裁判や、検察官・司法警察職員などがなした処分についての不服申立てをいう。
[内田武吉・加藤哲夫]
受命裁判官または受託裁判官の裁判について不服がある当事者が、受訴裁判所に申し立てる異議のこと(民事訴訟法329条1項)。そして、その異議の裁判に対して不服があれば抗告ができるものとしている(同条2項)。この異議は、その裁判が受訴裁判所の裁判であれば抗告をなしうるもの(たとえば、証人尋問への不出頭に対する過料、証言拒絶についての裁判、および制裁など)に限って許される。異議について受訴裁判所は決定で裁判するが、この決定に対する抗告は一般の規定による。最高裁判所または高等裁判所が受訴裁判所である場合は、その裁判に対して抗告することができないので(裁判所法7条)、権利救済に欠けることのないように民事訴訟法第329条3項が設けられている。すなわち、地方裁判所でなされたならば抗告できる裁判であるときは、受訴裁判所に対し異議を申し立てることができるものとした。なお、この異議の裁判に対しては、もはや抗告はできない。
[内田武吉・加藤哲夫]
裁判官がなした忌避の申立てを却下する裁判、勾留(こうりゅう)・保釈・押収等の還付に関する裁判、鑑定のため留置を命ずる裁判など(刑事訴訟法429条1項)、または検察官・検察事務官もしくは司法警察職員がなした被疑者と弁護人の接見時間の指定、押収もしくは押収物の還付に関する処分(同法430条)に対して、不服のある者がする申立てをいう。その不服申立ては、当該裁判官所属の裁判所(簡易裁判所の裁判官のときは管轄地方裁判所)または所属検察庁に対応する裁判所もしくは司法警察職員の職務執行地を管轄する裁判所に対して、そのなした裁判あるいは処分の取消しまたは変更を請求することができる。これらの請求をするには、請求書を管轄裁判所(準抗告裁判所)に差し出さなければならない(同法431条)。
[内田武吉・加藤哲夫]
訴訟手続における不服申立ての一種。その働きは抗告に似るが,上級裁判所への救済申立てでない点で,これと異なる。
(1)民事訴訟では,受命裁判官(合議体を構成する裁判官の一人で,受訴裁判所を代表して権限を行使する者)または受託裁判官(受訴裁判所の委託を受けて権限を行使する裁判官)が下した裁判に対して不服のある者は,事件を審理している受訴裁判所に異議の申立てをすることができ,これが準抗告と呼ばれるものである。準抗告の対象となる裁判は,受訴裁判所自身が下したとすれば抗告の対象となりうるもの(たとえば,鑑定人忌避申立却下の裁判,民事訴訟法214条)に限られる。受命裁判官・受託裁判官は受訴裁判所の授権に基づいて受訴裁判所にかわって一定の職務を行うものであるから,まず受訴裁判所に準抗告をして,それに対して受訴裁判所がした裁判になお不服がある場合に,はじめて抗告の申立てが許される(329条)。
(2)刑事訴訟では,裁判官がした裁判で,忌避申立却下のほか,勾留,保釈,押収または押収物の還付に関する裁判,鑑定留置を命じる裁判などに対して,不服のある者は,その裁判官が所属する裁判所(ただし,簡易裁判所の裁判官の場合には管轄地方裁判所)に,取消しまたは変更の請求,すなわち準抗告をすることができる(刑事訴訟法429条)。また,検察官・検察事務官,または司法警察職員が行った,被疑者と弁護人の接見時間の指定,押収などの処分に不服のある者は,検察官等のした処分の場合はその検察官等の所属する検察庁に対応する裁判所に,また,司法警察職員のした処分の場合はその司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に,その取消し・変更を請求することが認められており(430条),これも準抗告と呼ばれている。
執筆者:後藤 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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