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シン

デジタル大辞泉の解説

しん【鍼】[漢字項目]

[音]シン(呉)(漢) [はり
漢方で、治療用のはり。「鍼灸(しんきゅう)打鍼
[補説]「」と通用

はり【×鍼】

《「」と同語源》漢方で、体表のつぼに接触させ、あるいは刺し入れて刺激し、疾病を治療するための金・銀・ステンレス製などの細長い器具。また、その療法。「を打つ」

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大辞林 第三版の解説

はり【鍼】

〔「はり(針)」と同源〕
医療器具の一。多く金・銀・鉄などの金属で作られ、人体の一定の部位にさしこんで療治に使うもの。
を用いて治療する術。鍼術しんじゆつ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


はり

鍼術」のページをご覧ください。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


はり

中国の伝統医術の一つで、(しんじゅつ)ともいう。針の字をあてることもあるが、縫い針などと区別するため、日本では一般に鍼の字を用いる。鍼とは、細長い金属をも意味するが、治療法としての鍼は、体表上の経穴(けいけつ)(いわゆる「つぼ」で、穴(けつ)ともいう)に鍼を接触、あるいは刺入し、適当な治療的影響を与えようとするものである。鍼を経穴に接触、刺入し、その鍼を細かく震わせたり(震顫(しんせん)法)、出入させたり(雀啄(じゃくたく)法)する。このとき、いくつかの経穴が組み合わされる(取穴法)。[間中喜雄・板谷和子]

歴史

中国最古の医書『黄帝内経(こうていだいけい)』を構成している「素問(そもん)」の九鍼十二原篇(へん)には9種類の鍼があげられている。これによると、当時において鍼とよばれていたもののなかには、今日の外科用メス、瀉血(しゃけつ)用のランセット(鎗(やり)型の刃)、擦過圧迫などに用いる円鍼(えんしん)なども含まれ、さまざまな用法や治療法があったと考えられる。また、同じく「霊枢(れいすう)」の経筋篇には、筋肉の治療を目的として火鍼(かしん)(鍼を焼いて刺すこと)を用いることが記されている。「素問」の異方方宜(ほうぎ)論には、腫(は)れ物に対して(へんせき)(石の刃)を用いるとある。これがいまでも使われている「薬石効なく」という語の基であるという。
 日本に鍼術が渡来したのは欽明(きんめい)天皇23年(562)で、呉(ご)の知聡(ちそう)がもたらした『明堂図(めいどうず)』(鍼灸(しんきゅう)書)が契機と伝えられる。したがって、日本での鍼の歴史も、1000年をはるかに超えているわけである。その後、大宝律令(たいほうりつりょう)(701)では、医師の身分を定めた「医疾令(いしつりょう)」のなかで、鍼師、鍼博士、鍼生等の制が設けられている。江戸時代になると、本道(ほんどう)と雑科の医が置かれ、前者は内科、後者は外科、鍼科、口科、眼科、小児科であった。[間中喜雄・板谷和子]

