(読み)リョウ

デジタル大辞泉 「綾」の意味・読み・例文・類語

りょう【綾】[漢字項目]

人名用漢字] [音]リョウ(呉)(漢) リン(唐) [訓]あや
〈リョウ〉模様のある絹織物。あやぎぬ。あや。「綾羅
〈あや〉「綾絹綾錦あやにしき
[難読]綾子りんず

あや【綾】[地名]

宮崎県中部、東諸県ひがしもろかた郡の地名。国内有数の照葉樹林群が広がり、九州中央山地国定公園に含まれる。

りん【綾】[漢字項目]

りょう

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精選版 日本国語大辞典 「綾」の意味・読み・例文・類語

りょう【綾】

  1. 〘 名詞 〙あや(文)
    1. [初出の実例]「赤色の上のきぬ、れうの袴著たるうなゐごに」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)

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日本歴史地名大系 「綾」の解説


あや

現綾町一帯に比定される。貞和五年(一三四九)一二月一四日の右衛門尉某書下(郡司文書)に、諸県庄内の「綾裏」の所務職に那珂九郎(盛連)が任じられている。盛連は同年諸県庄内三ヵ名の預所にも任ぜられており(同年一二月一四日「沙弥某書下」同文書)、綾裏は諸県庄の中心の一つであった。一方貞和六年一二月三日、小山田二郎左衛門尉は諸県本庄八反とともに綾公文跡を宛行われている(「某宛行状写」小山田文書)。那珂氏が上位の預所で、小山田氏は綾の公文を担う関係になっていたであろう。永徳三年(一三八三)伊東氏から安堵されたとみられる綾内の小山田氏給分坪付写(同文書)には、小山田おやまだ六反三〇のほかに谷口・田中前・峰崎・中田尾・梅山・おきたへ等を合せ、水田二町三〇と屋敷一ヵ所下莚がみえ、明徳五年(一三九四)四月二七日の小山田重宗給分坪付写(同文書)にも綾裏内の小山田三反のほか井尻いじり・田中前・峰崎・谷口・中道・梅や分・おきたいの田数計一町八反中三〇・米一〇石五斗五升がみえる。

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普及版 字通 「綾」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 14画

[字音] リョウ
[字訓] あや・あやぎぬ・りんず

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(りよう)。に稜角あるもの、形の意がある。〔説文〕十三上に「東齊にて、布帛の細かきものを謂ひて綾と曰ふ」とあり、あやぎぬをいう。綾子(りんず)は唐末音の国語化したものである。

[訓義]
1. あや、あやぎぬ。
2. りんず。

[古辞書の訓]
和名抄〕綾 阿夜(あや)〔名義抄〕綾 アヤ・ムナシ 〔字鏡集〕綾 アヤ・ムナシ・カトリノモンアル

[語系]
綾・lingは同声。・稜lngは声近く、みな稜角あるもの、形のものをいう。

[熟語]
・綾綺・綾錦・綾衾・綾・綾絹・綾綵・綾扇・綾被・綾紋・綾羅・綾子
[下接語]
褐綾・綺綾・紅綾・綵綾・青綾・綾・白綾・縹綾・文綾

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「綾」の意味・わかりやすい解説


あや

織物の三原組織の一つである斜文(しゃもん)組織をさすのが現代的解釈であるが、これとは別に、経(たて)糸と緯(よこ)糸の組合せの変化で、地と文様とが異組織になっている紋織物の一種とすることがある。

 この綾の発生は中国がもっとも古く、遺物として、殷(いん)中期の殷墟(いんきょ)出土と伝える斧(おの)(鉞(えつ))に銹着(しゅうちゃく)する四枚綾で菱文(ひしもん)を表す絹帛裂(けんぱくぎれ)がある。漢代に入ると平地浮文綾が発展を遂げ、シルク・ロードを通り西方世界へ送られたが、シリアのパルミラでは漢代の綾が多数出土する。

 この技法は中国南部より5世紀後半に日本へ伝来したらしい。後期古墳出土の金属製品に銹着する綾が、東京都亀塚(かめづか)古墳、栃木県三昧塚(さんまいづか)古墳から出土し、いずれも平地綾文綾からなる。7~8世紀には隋(ずい)・唐の織物技術導入により飛躍的発展を遂げ、法降寺・正倉院裂には四枚綾の平地浮文綾、平地綾文綾、綾地綾文綾など多様な綾がみられ、簡単な幾何学文様から、西方的モチーフの天馬(てんま)、獅子(しし)などをもつ絵画的文様まで織り出している。この綾生産は和銅(わどう)年間(708~715)に中央だけでなく地方へも拡大された。ところで、重厚な四枚綾系の組織は、やがて三枚綾、六枚綾系の浮きの長い柔軟な組織へと転化していく。これらは古代末期から国産化に成功した唐(から)綾とよぶものにあてはまるかもしれない(明月記)。さらに織部司(おりべのつかさ)の伝統を引く舎人(とねり)の綾が著名で、のちに座をつくり独占的生産を維持した。応仁(おうにん)の乱(1467~1477)で京都の織物生産は衰退するが、新しく中国(明(みん))の織物技術が移入され、朱子(繻子)(しゅす)織を主体とした緞子(どんす)、綸子(りんず)などが増加し、綾によるものは少なくなり、伝統的な有職(ゆうそく)織物におもかげをとどめるだけになった。明治以後の西欧近代技術による綾織物は、これらの綾とは別に、綾織として取り扱われる。

 また綾は、交錯するということから、経糸を開口させる綜絖(そうこう)、製織中に経糸をそろえておく綾竹(あやだけ)の別名として使われる。

[角山幸洋]


