二荒山神社(読み)ふたらさんじんじゃ

精選版 日本国語大辞典 「二荒山神社」の意味・読み・例文・類語

ふたらさん‐じんじゃ【二荒山神社】

(「ふたらやまじんじゃ」「ふたあらやまじんじゃ」「ふたあらさんじんじゃ」とも)
[一] 栃木県日光市山内にある神社。旧国幣中社。祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)・田心(たごり)姫命・味耜(あじすき)高彦根命。上古の二荒山(男体山)に対する山岳信仰に始まり、神護景雲元年(七六七)勝道上人がふもとに社殿を創建して本社とし、山上に奥宮、中腹に中宮を建てた。二荒は補陀落(ふだら)観音浄土)の意で「にこう」とも音読。天台宗系の修験道の中心で二荒権現、日光権現と呼ばれた。国宝の太刀二振りを蔵する。下野国一の宮日光二荒山神社
[二] 栃木県宇都宮市馬場通りにある神社。旧国幣中社。祭神は豊城入彦命(とよきいりひこのみこと)、大物主命、事代主命。仁徳天皇の代に下野国造(しもつけのくにのみやつこ)奈良別王が祖神の豊城入彦命を奉斎したのに始まると伝えられる。一説に下野国一の宮という。宇津宮二荒山神社。宇津宮大明神。

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デジタル大辞泉 「二荒山神社」の意味・読み・例文・類語

ふたらさん‐じんじゃ【二荒山神社】

栃木県日光市にある神社。祭神は大己貴命おおなむちのみこと田心姫命たごりひめのみこと田霧姫命)・味耜高彦根命あじすきたかひこねのみこと。神護景雲元年(767)勝道上人が三神を祭って創建したといわれる。平成11年(1999)「日光の社寺」の一つとして世界遺産文化遺産)に登録された。
ふたあらやまじんじゃ

ふたあらやま‐じんじゃ【二荒山神社】

栃木県宇都宮市にある神社。祭神は豊城入彦命とよきいりひこのみことほか二神。下野しもつけ国の一の宮。宇都宮明神。

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日本歴史地名大系 「二荒山神社」の解説

二荒山神社
ふたあらやまじんじや

[現在地名]宇都宮市馬場通り一丁目

宇都宮市街中央部に位置し、鳥居は東西に通る大谷おおや街道に南面して建つ。参道は鳥居から北へ石段を登りつめ、神門をくぐると正面に拝殿・本殿がある。祭神は豊城入彦命・大己貴命・事代主命・建御名方命。旧国幣中社。宇豆宮・宇都宮大明神などとよばれ、宇都宮の地名はここから発生したという。崇神天皇第一皇子豊城入彦命が東国下向の際、毛野国池辺いけのべ荒尾崎あらおざきに、大和三輪山の三神を勧請して祀ったという伝えがある。荒尾崎は小寺峯こでらみねともよばれ、現在の摂社下ノ宮の地にあたる。仁徳天皇の代に毛野国が上下に分れたとき下毛野国の官社となり、承和五年(八三八)荒尾崎からうすみねの現在地に移したという。「大日本国一宮記」は河内かわち郡二荒山神社を下野国一宮とする。

〔二荒神〕

承和三年一二月二五日下野国従五位上勲四等二荒神は正五位下に、同八年四月一五日に正五位上に、嘉祥元年(八四八)八月二八日には従四位下に叙せられている(続日本後紀)。天安元年(八五七)一一月一七日には従三位勲四等二荒神に封戸一烟が充てられている(文徳実録)。貞観元年(八五九)一月二七日京畿七道諸神の階を進めた時には、下野国で一社のみあげられて正三位になり、同二年九月一九日には二荒神社に初めて神主が置かれた。同七年一二月二一日従二位、同一一年正二位へと昇進した(三代実録)。文明一六年(一四八四)の宇都宮大明神代々奇瑞之事(群書類従)によれば、天慶年間(九三八―九四七)平将門追討に際し、下野押領使藤原秀郷は当社に祈念し、神剣を得て、これにより将門の首をはねたため、宇都宮大明神は正一位勲一等を贈られたという。「延喜式」神名帳には河内郡の一座として「二荒山神社」があり、下野国唯一の名神大社であった。読みについては異本により「フタアラノ」「フタラノ」の二通りが記される。「左経記」寛仁元年(一〇一七)一〇月二日条では、後一条天皇の即位に伴い下野二荒に一代一度の奉幣使が派遣されている。康和五年(一一〇三)六月一〇日の神祇官(朝野群載)によれば下野国二荒山神にも穢の祓いの使が下されている。上記の史料に現れる二荒神につき、当社と日光二荒山神社のいずれにあたるかは近世以来論議の対象となったが、確定できない。

〔中世〕

永万元年(一一六五)六月日の神祇官諸社年貢注文(永万文書)には「宇豆宮上馬二匹」とあり、神祇官に上馬二匹を進納している。「平家物語」巻一一には、那須与一が屋島合戦の折、船に揺られる扇の的を射る時に「我国の神明、日光権現宇都宮・那須の大明神」に祈念したところ、風も弱まりみごとに扇を射ることができたと記される。

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改訂新版 世界大百科事典 「二荒山神社」の意味・わかりやすい解説

二荒山神社 (ふたらさんじんじゃ)