鍼の実技

鍼においては、治療点として経穴および経絡(経穴の機能的な連絡系)が重視される。経絡は臓腑(ぞうふ)(現在でいう内臓およびその機能)とつながる循環系であり、そのなかを「気血」とよばれる「生きるためのエネルギー」が流れて全身を巡っている。この流れの露頭が経穴で、ここに病気の反応が現れる。この部位を知り、治療をするのが鍼の基本となる。おもな鍼の手法としては、〔1〕捻鍼(ねんしん)、〔2〕打鍼(だしん)、〔3〕管鍼(かんしん)があげられる。捻鍼は現在でも日本で多用される方法で、なるべく痛くないように鍼を刺すもので、必要に応じて震顫や雀啄といった方法がとられる。打鍼は安土(あづち)桃山時代の鍼医御薗意斎(みそのいさい)(?―1616)がくふうしたもので、一方の指で鍼を経穴に当て、他方の手に小さな木槌(きづち)を持って打ち込む方法である。打鍼は主として腹部治療を目的とする独特の流儀とされる。管鍼は江戸時代の鍼医杉山和一(わいち)(1610―1694)が考案したもので、細い鍼を管に入れ、管からすこし頭を出した鍼柄(しんぺい)を指でたたいて刺入する。この方法は、皮膚にほとんど痛みを感じさせないため、鍼を行う者にとっても扱いやすい。刺入した鍼を管に入れたまま鍼柄を軽くたたく手技も多用される。現在の日本では、管鍼がもっとも広く行われており、日本式鍼法の代表といえる。
 昭和になってからも、鍼にはいろいろのくふうが加えられたが、もっとも多く用いられるのは次の三つである。(1)灸頭鍼(きゅうとうしん) 筋肉内にやや深く鍼を刺して直立させ、その鍼柄にもぐさの小塊を巻き、点火して温める方法である。灸法と鍼法を併用したともいえる手法であり、温補(組織を温める)手技として用いられる。(2)皮内鍼 極端に短くて細い鍼を、皮膚に水平になるように1~2ミリ刺し、2枚の絆創膏(ばんそうこう)で固定し、数日間とどめておく方法である。皮膚はもっとも敏感な組織であるため、皮内鍼の知覚に及ぼす影響はきわめて微少であるが、効果は大きい。また、この手法は、その刺激を長時間持続することができるという、従来の鍼法にはない利点ももっている。(3)電気鍼 鍼と電気の相乗効果を目的としたもので、弱いパルス波を鍼に通し、種々の周波数で刺激を加えようとする方法である。この方法は、中国の鍼麻酔において、数時間にわたる持続刺激が弱いパルス波によって操作されたことにヒントを得たものである。最近では、鍼を刺さずに経皮的にパルス波を与えるだけで、ほぼ鍼治療と同等な効果が得られるとしている人もいる。
 このほか、広く行われているものに小児鍼(接触鍼)がある。これは皮膚に鍼を刺入せず、皮膚を鍼で軽く触れる方法である。とくに小児に対しては、これで十分な効果が得られると考えられている。さらに鍼をアルコールまたは電熱で熱し、その先端で皮膚をたたく熱鍼(ねつしん)療法、熱したローラーで広く皮膚を刺激するローラー鍼(しん)など日本で考案された用具や技法は数多い。[間中喜雄・板谷和子]

鍼の奏効機転

一般に鍼のもつ効果としては、〔1〕心理効果、〔2〕脳脊髄(せきずい)反射、〔3〕自律神経反射、〔4〕電位的効果、〔5〕細胞膜に及ぼす作用の五つが考えられている。細胞膜に及ぼす作用とは、鍼の刺激が中枢においてさまざまな内分泌を産出させるということである。たとえば、エンケファリンのような鎮痛作用物質、プロラクチンのような生体機能を調整するホルモンなどである。しかし、こうした五つの効果に加えて、生物学効果ともいうべき作用を鍼においては強調したいと思う。この生物学効果とは以下のようなものである。生物は一般に外界からの刺激(ことに侵襲刺激)を受けると、一時的なストレス反応を生ずるが、これが長期にわたると、これらに順応し、打ち勝つような体制をつくりあげていく。たとえば殺虫剤によってハエは一時的には害を受け、あるものは死滅するが、しだいにこれに感応しなくなり、やがて抵抗力をつけて爆発的に増えるといった反応である。鍼においても、このような侵襲刺激を計画的に与えると、個体の適応性が増すほか、免疫能力も高まり、疾病傾向が減少することはしばしば経験されることである。この効果は、転調効果ともよばれる。[間中喜雄・板谷和子]

臨床的応用

鍼灸家を訪れる患者の多くは頭痛、神経痛、腰痛、三叉(さんさ)神経痛、肩こりなどの痛みを訴える。これらの症状は、もちろん鍼の対象となるが、そのほか、手術後の愁訴、外傷後の愁訴も鍼のよい適応症である。しかし、すべての疼痛(とうつう)が鍼で治るとは限らない。激しい器質的原因による痛み、たとえば末期癌(がん)における痛み、中枢性の痛みなどは鍼によっても難治である。鍼はまた、かなりの種類の麻痺(まひ)(半側麻痺、顔面神経麻痺など)に対して有効である。さらに鍼は、自律神経失調症、ノイローゼ、心身症などの機能的神経疾患に対しても効果をもっている。転調療法の目的で、さまざまなアレルギー性疾患(アトピー性皮膚炎、喘息(ぜんそく)など)にも鍼は用いられる。このほか、無月経、月経困難、ホルモン失調など、鍼が対象とする疾患は数多いが、いずれにしても専門の鍼灸家に相談することを勧めたい。なお、鍼は特殊の治療具を必要とし、刺入法にも技術が要るため、だれでも行えるというものではなく、鍼師の資格をもった人がこれを行っている。
 鍼師になろうとする者は、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(昭和22年法律第217号)の規制を受ける。[間中喜雄・板谷和子]
『間中喜雄著『間中博士のキュウとハリ』(1971・主婦の友社) ▽間中喜雄著『針灸の理論と考え方』(創元医学新書)』

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