田原市の早川・大窪両地区で灌漑用水として利用されている。
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早川[町] (はやかわ)

山梨県南西端,南巨摩(みなみこま)郡の町。人口1246(2010)。赤石山脈の白根山と櫛形山に東西を囲まれ,その間を早川と雨畑(あめはた)川が流れる。面積397km2はかつて県下市町村中最大で,総面積の90%以上を山林が占める。戦国時代には穴山氏領で,金山が開発され江戸時代に入っても採掘は続いた。雨畑硯(すずり)の産地で,旧村名硯島にその名を残す。豊富な森林資源と水資源の開発のために,林道やダムが整備され,奈良田湖,雨畑湖がつくられた。西部は南アルプス国立公園に属し,西山温泉,奈良田温泉(食塩泉,45℃)がある。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「早川」の意味・わかりやすい解説

早川[町]【はやかわ】

山梨県西部,静岡県と接する南巨摩(みなみこま)郡の町。西部を赤石山脈が占め,早川の深い渓谷に集落が立地する。シイタケ,クリ,コンニャクなどを産する。発電所が多い。西部は南アルプス国立公園に属し,西山温泉がある。南の雨畑は硯(すずり)の特産地。369.96km2。1246人(2010)。

早川【はやかわ】

山梨県西縁の川。長さ66km。富士川の一支流で,糸魚川・静岡構造線に沿う。北岳の西斜面に源を発し,河床勾配(こうばい)が大きく,水量も豊富な荒れ川であるが,渓谷美に富み,西山・奈良田の温泉もある。12世紀の日蓮の書状に早河とみえ,川筋は木材や金の産地として知られた。江戸時代には江戸城の建築用材などを供給した。水力発電にも利用。
→関連項目早川[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「早川」の意味・わかりやすい解説

早川
はやかわ

山梨県西部を流れる川で,富士川の支流。全長 61km。上流部は野呂川と呼ばれる。赤石山脈北部の仙丈ヶ岳,白根三山付近に発し,赤石山脈と巨摩山地の間を,糸魚川-静岡構造線に沿って南流。早川町高住 (こうじゅう) で東に向きを変え,富士川に注ぐ。谷に点在する奈良田などの集落は長らく隔絶した山村であったが,西山ダムをはじめ多数の発電所が建設され,道路も改善された。上流域はモミ,ツガなどの森林資源が豊富で,谷沿いに南アルプス林道が通る。白根三山の登山道として利用され,途中の白鳳渓谷は紅葉の名所でハイカーも多い。

早川
はやかわ

神奈川県南西部,箱根山の火口原を流れる川。全長約 20km。芦ノ湖の北岸に発し,中央火口丘の西麓に沿って北流する。仙石原で南東に向きを変え,新旧外輪山の間に深い峡谷を形成しながら流れる。湯本で南西からの須雲川を合せてのち,外輪山を出て,小田原西部で相模湾に注ぐ。河口の早川には小田原漁港がある。沿岸には湯本,宮ノ下,強羅など温泉が多く,渓谷美でも有名。

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事典・日本の観光資源 「早川」の解説

早川

(山梨県南巨摩郡早川町)
ふるさとの水辺百選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の早川の言及

【芦ノ湖】より

…芦ノ湖南端に長さ3km,幅3mの大明神川が流入するが,1930年北伊豆地震の際,この川の谷頭より山津波が発生し,河床が埋没したため,河川水の大部分は伏流水となった。芦ノ湖の水は本来湖尻から早川に排出していたが,寛文年間(1661‐73)駿河国深良村名主大場源之丞が外輪山西部の湖尻峠下を貫く箱根用水を掘削して以来,平均日量15万tの水が深良トンネルを経て裾野市方面に流出している。現在では大雨による危険がある時以外,湖尻の逆川水門を経て早川に流出する水はない。…

【早川[町]】より

…人口1977(1995)。赤石山脈の白根山と櫛形山に東西を囲まれ,その間を早川と雨畑(あめはた)川が流れる。面積397km2は県下市町村中最大であるが,総面積の90%以上を山林が占める。…

※「早川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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