面影・俤(読み)おもかげ

精選版 日本国語大辞典「面影・俤」の解説

おも‐かげ【面影・俤】

[1] 〘名〙 人の顔や姿、物の様子、情景などで、目の前に実体のないものをさすことが多い。
① 目の前にないものが、あるように目の前に浮かぶこと。また、その姿。記憶に残っている姿。まぼろし。幻影。
※万葉(8C後)三・三九六「陸奥(みちのく)の真野(まの)の草原(かやはら)遠けども面影(おもかげ)にして見ゆといふものを」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「人よりは異なりしけはひ・かたちの、おもかげにつと添ひて思さるるにも」
② 顔かたち。顔つき。おもざし。
古今(905‐914)恋四・六八一「夢にだに見ゆとはみえじあさなあさな我おもかげにはづる身なれば〈伊勢〉」
※源氏(1001‐14頃)若菜上「見しおもかげも、わすれがたくのみなむ、思ひ出でられける」
③ あるものに似た姿。それを思わせるような顔つき、様子。また、はっきりしない姿。
平家(13C前)三「ゆき来の道もさだかならず。青嵐夢を破てその面影も見えざりけり」
※人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)二「此時外面(そとも)に、人の俤(オモカゲ)してければ」
④ 姿。様子。特に、想像で思い浮かべられる物事の様子、情景。
※実隆公記‐文明七年(1475)正月朔日「乱後今年始而有公事。再興之面影珍重珍重」
⑤ 事が過ぎ去ったあとに残されている気配、影響など。なごり。
※東京の三十年(1917)〈田山花袋〉東京の発展「大通りも殆ど渾(すべ)て江戸時代の面影を失ってしまった」
⑥ 歌などで、余情として浮かんでくる姿、情景。
※治承三年十月十八日右大臣兼実歌合(1179)二番「澳津白なみたちわけたらむほど、おもかげおぼえ侍れ」
俳諧去来抄(1702‐04)修行「おもかげは付やうの事也。むかしは多く其事を直に付たり。それを俤(おもかげ)にて付る也。譬へば、草庵に暫く居てはうち破り〈ばせを〉 命嬉しき撰集の沙汰〈去来〉」
⑧ 香の名。分類は伽羅(きゃら)。香りが蘭奢待(らんじゃたい)を思い起こさせるので名付けられたという。〔山上宗二記(1588‐90)〕
[2] (於母影) 訳詩集。一七編。森鴎外ら新声社同人の訳。明治二二年(一八八九)発表。ゲーテ、ハイネらを中心に、バイロンシェークスピア、高青邱(こうせいきゅう)など、東西の詩から収録。和語漢語を使用して新訳を試み、日本の新体詩を発展させるきっかけとなった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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