考える葦(読み)かんがえるあし(英語表記)roseau pensant フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ)「考える葦」の解説

考える葦
かんがえるあし
roseau pensant フランス語

17世紀フランスの思想家パスカルのことば。彼は代表作『パンセ』の有名な断章の冒頭で、「人間は自然のなかでもっとも弱い一茎(ひとくき)のにすぎない。だが、それは考える葦である」と述べている。広大無辺な宇宙に比べれば、間は無に等しく、「一茎の葦」のごとく弱く悲惨な存在にすぎないが、それは「考える葦」であり、思考によって「宇宙を包む」ことができる。ここに人間の尊厳があり、偉大さがあるという。このような偉大と悲惨、無限と無という相矛盾しあう二律背反のなかで、揺れ動く人間の存在を、パスカルは「考える葦」ということばで象徴させているのである。なお、このは聖書の「傷ついた葦」(「イザヤ書」「マタイ伝福音(ふくいん)書」)に由来する。

[香川知晶]

『『パンセ』(前田陽一・由木康訳・中公文庫/田辺保訳・角川文庫/松浪信三郎訳・講談社文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

故事成語を知る辞典「考える葦」の解説

考える葦

人間をたとえていうことば。

[使用例] だが、その「何になるんだ。」という奴が、いつまた彼の前にひょっこり姿を現わさないとも限らない。いつは、「考える葦」たる吾々人間につきものだから[豊島与志雄*逢魔の刻|1933]

[由来] 一七世紀のフランスの思想家、パスカルの「パンセ」の一節、「人間は自然のうちで、最も弱い一茎の葦にすぎない。だが、それは『考える葦(un roseau pensant)』である」から。自然の中での人間のか弱さと、思考する存在としての人間の偉大さを言い表しています。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版「考える葦」の解説

考える葦
かんがえるあし

フランスの哲学パスカルの『パンセ』の中の1句
本文中には,「人間は葦にすぎない。それは自然の中でもっとも弱いものである。しかしそれは考える葦である」と記されている。彼は,無神論者に神の真理を証明するために断片的な草案を書き始めたが,病弱のため,未完に終わった。彼の構想は第1部「神をもたない人間の悲惨」,第2部「神をもっている人間の幸福」からなっている。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

百科事典マイペディア「考える葦」の解説

考える葦【かんがえるあし】

パスカルの《パンセ》の中にある言葉。〈人間は一本の葦にすぎず自然のなかで最も弱いものである。だがそれは考える葦roseau pensantである〉。パスカルは,人間は孤独で弱いが,考えることができることにその偉大と尊厳があるとした。〈思考する存在〉としての近代人の精神をよく示す句。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル大辞泉「考える葦」の解説

かんがえるあし

パスカルの「パンセ」の中の言葉。「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である」として、人間の、自然の中における存在としてのか弱さと、思考する存在としての偉大さを言い表したもの。
[類語]人間ひと人類人倫万物の霊長米の虫ホモサピエンス人物人士じんもの現生人類原始人新人旧人原人ジャワ原人北京原人直立猿人猿人ピテカントロプス

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「考える葦」の解説

考える葦
かんがえるあし
roseau pensant

フランスの思想家 B.パスカルの『パンセ』のなかの言葉。「人間」を意味する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

最上川

山形県をほぼ南北に貫流する川。全長 229km。吾妻山系に源を発し,北流して米沢・山形盆地を貫流,新庄盆地で流路を西に変え,下流部に庄内平野を形成して日本海に注ぐ。支流が多く,全流域面積 (7040k...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android