綾(町)
あや

宮崎県中南部、東諸県郡(ひがしもろかたぐん)にある町。1932年(昭和7)町制施行。古代、日向(ひゅうが)駅の一つに亜椰(あや)があり、転じて綾となった。綾北(あやきた)川、綾南(あやみなみ)川が南東流し、上流は険しい九州山地である。中心地南俣(みなみまた)は宮崎平野の北西端にあたり、宮崎市と県道で結ぶ。近世は薩摩藩(さつまはん)領であった。主産業は農林業で、町では「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定し、有機農業を進めている。カヤの碁盤の産地。民芸品の町として知られるようになり、綾紬(あやつむぎ)、陶芸、木工・竹製品などがある。面積95.19平方キロメートル(一部境界未定)、人口6934(2020)。

[横山淳一]

『『綾郷土史』(1965・綾町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「綾」の意味・わかりやすい解説

綾 (あや)

織物組織の一つである斜文組織を指す場合と,単色の紋織物を意味する場合とがある。(1)織物組織としての綾は斜文組織と同義語で,平組織,繻子(しゆす)組織とともに織物の三原組織と称される綾組織のこと。特徴は経(たて)あるいは緯(よこ)の浮糸が斜めに並列して帛(はく)面に現れ,平織に比べて一般的に地質が柔らかく,繻子に次ぐ光沢がある。浮糸の長さにより三枚綾(経(緯)糸が緯(経)糸を2本越して1本沈む組織),四枚綾,六枚綾,八枚綾などの組織がある。

(2)紋織物としての綾は原則的には同一色の経糸と緯糸を用い,地と文様を異なる組織で織りだした平地あるいは綾地の織物をいう。古文献に見える〈綾〉はこの意味で用いられている場合が多い。例えば法隆寺,正倉院伝世の飛鳥・奈良時代の綾についてみても,平地あるいは綾地に浮糸で文様をあらわしたもの,平地に文様を綾組織であらわしたものなどが含まれており,必ずしも地と文様が綾組織によっていないものがある。つまり紋織物としての綾の発生が,最も簡単な平織の製織中に誤って生じた経糸の小浮(こうき)から思いついたと想定されるように,平地に長短の浮糸で簡単な花形や幾何学文様をあらわした紋織物は綾の最も初歩的なものと考えられるのである。したがって綾も錦の技法の発展過程とほぼ歩調を合わせ,法隆寺系の綾は平地浮文,平地綾文など平地のものが多く見られるのに対し,正倉院裂では綾地綾文の綾が漸次多くなってきている。こうした傾向が強くなるにつれ綾(紋織物)と綾組織が混同され,今日では一般に綾といえば綾組織の紋織物をさすようになっている。
執筆者:


綾[町] (あや)

宮崎県中部,東諸県郡の町。人口7224(2010)。宮崎平野西端に位置する。古くは肥後に通じる街道の要地で,亜椰(あや)駅が置かれた。近世を通じて薩摩藩領に属した。中央部を大淀川水系の綾南川,綾北川が北西から南東へ貫流し,合流点付近に中心地の南俣がある。西部の山地には国有林を主体に山林が広がり,古くから林業が盛ん。主要産業は農業で,畜産をはじめ,野菜,米,タバコ,ミカンなどを産する。近年製造業を中心に第2次産業が伸びており,つむぎ,陶芸,竹刀などの伝統工芸も盛ん。清流で知られる綾南・綾北両渓谷や照葉樹の自然林などがある。
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百科事典マイペディア 「綾」の意味・わかりやすい解説

綾[町]【あや】

宮崎県中部,東諸県(ひがしもろかた)郡の町。大淀川の支流綾北川と綾南川の中流域を占め,山林原野が多い。合流点付近にある主集落は肥後(熊本県)に通じる街道の要地であった。カヤ材の碁盤,紬(つむぎ),陶器,竹細工などの伝統工芸が盛ん。95.19km2。7224人(2010)。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【織物】より

…この組織は一番古く,また布面が平らで,丈夫でもあるから,現在まで最も多くの織物に使われている。経糸と緯糸との交叉したところを組織点というが,この組織点をたどると,布面に斜めの線が表れるのを斜文組織あるいは綾組織()と呼ぶ。組織の最低単位は経糸,緯糸いずれも3本あるいは3越をもってたがいに組織するもので,1越の緯糸が2本の経糸に,あるいは1本の経糸が2越の緯糸にまたがっているのである。…

【絹織物】より

…また中国周辺にとどまらず,旧ソ連邦オグラクティ,キルギス共和国ダラス郡ドーロのケンコル,シリアのパルミュラなどから発見された漢代の絹織物は,東西交渉史のうえにも貴重な足跡を残している。出土遺品から当代の絹織物の種類をみると,粗密・厚薄のさまざまな平絹,後世の綾の祖型ともいうべき平織地に浮糸で文様を織り出した単色の紋織物である,複雑な綟り(もじり)組織の,経糸に多色の彩糸を用いて文様を織り出した経錦,輪奈(わな)織に似た起毛錦,鎖繡を主体とした刺繡,さらに彩絵(描絵)や印花(摺絵)などの加飾技法も行われている。文様は前代からあった祭服の十二章(日,月,星辰,山,竜,華虫,作会,宗彝,藻,火,粉米,黼黻)をはじめ,さまざまな動物文,植物文,幾何学文が用いられているが,いずれも象徴的に図様化され,特に錦文や繡文には霊気を感じさせるような力強さがある。…

※「綾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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