秋津島(読み)アキツシマ

デジタル大辞泉 「秋津島」の意味・読み・例文・類語

あきつ‐しま【秋津島/秋津洲/蜻蛉洲】

《古くは「あきづしま」》
大和やまと国の異称。また、広く日本をさす。あきつくに。あきつしまね。あきつす。
「そらみつ大和の国を―とふ」〈・下・歌謡
[枕]大和」にかかる。
「うまし国そ―大和の国は」〈・二〉
[類語]日本大和やまと日の本八洲国やしまくに大八洲おおやしま敷島葦原あしはらの中つ国豊葦原とよあしはら瑞穂みずほの国和国わこく日東東海扶桑ふそう神州本邦本朝ジャパンジパング

あきず‐しま〔あきづ‐〕【秋津島】

あきつしま

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精選版 日本国語大辞典 「秋津島」の意味・読み・例文・類語

あきつ‐しま【秋津島・秋津洲・蜻蛉洲】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 古くは「あきづしま」 ) 日本の国の古称。あきつしまね。あきつくに。やしま。記紀によれば、孝安天皇は「葛城の室の秋津島宮」で天下を治めたと伝承されるので、「あきづ」は古くは大和国葛上郡室村(奈良県御所市室)あたりの地名と推定される。後世、大和国にかかる枕詞となり、さらには国号ともなった。蜻蛉(トンボ)は「あきづ」とも称し、豊穰の季節を象徴する昆虫であったことから、五穀豊穰な土地柄を示す地名となったらしい。
    1. [初出の実例]「その虻を 蜻蛉(あきづ)早咋(ぐ)ひ かくの如 名に負はむと そらみつ 大和の国を 阿岐豆志麻(アキヅシマ)とふ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
  2. [ 2 ] 「大和(やまと)」にかかる。
    1. [初出の実例]「うまし国そ 蜻嶋(あきづしま) 大和の国は」(出典:万葉集(8C後)一・二)

秋津島の語誌

字音仮名表記から、上代ではアキヅシマという語形であったと思われる。「書紀‐仁徳五〇年三月・歌謡」に、「阿企菟辞摩」とある例が見え、第三音節に清音仮名「菟」を用いてあるのが唯一の例外である。後には「蜻蛉(あきづ)」とともに、第三音節が清音になった。

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日本歴史地名大系 「秋津島」の解説

秋津洲
あきつしま

「古事記」「日本書紀」によると、孝安天皇は都を葛城のむろ(「和名抄」の牟婁郷)の地に移して秋津嶋あきつしま宮としたという。元来、宮号は地名によったものが多く、「秋津」も奈良時代、葛城地方の別名と考えられる。室は「日本書紀」履中天皇三年一一月六日条に「掖上の室山」の記事がみえ掖上わきがみとよばれた地域にあった。現在の大字室付近に推定。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「秋津島」の意味・わかりやすい解説

秋津島
あきづしま

通説では、『日本書紀』の第6代孝安(こうあん)天皇の「葛城室之秋津嶋宮(かづらきのむろのあきつしまのみや)」の記事と、神武(じんむ)紀31年、同地における秋津島の称の起源伝承をもとに、秋津を奈良県御所(ごせ)市内の地名とし、この地名が大和(やまと)、さらに日本の総称、また大和にかかる枕詞(まくらことば)となったと説く。しかし孝安天皇の宮について『日本書紀』が「都を室(むろ)の地に遷(うつ)す。是(ここ)を秋津島宮といふ」と述べるによれば、秋津を地名とはみなしがたく、また神武紀の称も「浦安国(うらやすのくに)、細戈千足国(くわしほこちたるのくに)」の称と並べられていて、むしろ賛称とみるのがふさわしい。上記の例と記紀雄略(ゆうりゃく)天皇条の蜻蛉(あきづ)(トンボ)にかけた起源伝承を除けば、他のすべてが大和の語とともに使用されているのも賛称であるためであろう。その語義については、水辺農耕平地であるアクツと関連させる説、秋=実りと解する説などがあるが未詳。国号としての単独使用は平安時代以後と考えられる。なお、耶馬(やま)=野馬(やま)(カゲロウ)→蜻蛉(かげろう)→蜻蛉と転義されたものとして、起源を耶馬台国の称に求める説もある。

吉井 巖]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「秋津島」の解説

秋津島
(通称)
あきつしま

歌舞伎浄瑠璃外題
元の外題
関取二代勝負附 など
初演
天明1.6(江戸・中村座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の秋津島の言及

【トンボ(蜻蛉)】より

…【朝比奈 正二郎】
【伝承と民俗】

[日本]
 古くは〈あきづ〉と呼ばれ,日本の国土を〈あきづしま〉という。神武紀に,天皇が〈国の状(かたち)を廻(めぐ)らし望〉んで〈蜻蛉(あきづ)の臀呫(となめ)の如くにあるかな〉といったので〈秋津洲(あきづしま)〉と呼ぶようになったとある。民間では,初秋に突如として群れをなして飛来するところから,祖霊が姿をかえてやってくるとみてこれをとらえることを忌み,とらえると〈盆と正月礼にこい〉と唱えて放つ風習があった。…

※「秋津島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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