(読み)ツル

デジタル大辞泉 「蔓」の意味・読み・例文・類語

つる【×蔓】

植物の茎で、それ自体では立たず、長く伸びて他の物に巻きついたりよじ登ったりするもの。また、ブドウなどの巻きひげ
眼鏡の耳にかける部分
てがかり。てづる。
「なにか金の―を見つけたのかと」〈石川淳普賢
[類語](1花茎地下茎根茎球茎塊茎鱗茎蕗の薹芋蔓

まん【蔓】[漢字項目]

人名用漢字] [音]マン(呉) [訓]つる
のびて絡みつく草。つる草。「蔓生
はびこる。「蔓延まんえん
難読蔓延はびこ

つら【×蔓】

つる(蔓)古名
「定めなくなるなる瓜の―見ても立ちやよりこむこまのすき者」〈拾遺・雑下〉

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精選版 日本国語大辞典 「蔓」の意味・読み・例文・類語

つる【蔓】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物の茎で、細く直立せず、地面をはうか、または他の物にまきついたり、巻きひげなどで付着するものの総称
    1. [初出の実例]「みさびまじるひしのうきつるとにかくにみだれて夏の池さびにけり〈藤原信実〉」(出典:新撰六帖題和歌(1244頃)六)
  3. ( 「鉉」とも ) 鉱脈。
    1. [初出の実例]「間歩よりつるぬすみ候大工籠者致候」(出典:梅津政景日記‐慶長一七年(1612)三月一〇日)
  4. 金銭を手に入れる手段や手がかり。金銭を出してくれる人。かねづる。
    1. [初出の実例]「栄螺のからは野辺農すて菴〈西鶴〉 かねのつる光もとめて暮の月〈西六〉」(出典:俳諧・西鶴五百韻(1679)何鞠)
  5. 入牢者が虐待を免れるために、ひそかに牢内へ持参し牢名主などに贈る金。つるがね。
    1. [初出の実例]「蔓(ツル)は元より、見舞物で中も富貴だ」(出典:歌舞伎・四千両小判梅葉(1885)大切)
  6. たよりにしてすがる手がかり。つて。てづる。
    1. [初出の実例]「自分も出世の蔓(ツル)を捜したら宜(よ)ささうなものだのに」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉猟官)
  7. めがねの、耳にかける部分。
    1. [初出の実例]「蔓の折れたのを紙捻で繋いだ眼鏡を外して」(出典:太政官(1915)〈上司小剣〉四)

つら【蔓】

  1. 〘 名詞 〙 「つる(蔓)」の古語。つる草。
    1. [初出の実例]「なづきの 田の稲幹(いながら)稲幹に 這(は)ひ廻(もとほ)ろふ 薢(ところ)豆良(ヅラ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)

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改訂新版 世界大百科事典 「蔓」の意味・わかりやすい解説

蔓 (つる)
bine

茎があまり発達せず,他物に依存して上昇するようになった場合,よじのぼるように変形した茎をつるといい,そのような生活形をもつ植物をつる植物とかよじのぼり植物(纏繞(てんじよう)植物)という。つるが支持体によりかかるには,ひっかかる,巻きかかる,粘着する,巻き締めるなどの方法があり,木本にも草本にもつる性のものがみられる。熱帯地方森林林縁や,何らかの原因で極相の状態が崩されたところには,つる植物が種類でも個体数でも非常に多い。日本も多湿気候のためつる植物が多く,欧米の植物学者は日本の植生を見て熱帯的景観のように思うことが多いようである。フジやイワガラミは茎が肥大する木本性で,クズ,アサガオ,ヤマノイモなどは草本の例である。茎を機械的に支持する組織は発達していないが,たとえば師管が長く伸びたり,道管の揚水力がきわめてすぐれていたりというような特殊な性質もみられる。
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動植物名よみかた辞典 普及版 「蔓」の解説

蔓 (カズラ・ツラ;ツル)

植物。蔓性植物の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【巻きひげ(巻鬚)】より

…単独では直立できない植物体がその一部で他物に巻きついて高く伸長できるように特殊に変形したもの。茎自体が他物に巻きつく場合はつるという。茎が変形したものがブドウ,エンドウ,カボチャ,サルトリイバラなどに,葉のうち葉柄が変形したものがボタンヅル,ノウゼンハレンに,小葉の変形したものがエンドウに,葉全体が巻きひげになって光合成はその両側の1対の托葉によるものがレンリソウの1種Lathyrus aphacaに,根の変形したものがビロードカズラにと,いろいろの器官から変形したものが,さまざまの分類群に系統とは無関係にみられる。…

※「蔓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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