日本大百科全書(ニッポニカ) 「農家(中国思想)」の意味・わかりやすい解説
農家(中国思想)
のうか
諸子分類上、九流十家の一つ。班固(はんこ)の『漢書(かんじょ)』芸文志(げいもんし)に、農家の書9点をあげるが、いずれも現存しない。ただし、遺説の一端は、『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』士容論中の四編にうかがうことができる。そこでは農業を治政の根本とする考え、および具体的な耕耘播種(こううんはしゅ)の技術が説かれている。このように重農主義の観点から農業技術の向上を追求するのが農家の本流であったと推測されるのだが、これとは別に特異な社会運動を展開した一派がある。『孟子(もうし)』にみえる許行(きょこう)の一派がそれで、許行は神農の教えを奉じ、君民ともに額に汗して耕作すべき旨を説き、原始共産制ふうの自給自足の集団生活を実践した。なお、神農は後世、薬物の神としても崇拝される。
[伊東倫厚]
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