紅葉狩(読み)もみじがり

精選版 日本国語大辞典 「紅葉狩」の意味・読み・例文・類語

もみじ‐がりもみぢ‥【紅葉狩】

  1. [ 1 ] 山野に紅葉をたずねて観賞すること。紅葉見。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「時雨れゆくかたのの里のもみちかり頼むかげなく吹く嵐哉〈源俊頼〉」(出典:夫木和歌抄(1310頃)一五)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 謡曲。五番目物。各流。観世小次郎信光作。古名「維茂(これもち)」。平維茂一行が鹿狩に山中にはいると、身分の高い女が侍女たちと酒宴をしていて、通りすぎる一行に酒を勧め、維茂が酔い伏してしまうのを見て姿を消す。維茂が八幡宮神勅をうける夢を見て目をさますと、鬼女が現われて襲いかかるが、八幡大菩薩を念じて立ち向かい討ち平らげる。
    2. [ 二 ] 歌舞伎所作事。義太夫常磐津長唄の掛け合い。河竹黙阿彌作詞。鶴沢安次郎・六世岸沢式佐・三世杵屋正次郎作曲。明治二〇年(一八八七)東京新富座初演。[ 一 ]の舞踊化。戸隠山紅葉狩に来た平維茂が更科姫(さらしなひめ)に化けた鬼女を退治する。新歌舞伎十八番の一つ。
    3. [ 三 ] 長唄・地唄・荻江節・一中節などの曲名

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改訂新版 世界大百科事典 「紅葉狩」の意味・わかりやすい解説

紅葉狩 (もみじがり)

(1)能の曲名。五番目物。鬼物。観世信光(のぶみつ)作。シテ戸隠(とがくし)山の鬼神。平維茂(たいらのこれもち)(ワキ)は信濃の戸隠山に鹿狩に出かけ,紅葉狩を楽しむ美しい女性たち(前ジテツレ)の一行を見かける。誘われるままにその酒宴の席に加わった維茂は,杯を手にして女の舞に見とれているうちに眠りにおちいる(〈クセ・序ノ舞(または中ノ舞)・急ノ舞〉)。女は実は鬼神で,維茂の眠りを見すまして姿を消す。そこへ石清水八幡の末社の神(アイ)が現れ,夢うつつの維茂に太刀を授けて身の危険を知らせる。目覚めた維茂がその太刀を手に待ち構えていると,鬼神(後ジテ)が正体を現すので,格闘の末に退治をする(〈舞働キ・ノリ地〉)。この能は他の鬼退治物と違い,前場で優美な女性の舞を見せるところに特色がある。その舞は,初め静かに舞い出され,維茂が眠ったところでにわかに急ノ舞に転ずる。
執筆者:(2)浄瑠璃の曲名。正しくは《平維茂紅葉狩》。六段。井上播磨掾正本,1658年(万治1)刊。能の《紅葉狩》や《今昔物語集》などを原拠としており,近松門左衛門の《栬狩剣本地(もみじがりつるぎのほんじ)》などに影響を与えた。

(3)歌舞伎舞踊の曲名。義太夫・常磐津・長唄掛合,1887年10月東京新富座初演。作詞河竹黙阿弥。作曲鶴沢安太郎,6世岸沢式佐,3世杵屋正次郎。振付9世市川団十郎。演者は団十郎のほか初世市川左団次,4世中村芝翫など。能の《紅葉狩》に拠っているが,更科姫(実は戸隠山の鬼女)の2枚扇の踊や平維茂との立回りを中心に,山神,腰元,従者にもそれぞれ所作があり,活歴風な歌舞伎舞踊になっている。〈新歌舞伎十八番〉の一。このほか,地歌,荻江節,一中節にも同名の曲があり,能の《紅葉狩》を原拠としている。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「紅葉狩」の意味・わかりやすい解説

紅葉狩【もみじがり】

能の曲目。切能物五流現行。観世信光作。前段,戸隠山に狩に出かけた平維茂(これもち)(ワキ)を紅葉狩の美女たちが酒宴に誘う。後段,悪鬼(シテ)が本性を現すが,維茂は神授の太刀でこれを討つ。優雅な舞が壮烈な格闘に転ずるところに演出の特徴があり,満山の紅葉の設定も生きて人気のある曲。歌舞伎舞踊にも取り入れられ,新歌舞伎十八番の一つとなっている。1887年初演。とくに,常磐津節・義太夫節・長唄の三方掛合による舞踊曲として有名。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「紅葉狩」の解説

紅葉狩
〔義太夫, 長唄, 常磐津〕
もみじがり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
河竹黙阿弥
演者
岸沢式左(6代) ほか
初演
明治20.10(東京・新富座)

紅葉狩
(通称)
もみじがり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
色見艸月盃 など
初演
安永5.7(江戸・森田座)

もみじ狩
(別題)
もみじがり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
紅葉狩
初演
寛文8.12(江戸・松平大和守邸)

紅葉狩
もみじがり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
寛文8.12(江戸・松平大和守邸)

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