郡家(郡の役所)(読み)ぐうけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「郡家(郡の役所)」の意味・わかりやすい解説

郡家(郡の役所)
ぐうけ

律令(りつりょう)制下における郡の役所。「ぐんけ」とも読み、また郡衙(ぐんが)ともいう。律令用語は郡家。古くは「こおりのみやけ」と読んだ。646年(大化2)に郡(実は評)制が施行されたとき、郡家の成立は、従来の豪族の居館を改めて官衙とした場合、ミヤケなどのごとく以前から公的性格をもつ建物を転用した場合、新たに設置した場合の3ケースが想定されている。『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』に建郡を「郡家を建てた」と記すのは、郡家が行政の拠点を意味するからである。また『日本書紀』に、壬申(じんしん)の乱(672)に際し大海人皇子(おおあまのおうじ)が伊勢(いせ)(三重県)、美濃(みの)(岐阜県)国内の郡家に立ち寄ったと記すのも有名。郡家の規模は方2~3町、土塁や溝で囲まれ、その内部には、正殿などのある郡庁、付属の官舎厨家(くりや)、正倉(しょうそう)などが設置された。常陸国茨城県新治(にいはり)郡家址(し)とみなされる古郡遺跡は、発掘によってこれらの構造を裏づけたが、『上野(こうずけ)国交替実録帳』(1030)は、平安時代なかばの郡家の構造やその実態文献のうえからうかがわせる好資料である。

[米田雄介]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例