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中世末期に荘園領主が行った荘務(年貢・公事(くじ)の収納、検注(けんちゅう)・勧農(かんのう)・検断(けんだん)等の荘園管理)権の直接執行のこと。権門(けんもん)寺社などの中世の荘園領主はその荘務を、在地の荘官・地頭・代官に任せたり、請け負わせるのが一般的であった(地頭請、守護請、代官請)。しかし、13世紀末以降、荘民らの村落結合の成長や、荘官地頭らによる請所(うけしょ)・下地中分(したじちゅうぶん)が進行し、年貢・公事の未進・減納が続き、地頭や荘官らとの間に相論(そうろん)が頻発するようになると、畿内(きない)やその周辺地域では、幕府や朝廷の力を借りて、権門寺社が改めてその荘務権の直接掌握に乗り出すことがあった。その形態には、(1)荘園領主自身が現地に下向し、文字どおり直接荘務を行う(和泉国(いずみのくに)日根荘(ひねのしょう))、(2)荘民らの強い要求によって守護方の請負代官を排除し、領家(りょうけ)方の直務代官が在地支配を行う(備中国(びっちゅうのくに)新見荘(にいみのしょう))、(3)下司(げし)・地頭らを排除して領家の直務とし、所務代官を募って所務(年貢の収納)を行わせる(摂津国垂水荘(たるみのしょう))などがある。以上の3形態は相互に移行するが、(3)が一般的である。しかしこうした形態は、一部を除けば永続せず、大名領国制のなかに吸収された。
[島田次郎]
『稲垣泰彦編『荘園の世界』(1973・東京大学出版会)』▽『田沼睦著「室町期荘園研究の一、二の視点」(和歌森太郎先生還暦記念論文集編集委員会編『古代・中世の社会と民俗文化』所収・1976・弘文堂)』
中世における荘園支配上の用語。荘園領主が守護・地頭・荘官等の荘園支配・管理等の諸権限を排除し,荘務権を握って直接荘園を支配し,年貢を徴収すること。鎌倉中期以降,荘園は在地領主による侵害,地頭請などによって下地(したじ)管理・農民支配・年貢収納はしだいに困難になっていたが,その打開策のひとつとして荘園領主直属の上使や代官を派遣したり,地下(じげ)の番頭を登用して荘務権の奪回・回復につとめたりした。これを一般に直務支配と称した。鎌倉中期,東寺の供僧方は供僧料領荘園について,寺内執行方の介入や預所の支配を排除して,伊予国弓削島荘,若狭国太良荘,丹波国大山荘等重要な荘園に対する供僧方の直務支配を確立した。1461年(寛正2)東寺領備中国新見荘領家方では,農民側から代官安富智安(細川氏家臣)の解任と東寺の直務支配の要求が出され,東寺は室町幕府の了解をえて直務代官・上使を派遣している。しかし直務支配は畿内・近国の,いわゆる膝下型荘園や所領では実現されたが,中間・遠隔地荘園では事実上不可能になっていった。
執筆者:佐々木 銀弥
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