柳川鍋(読み)やながわなべ

精選版 日本国語大辞典 「柳川鍋」の意味・読み・例文・類語

やながわ‐なべ やながは‥【柳川鍋】

〘名〙 浅い土鍋笹掻牛蒡(ささがきごぼう)を敷き、その上に背開きにして、骨、頭をとった泥鰌(どじょう)を菊花形にならべ、醤油、酒、砂糖などの割下(わりした)を加えてよく煮込み、鶏卵を流し込んでとじたもの。「柳川」の名称については、天保一八三〇‐四四)の頃、江戸横山町(東京都中央区東日本橋二~三丁目)で売りだした店の屋号に基づくとも、初め用いられた土鍋が、筑後国(福岡県)柳川辺の窯で焼かれたものであったところからなどともいう。《季・夏》
※東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉中「鰌鍋〔柳川鍋(ヤナガハナベ)〕また鰻屋の兼ぬるあり」

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デジタル大辞泉 「柳川鍋」の意味・読み・例文・類語

やながわ‐なべ〔やながは‐〕【柳川鍋】

背開きにしたドジョウを、浅い鍋にささがきゴボウを敷いた上に並べ、味付けして煮て、卵を流し込んでとじた料理。名称は、江戸末期に売りだした店の屋号からとも、柳川焼の土鍋を使ったからともいう。 夏》
[類語]鍋物寄せ鍋ちりちゃんこ鍋水炊きおでんしゃぶしゃぶ石狩鍋しょっつる鍋チゲすき焼き牛鍋ジンギスカン鍋ジンギスカン料理

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「柳川鍋」の意味・わかりやすい解説

柳川鍋
やながわなべ

ドジョウをゴボウとともに煮て、溶き卵でとじた鍋(なべ)料理。古くからある料理で、江戸末期の『守貞漫稿(もりさだまんこう)』に「鰌(どじょう)汁、鯨汁ともに一椀(わん)十六文、鰌鍋四十八文也(なり)。骨抜(ほねぬき)鰌鍋の始は文政(ぶんせい)(1818~30)初めころ、江戸南伝馬(てんま)町三丁目の裡店(うらだな)に住居せる萬屋(よろずや)某といふ者、鰌を裂いて骨首臓腑(ぞうふ)を去り鍋煮にして売る。其後(そのご)天保(てんぽう)(1830~44)初めころ横山同朋町にて是(これ)も裡店住の四畳半許(ばかり)の処(ところ)を客席として売始め家号を〈柳川〉といふ。其後横山町二丁目新表店に移りて大いに行はれ今に存在す。又白銀(しろかね)町日本橋通二丁目の式部小路等諸所に同号の店を開き、其他同名に非(あらざ)る者も専(もっぱ)ら之(これ)を売る。京坂にも伝へ売る事になりたり(下略)」と紹介されている。当時から現在まで、柳川の名の料理の内容はほとんど変わっていない。ささがきごぼうの上に裂いたドジョウを並べて卵とじにするのである。鍋は土製で二重になっている。だいたい、現在のどじょう鍋と同じで、上にドジョウ、ゴボウ、溶き卵を入れ、下には熱湯を入れて保温役目をさせる。柳川鍋は、味、栄養兼備の料理であるから、いまでも好む人が多く、うなぎ料理店などでつくられている。また、どじょう料理専門店でもつくられる。柳川もどきの名で鶏肉、魚肉などを用いての柳川風の鍋料理もある。

 柳川鍋の名称については、福岡県柳川(やながわ)市に由来するという説もある。柳河藩(立花氏)江戸屋敷の家臣が、ドジョウを土鍋で煮て将軍に献上し、ドジョウのようなものまで食べなくてはならない藩の窮状を訴えてからこの料理が広まったという。

[多田鉄之助]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「柳川鍋」の意味・わかりやすい解説

柳川鍋
やながわなべ

どじょうの鍋料理。古く江戸時代の『守貞漫稿』に今日と同じ料理法が記されている。浅い土鍋に笹がきごぼうを敷き,その上に背開きにしたどじょうを円形に並べ,出し汁,醤油,砂糖で調味し,とき卵を掛けて卵とじにする。名称の起りは,九州の柳川産の土器を用いたから,あるいは上記の本に書かれた日本橋横山町新道の柳川というどじょう屋から広まったためといわれる。

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百科事典マイペディア 「柳川鍋」の意味・わかりやすい解説

柳川鍋【やながわなべ】

ドジョウの鍋料理。福岡県柳川産の土鍋を使用したからとも,柳の下のドジョウにちなむ名ともいう。土鍋にささがきゴボウを入れ,上に開いたドジョウを載せ,だしを注いで煮込み,卵でとじてつくる。
→関連項目ドジョウ

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「柳川鍋」の解説

やながわなべ【柳川鍋】

独特の浅い土鍋で、背割りにしたどじょうとささがきにしたごぼうを甘辛く煮て、卵でとじた料理。粉ざんしょうを添える。

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