針
はり
裁縫,刺繍の基本的道具の一つであり,変型に鉤針,編物針がある。縫い針は上端に糸を通す穴があり,先端は鋭くとがっている。穴の円形の和針 (唐針ともいい,中国から伝わったものも含む) ,穴の楕円形のメリケン針 (アメリカから伝わったもの) があって,それぞれ用途別の太細,長短を日本工業規格で定めている。和針の「三の一」とか「四の二」と表示されているものの,前の数字は,三が木綿用,四が絹用というように5つの用途別の太さを表わし,うしろの数字は曲 (かね) 尺 (1寸≒30.3mm) で,一は1寸1分,二は1寸2分というように長さを表わす。縫い針の歴史は古く旧石器時代の骨角製のものから始って,時代とともに黄金針,青銅針,鉄針,鋼針へと進展してきた。鉄針は中国が起源で,各国へ普及した。鉤針は先端に鉤があり,使用する糸の太さによって大きさが異なる。材質も鋼とプラスチックがある。編物針は,棒針ともいい,まっすぐの棒状で,2~4本を一組とし,材質もさまざまである。
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針【はり】
布や皮革を縫い,留めるための器具。旧石器時代後期,マドレーヌ文化に骨角器のめどのある針が見られるほか,古くから各地に骨製,象牙製,青銅製などの針が見られる。現在使われている針は鋼製で,裁縫用には和針,洋針,ミシン針,特殊針がある。和針は針穴が丸く,絹針,紬(つむぎ)針,木綿針などの別があり,それぞれに縫針,くけ針,しつけ針や穴のない待針などがある。洋針は俗にメリケン針ともいい,明治以後輸入されたもので針穴が細長い。留針には安全ピン,虫ピンなどのほかアクセサリーとしてのピンも各種ある。
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はり【針】
皮や布を糸(ひも)で縫い合わせて衣服などを作るための道具。また,物を留めるための留針(ピンpin)もいうが,ここではおもに縫針needleを中心に述べる。
[沿革]
縫針は,旧石器時代後期には出現しており,洪積世最後のウルム氷期の寒冷な環境のもと,北部ユーラシア各地で狩猟生活を営んでいたホモ・サピエンスたちが,防寒具としての皮製の衣服を改良するなかでくふうされていったものと思われる。最初は剝片石器の一部を尖らせた錐で毛皮に孔を開け,そこに動物の腱や皮を細長くさいて作ったひもなどを通してとじ合わせていたのであろうが,やがて後期旧石器時代前葉のオーリニャック文化にいたって骨や角を細かく自由に加工できるようになると,硬く丈夫なばかりでなく弾性に富みしかも滑らかな骨角製の針様の尖頭器(穿孔具)が作られるようになった。
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はる【針】
〘名〙 「はり(針)」の上代東国方言。
※万葉(8C後)二〇・四四二〇「草枕旅の丸寝の紐絶えば吾が手と付けろこれの波流(ハル)持(も)し」
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世界大百科事典内の針の言及
【針供養】より
…針仕事を休んで古針や折れ針を供養し,裁縫の上達を祈る女性の行事。用の済んだ針を豆腐やこんにゃく,餅などに刺し,川へ流したり近くの社寺へ持ち寄って供養してもらうのが一般的で,全国の広い地域で2月もしくは12月の8日(こと八日)に行われている。…
【蛇婿入り】より
…蛇婿入譚は内容から〈苧環(おだまき)型〉〈水乞(みずこい)型〉〈蛙報恩型〉に大別される。〈苧環型〉は,夜中に娘のところに見知らぬ若い男が通ってくるのを怪しんだ親が,男の着物に糸を通した針を刺させ,男が帰ったあとその糸をたどっていったところ蛇のすみかに至り,そこで蛇の親子の会話を立ち聞きして娘に宿った蛇の子を堕(おろ)す方法を知る,というものである。同じ内容の話が古代の神話や伝説にもみえて,三輪山型神婚説話(三輪山伝説)と呼ばれている。…
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