改訂新版 世界大百科事典 「機械加工」の意味・わかりやすい解説
機械加工 (きかいかこう)
machining
machine work
工作機械を用いて金属またはそれに準ずる材料(プラスチックなど)を加工すること。美術品や工芸品では,その製作がほとんど手作業に依存しているものもあり,それゆえの製作数の少なさ,あるいは個々の微妙な差異に価値があることが多々ある。これに対して機械加工は工業製品を作ることをその目的としており,したがって同一形状のものをすぐれた精度で大量に作ることが重要視され,このためそれぞれの加工を行う専用あるいは汎用の工作機械が開発されている。機械加工には切削加工,研削加工,遊離砥粒(とりゆう)による加工など主として材料の不要部分を切りくずとして除去しつつ行う加工が含まれ,このほか,超音波加工,放電加工,電解加工,プラズマ加工,電子ビーム加工,イオンビーム加工,レーザー加工などの特殊加工と呼ばれているものも,材料の不要部分を除去する加工法であることから広義の機械加工に含めることがある。これに対し,プレス加工や鍛造,溶接,鋳造などは金属加工と呼ばれ,機械加工と区別されることが多い(金属加工)。
切削加工は切削工具(刃物)と加工物を相対的に運動させることにより,切りくずを出しつつ所要の形状を削り出す加工法で,これには加工物を回転させ,これに切削工具をあてがって回転面や丸穴などの加工を行う旋削,外周または端面に複数の切刃をもつ工具を回転させて平面や溝の加工を行うフライス削り,工具と加工物との直線相対運動の繰返しによって平面の加工を行う平削りや形削り,立削り,多数の切刃が直列状に並んだ工具で穴の内面や外表面の仕上げを行うブローチ削り,ドリルによる穴あけ加工のほか,歯車の歯切り,のこぎりによる材料の切断などがある。
研削加工は,といしを用いて加工物を削り,所要の精度および形状を与える加工法で,表面を高い精度で仕上げたいときや,焼入れした面の仕上げなどに用いられる。高速で回転するといしを用い,これに機械的にある一定の切込みを与えて行われるほか,といしに圧力を加えて研削を行う方法としてホーニングや超仕上げがあり,また砥粒のついたベルトにより加工するベルト研削加工もある。
遊離砥粒を用いて行う加工には,工具と加工物との間に砥粒あるいは砥粒と油などを混合したものを入れて,加工物を押し付けながら相対運動を行わせ,砥粒によりきわめて微小の切りくずを削りつつ加工を行うラッピング,砥粒を周囲に接着したホイール状の工具を高速回転させ,これに工作物を押し付けて加工するバフ仕上げ,バレルと称する容器内に砥材と工作物と工作液を入れて,回転または振動させて表面の仕上げを行うバレル加工などがある。なお切りくずを出す加工ではないが,滑らかな表面をもつ工具を加工物の表面に押し付けながら移動させ,加工物表面に塑性変形と加工硬化を生じさせながら滑らかな仕上面を得るバニシング加工も機械加工の中に含めることが多い。
現在では,機械加工のすべての分野にわたって数値制御が一般化しており,そのほか,産業用ロボットと組み合わせて,無人化をすることも行われている。工具の準備供給はまだ人手に頼ることが多いが,これらもいずれは無人化されるものと思われる。
→研削 →工作機械 →切削
執筆者:長尾 高明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報