栃木県日光市山内に鎮座。古く日光権現とよばれ,現在日光二荒山神社ともよぶ。二荒山に鎮まる神霊,二荒山大神すなわち大己貴(おおなむち)命,その妃田心姫(たごりひめ)命,子の味耜高彦根(あじすきたかひこね)命をまつる。二荒山すなわち男体山,妃の女峰山,子の太郎山等を神体山とする古代信仰に発し,767年(神護景雲1)下野国芳賀(はが)郡の勝道上人が発願,本社の地に社殿を建て奉斎,かたわらに四本竜寺を営み,785年(延暦4)二荒山頂に奥宮を,湖畔に中宮祠,中禅寺を創建したと伝える。以後霊場として信仰をあつめ,延喜の制で名神大社。中世以降武家の崇敬をうけたが,1590年(天正18)豊臣秀吉に抗して社領を奪われ,のち徳川家康の保護をうけ,日光東照宮創建の後輪王寺宮門跡の支配下に入った。本殿は1619年(元和5)将軍徳川秀忠の造営で,大谷(だいや)川にかかる朱塗の神橋などとともに重要文化財。旧国幣中社。例祭4月17日は弥生祭といい,13日に始まる。ほかに7月31日より8月7日までの男体山登拝大祭がある。
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二荒山神社 (ふたらやまじんじゃ)

栃木県宇都宮市馬場通に鎮座。正式名称は宇都宮二荒山神社。旧称宇都宮大明神。豊城入彦(とよきいりひこ)命,大物主命,事代主命をまつる。豊城入彦命は崇神天皇の皇子で,皇命をうけて東国を平定,のち当地にとどまったが,4世孫奈良別王が下野国造となり,祖神を奉斎したのが当社の起源と伝える。もと現在の下之宮に鎮座,838年(承和5)現在地に遷座したが,背後の前方後円墳は祭神の墳墓とされる。下野国一宮で,1189年(文治5)源頼朝は奥州藤原氏征討にあたり当社に奉幣,また荘園を寄進したことが《吾妻鏡》に見えるが,以後宇都宮氏ほか武将の崇敬保護が続いた。1605年(慶長10)徳川家康が社殿を造営,のち幕府や藩主の保護をうけた。旧国幣中社。例祭10月21日,ほかに田舞祭5月15日など特殊神事が多い。
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百科事典マイペディア 「二荒山神社」の意味・わかりやすい解説

二荒山神社【ふたらさんじんじゃ】

栃木県日光市山内,日光東照宮の西隣に鎮座。奥宮は男体山(二荒山)頂上,中宮は同山腹の中宮祠湖畔にある。旧国幣中社。祭神は二荒山神(大己貴(おおなむち)命,田心姫(たごりひめ)命,味耜高彦根(あじすきたかひこね)命)。767年の創建と伝え,中世は修験道の霊場として栄えた。延喜式内の名神大社とされ,下野(しもつけ)国の一宮と伝える。例祭は4月17日。ほかに男体山登拝大祭(7月31日〜8月8日)など。本殿は重要文化財。東照宮,輪王寺とともに1999年世界文化遺産に登録。
→関連項目中禅寺湖男体山日光[市]日光

二荒山神社【ふたらやまじんじゃ】

栃木県宇都宮市馬場通りに鎮座。旧国幣中社。祭神の豊城入彦(とよきいりひこ)命は崇神天皇の皇子で,東国鎮撫(ちんぶ)の人と伝える。4世紀の創建という。延喜式内の名神大社とされ,下野(しもつけ)国の一宮と伝える。例祭は10月21日。ほかに田楽舞(5月15日)などがある。
→関連項目宇都宮[市]春祭

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「二荒山神社」の解説

二荒山神社
ふたらさんじんじゃ

栃木県日光市山内に鎮座。本社(新宮)のほか,中禅寺湖畔の中宮祠(ちゅうぐうし),男体山(二荒山)山頂の奥宮などからなる。旧国幣中社。式内社二荒山神社の比定については,宇都宮市の二荒山(ふたあらやま)神社との間に論争がある。祭神は二荒山神。山岳信仰を起源とし,767年(神護景雲元)勝道が本社を山麓に創建,のち山上に奥院を建立という。神仏習合後,修験道の中心地となる。1613年(慶長18)天海が日光山貫主となり,17年(元和3)東照宮が遷座すると,当社も幕府の保護をうけ再興,社殿が修造された。1871年(明治4)神仏分離令により,二荒山神社・輪王寺・東照宮に分離。例祭は4月17日。社宝の大太刀(銘備前長船倫光)と小太刀(銘来(らい)国俊)は国宝。建造物・「後撰集」など重文。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二荒山神社」の意味・わかりやすい解説

二荒山神社
ふたらさんじんじゃ

(1) 栃木県宇都宮市馬場通りに鎮座する元国幣中社。宇都宮明神ともいう。正称は「ふたらやまじんじゃ」。祭神は,トヨキイリヒコノミコト,オオモノヌシノミコト,コトシロヌシノミコト。例祭 10月 21日。 (2) 栃木県日光市山内に鎮座する元国幣中社。日光二荒山神社ともいう。二荒山神 (オオナムチノミコト) を主神とし,タゴコロヒメノミコト,アジスキタカヒコネノミコトを祀る。例祭4月 17日。国宝指定の大太刀,小太刀各1点を所蔵する。 1999年東照宮輪王寺とともに世界遺産の文化遺産に登録。

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