御田(読み)オデン

デジタル大辞泉 「御田」の意味・読み・例文・類語

お‐でん【御田】

《「でん」は「田楽でんがく」の略》
さつまあげはんぺん・焼きちくわつみれ蒟蒻こんにゃく・大根などを、汁をたっぷり使って煮込んだ料理。煮込みおでん関西では、関東だき・関東煮とよぶ。 冬》硝子戸に―の湯気の消えてゆく/虚子
田楽豆腐。また、木の芽田楽
蒟蒻こんにゃくくしに刺し、練り味噌を付けた食品
[類語]鍋物寄せ鍋ちりちゃんこ鍋水炊きしゃぶしゃぶ石狩鍋しょっつる鍋柳川鍋チゲすき焼き牛鍋ジンギスカン鍋ジンギスカン料理

み‐た【御田/屯田】

神領の田。神田
上代皇室直轄領
律令制で、官司直属の直営田。

おん‐だ【御田】

「御田祭り」の略。→御田植おたうえ祭り

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精選版 日本国語大辞典 「御田」の意味・読み・例文・類語

み‐た【御田・屯田】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「み」は接頭語 )
  2. 神社が所有している田。神領の田。神田。
    1. [初出の実例]「為御田時〈美太止之太万不止支(ミタとしたまふとき)〉」(出典:御巫本日本紀私記(1428)神代上)
  3. 令制以前、大王の地位に付属する供御料田。とんでん。
    1. [初出の実例]「是の時に額田(ぬかたの)大中彦皇子(みこ)将に倭の屯田(ミタ)と屯倉(みやけ)とを掌むとして」(出典:日本書紀(720)仁徳即位前(前田本訓))
  4. 官司所属の直営田。令制の官田。
    1. [初出の実例]「官司の屯田(ミタ)、及び吉備嶋の皇祖母の処々の貸(いら)しの稲を」(出典:日本書紀(720)大化二年三月(北野本訓))

お‐でん【御田】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語。豆腐の串焼きが、田楽(でんがく)で高足に乗っておどるさまに似ているところからという )
  2. 田楽豆腐のこと。また、特に焼いた豆腐に木の芽味噌(みそ)をぬって食べる木の芽田楽をいうこともある。
    1. [初出の実例]「大すけ殿より御てん、たいの物に御たるまいる」(出典:御湯殿上日記‐天正一八年(1590)一〇月一一日)
  3. 蒟蒻(こんにゃく)を串にさし、味噌を塗りつけた田楽。〔随筆・浪花の風(1856)〕
  4. 煮込みおでん。蒟蒻、豆腐、芋、はんぺん、がんもどきなどを煮込みにしたもの。関東煮。《 季語・冬 》 〔滑稽本・小野譃字尽(1806)〕

おん‐だ【御田】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 神社が所有している田地。その収益を神社の経営にあてるための田。
    2. おんだまつり(御田祭)」の略。
      1. [初出の実例]「きのふは廿八日御田(ヲンダ)、虎が涙雨の名残をけふも袖はぬれぬ斗に降ぬ」(出典:浮世草子・男色大鑑(1687)七)
  2. [ 2 ] 狂言。各流。加茂の明神に仕える神主氏子早乙女(さおとめ)たちが、田園情緒豊かなことばをはやしながら田植えをする。能「加茂」の替間(かえあい)としても演じられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「御田」の解説

おでん【御田】

野菜や練り物などを多量の汁を用いて煮込んだ料理。しょうゆ味のだし汁を用いることが多い。大根・こんにゃく・昆布・がんもどき・はんぺん・ちくわ・さつま揚げ・豆腐などがよく用いられる。からしをつけて食べる。◇「煮込みおでん」ともいう。また関西では「関東炊き」ともいう。こんにゃくに串に刺してゆで、みそをつけたものをいうこともあり、これは「みそおでん」ともいう。「おでん」は「田楽(でんがく)」の略に接頭語「お」がついたものとされ、古い文献などでは田楽(特に木の芽田楽)をいうこともある。練りみそをつけて焼く、古くからある「田楽(田楽焼き)」に対し、江戸時代後期にみそを用いて煮込むものが見られるようになり、これを区別して「おでん」というようになった。こんにちもっとも一般的なしょうゆ味のだし汁で煮込むものは、その後、明治期頃に作られるようになったとされる。⇒田楽木の芽田楽

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「御田」の意味・わかりやすい解説

御田 (おんだ)

能《賀茂》にこの名の小書(こがき)がついたとき演じられる替間(かえあい)狂言。賀茂明神の神主が五穀豊穣を祈って田植の神事をはじめようと氏子の早乙女たちを呼び出し田植を命じる。神主と女たちは,機知と諧謔に富んだ田植歌を応酬し,神主は朳(えぶり)を持って舞う。田植歌は,各地に残る田植踊や田植の神事の歌舞に共通の要素をもつ。和泉流では本狂言としても演ずることがあり,その場合は曲名を《田植》という。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の御田の言及

【田遊】より

…稲作の作業次第を模擬的に演じて,その年の豊作を祈願する予祝行事。新春に行われる場合が多く,御田(おんだ),春鍬(はるくわ),田植祭,春田打(はるたうち)などとも称する。地方によって多少の違いはあるが,中心は種まきから刈取りまでを演じる。…

【民俗芸能】より

…民俗と称するのも,それが地域における社会慣習と認識されたためであり,事実,それらの芸能の多くは,土地や人の繁栄,息災を祈願する儀礼として,季節のおりおりに催す地域の祭りに毎年演じるのをならわしとした。すなわち,農耕生活を主体に社会を形成している日本では,年の初めにまず当年の穀物の豊穣を祈願予祝する祭儀を営むが,農村ではこのとき田遊(たあそび),春田打(はるたうち),御田(おんだ),田植踊などと称する芸能を演じる。田の土ならしから稲の収穫にいたる稲作の模様を,歌としぐさ,踊りなどで表現し,このとおりの無事収穫をお願いすると祈るのである。…

※「御田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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