裏声(読み)うらごえ

精選版 日本国語大辞典 「裏声」の意味・読み・例文・類語

うら‐ごえ ‥ごゑ【裏声】

〘名〙
① 自然の発声法では出せない高音部を、技巧的な発声法によって出した声。この声と地声とを交互に出して歌うものとしては、アルプス民謡ヨーデルやウエスタン音楽、津軽民謡の「ホーハイ節(ぶし)」などが知られている。ファルセット
※自然の子供(1968)〈金井美恵子〉一「少女の声も〈略〉急に高いうら声になったりする」
三味線音楽の場合に、三味線の高い調子を離れ、低く歌う声。新内節、清元、小唄などで用いられる。
調子外れの耳ざわりな声。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※茶屋諸分調方記(1693)第五「うらごへ ぶりとりごへ われがねごへ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「裏声」の意味・読み・例文・類語

うら‐ごえ〔‐ごゑ〕【裏声】

自然な発声法では出せない高音部を、技巧的に発声する声。ファルセット。→地声2
新内清元小唄などで、三味線の高い調子よりも低めて歌う声。
[類語]音声発声美声悪声金切り声だみ声どら声胴間声鼻声小声猫撫で声声色肉声人声地声大声大音声音吐蛮声がらがら声しゃがれ声しわがれ声塩辛声ハスキーボイス風邪声含み声作り声嬌声奇声悲鳴声を上げる声を大にする声を張り上げる声を尖らす声を嗄らす声を忍ばせる声を潜める声を荒らげる声を落とす声を掛ける声を殺す声を揃える声を立てる声を呑む声を励ます声を振り絞る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「裏声」の意味・わかりやすい解説

裏声【うらごえ】

声楽用語。洋楽ではファルセットfalsetto(イタリア語)という。自然の声区以上の高い音域を人工的技巧で歌うこと,あるいはそのようにして得られた声域をいい,通常,男声にのみ可能。普通の声区の場合より音の強さの点で劣るが,鼻音的な音色があるために声楽曲に音色の変化を与えることができる。ヨーロッパ16世紀の多声音楽では,アルトソプラノがファルセット歌手(カウンター・テナー)によってしばしば歌われた。スイスヨーデルなどの民俗音楽でもこの技法が活用されている。 邦楽では地声(表声)に対比され,新内節,清元節,小唄などでよく用いられるほか,民謡でも青森の《ホーハイ節》などで見られる。歌舞伎の女方や京劇の女方(旦)のせりふも裏声によるもの。
→関連項目ソプラノテノールハワイアン・ミュージック

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「裏声」の意味・わかりやすい解説

裏声 (うらごえ)

邦楽の発声法。地声すなわち表声に対する声のことで,普通の自然な発声では出せない高い音を技巧的な発声法によって出す。成人の男性は低い方から胸声・中声・頭声の3種の歌声をもつが,頭声の上の極端に高い声をいい,洋楽ではファルセットfalsettoという。民謡ではしばしば用いられ,特に《ホーハイ節》は有名。三味線音楽においては,新内節,清元節,小唄などで音色の変化をもたらすために裏声が効果的に用いられている。また歌舞伎の女方や京劇の女方(旦)のせりふも裏声で発音される。
発声
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「裏声」の意味・わかりやすい解説

裏声
うらごえ

声楽や発語で特殊な効果をねらって出す高く柔らかい声。仮声(かせい)、ファルセットfalsetto(「にせ」のソプラノの意)ともいい、表声、地声(じごえ)の反対。頭に共鳴させる頭声の一種であるが、鼻にかける要素が強く、なによりも声帯の運動自体に特色がある。通常の発声では、向かい合った2枚の声帯が急速に開閉しながら振動するのに対して、裏声では開いたままの状態で振動する。男声、とくにテノールなどの高音の人の場合に、地声と顕著に異なる音色が得られるので男声のみの現象かと考えられることが多いが、女声にもあり、ただ相違がはっきりしないだけである。音楽表現に利用されるときの技法としては、表裏の急速な交代(アルプスのヨーデル)、音階上の特定の箇所での使用(青森県の民謡『ホーハイ節』、奄美(あまみ)のシマウタ、新内節、清元(きよもと)節など、外国ではモンゴルのオルティンドーなど)、特定の声部や歌手の特徴として全体的に使用(ルネサンス期の多声合唱の高声部)などがある。

[山口 修]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「裏声」の意味・わかりやすい解説

裏声
うらごえ

普通の発声法とは違った声の出し方で発する高音域の声。地声に対する。音楽では積極的に活用する分野と,使用を戒める分野がある。日本では民謡や清元節,新内節などでは効果的に使っている。洋楽ではファルセットといい,やはり特殊な場合に活用される。地声と裏声がすばやく交替する例がヨーデルで,この技巧は西アジアでも発達している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の裏声の言及

【声】より

…しかし,ある高さを超えると声帯筋の働きが弱まり,声帯は急に薄く引き伸ばされるようになって閉じ方も不完全になる。このような状態で出る声を〈裏声〉という。前に述べた声域とは地声と裏声をあわせた範囲をさしている。…

【発声】より

…【井形 ちづる】
[日本]
 日本音楽の歌唱における発声法は,種目による差異が大きく,まだ総合的に体系づけられてはいない。一般に,洋楽のベル・カント唱法に比すれば,話し声に近い〈地声〉によるものとされ,高音域の特別な発声を〈裏声〉と称することなどが行われている。しかし,実際には,たとえば能などにおいては,せりふ部分でさえも,歌唱部分と発声法の相違は少なく,しかも普通の話し声とは,まるで異なる発声法によっている。…

【ファルセット】より

…女声の頭声に似た響きの男声の高い声。邦楽の裏声と共通の声楽技法。ファルセットの際,ストロボスコープで観察すると,声帯の中央部が卵形に開いた状態にある。…

※「裏声」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android