ドジョウをゴボウとともに煮て、溶き卵でとじた鍋(なべ)料理。古くからある料理で、江戸末期の『守貞漫稿(もりさだまんこう)』に「鰌(どじょう)汁、鯨汁ともに一椀(わん)十六文、鰌鍋四十八文也(なり)。骨抜(ほねぬき)鰌鍋の始は文政(ぶんせい)(1818~30)初めころ、江戸南伝馬(てんま)町三丁目の裡店(うらだな)に住居せる萬屋(よろずや)某といふ者、鰌を裂いて骨首臓腑(ぞうふ)を去り鍋煮にして売る。其後(そのご)天保(てんぽう)(1830~44)初めころ横山同朋町にて是(これ)も裡店住の四畳半許(ばかり)の処(ところ)を客席として売始め家号を〈柳川〉といふ。其後横山町二丁目新表店に移りて大いに行はれ今に存在す。又白銀(しろかね)町日本橋通二丁目の式部小路等諸所に同号の店を開き、其他同名に非(あらざ)る者も専(もっぱ)ら之(これ)を売る。京坂にも伝へ売る事になりたり(下略)」と紹介されている。当時から現在まで、柳川の名の料理の内容はほとんど変わっていない。ささがきごぼうの上に裂いたドジョウを並べて卵とじにするのである。鍋は土製で二重になっている。だいたい、現在のどじょう鍋と同じで、上にドジョウ、ゴボウ、溶き卵を入れ、下には熱湯を入れて保温の役目をさせる。柳川鍋は、味、栄養兼備の料理であるから、いまでも好む人が多く、うなぎ料理店などでつくられている。また、どじょう料理専門店でもつくられる。柳川もどきの名で鶏肉、魚肉などを用いての柳川風の鍋料理もある。
柳川鍋の名称については、福岡県柳川(やながわ)市に由来するという説もある。柳河藩(立花氏)江戸屋敷の家臣が、ドジョウを土鍋で煮て将軍に献上し、ドジョウのようなものまで食べなくてはならない藩の窮状を訴えてからこの料理が広まったという。
[多田鉄之助]
ドジョウ料理の一種。浅い土なべに笹搔(ささがき)ゴボウを敷き,その上に開いて頭や骨をとったドジョウを菊花形に並べ,しょうゆ,酒,砂糖などを合わせた割下(わりした)を注いで煮込み,卵とじにする。筑後柳川(福岡県)産の土なべを使ったための名などとするが,語源ははっきりしない。《守貞漫稿》によると,文政(1818-30)初年に江戸南伝馬町の万屋某なる者がドジョウをさいてなべ煮して売り出したのが骨抜きドジョウなべの始まりだという。その後,天保(1830-44)の初めころ横山同朋町に〈柳川〉という名の店が開業して評判になり,いくつもの支店を出すほどに繁昌した。当時の柳川なべは二重の土なべを使っていた。上のなべは黄色の浅いもので,これにドジョウの卵とじを入れて春慶塗のふたをし,熱い湯を入れた下のなべにすっぽりはめ込んで冷めぬようにしていた。値段は一人前ドジョウ汁が16文,丸のドジョウなべが48文であったのに対して,柳川なべは200文と高価であったという。
執筆者:鈴木 晋一
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…動物の雌が体外に産み出す卵子のこと。卵細胞は動物の諸細胞の中で最大で,とくに鳥類の卵は大きく,最小のハチドリの1種の卵でも1.2cm×0.8cm,最大のダチョウ卵に至っては16cm×12cmもの大きさがある。鳥類では,体の大きな鳥ほど大きな卵を産む傾向がある。ただし,体重に対する卵重の比は,大きな鳥ほど小さくなる傾向がある。体外に産み出される卵は,外敵からの保護や乾燥の防止などのために,膜membraneや殻shellによっておおわれていることが多い。…
…コイ目ドジョウ科の淡水魚(イラスト)。アメリカ,カナダではOriental weatherfish,イギリスではloach(ドジョウ科の他種を含む)という。日本のほぼ全土,台湾,朝鮮半島およびアジア大陸の東部一帯に広く分布。平野部の浅い池,沼,水田,水路などの泥底にすむ。よく底に潜り,とくに冬季にはわずかに湿気のある泥底に潜って越年するものもある。また腸で空気呼吸をする習性があってよく酸素欠乏にも耐える。…
※「柳川鍋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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