秋津島・秋津洲・蜻蛉洲(読み)あきつしま

精選版 日本国語大辞典 「秋津島・秋津洲・蜻蛉洲」の意味・読み・例文・類語

あきつ‐しま【秋津島・秋津洲・蜻蛉洲】

[1] 〘名〙 (古くは「あきづしま」) 日本の国の古称。あきつしまね。あきつくに。やしま。記紀によれば、孝安天皇は「葛城の室の秋津島宮」で天下を治めたと伝承されるので、「あきづ」は古くは大和国葛上郡室村(奈良県御所市室)あたりの地名と推定される。後世、大和国にかかる枕詞となり、さらには国号ともなった。蜻蛉(トンボ)は「あきづ」とも称し、豊穰の季節を象徴する昆虫であったことから、五穀豊穰な土地柄を示す地名となったらしい。
※古事記(712)下・歌謡「その虻を 蜻蛉(あきづ)早咋(ぐ)ひ かくの如 名に負はむと そらみつ 大和の国を 阿岐豆志麻(アキヅシマ)とふ」
[2] 「大和(やまと)」にかかる。
万葉(8C後)一・二「うまし国そ 蜻嶋(あきづしま) 大和の国は」
[語誌]字音仮名表記から、上代ではアキヅシマという語形であったと思われる。「書紀‐仁徳五〇年三月・歌謡」に、「阿企菟辞摩」とある例が見え、第三音節に清音仮名「菟」を用いてあるのが唯一の例外である。後には「蜻蛉(あきづ)」とともに、第三音節が清音になった。

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