面影(読み)オモカゲ

デジタル大辞泉 「面影」の意味・読み・例文・類語

おも‐かげ【面影/×俤】

記憶によって心に思い浮かべる顔や姿。「亡き人の―をしのぶ」
あるものを思い起こさせる顔つき・ようす。「目もとに父親の―がある」「古都の―は今やない」
実際には存在しないのに見えるように思えるもの。まぼろし。幻影
「夢に見えつるかたちしたる女、―に見えて、ふと消えうせぬ」〈夕顔
歌論用語で、作品から浮かびあがってくる心象
ことばのやさしく艶なる他、心も―もいたくはなきなり」〈後鳥羽院御口伝
面影付け」の略。
名香の名。香木は伽羅きゃら
[補説]「俤」は国字
[類語]顔付き顔立ち容貌面構え面差し面立ち人相面相容色相好血相形相剣幕面魂表情

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精選版 日本国語大辞典 「面影」の意味・読み・例文・類語

おも‐かげ【面影・俤】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 人の顔や姿、物の様子、情景などで、目の前に実体のないものをさすことが多い。
    1. 目の前にないものが、あるように目の前に浮かぶこと。また、その姿。記憶に残っている姿。まぼろし。幻影。
      1. [初出の実例]「陸奥(みちのく)真野(まの)草原(かやはら)遠けども面影(おもかげ)にして見ゆといふものを」(出典:万葉集(8C後)三・三九六)
      2. 「人よりは異なりしけはひ・かたちの、おもかげにつと添ひて思さるるにも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    2. 顔かたち。顔つき。おもざし。
      1. [初出の実例]「夢にだに見ゆとはみえじあさなあさな我おもかげにはづる身なれば〈伊勢〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋四・六八一)
      2. 「見しおもかげも、わすれがたくのみなむ、思ひ出でられける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    3. あるものに似た姿。それを思わせるような顔つき、様子。また、はっきりしない姿。
      1. [初出の実例]「ゆき来の道もさだかならず。青嵐夢を破てその面影も見えざりけり」(出典:平家物語(13C前)三)
      2. 「此時外面(そとも)に、人の俤(オモカゲ)してければ」(出典:人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)二)
    4. 姿。様子。特に、想像で思い浮かべられる物事の様子、情景。
      1. [初出の実例]「乱後今年始而有公事。再興之面影珍重珍重」(出典:実隆公記‐文明七年(1475)正月朔日)
    5. 事が過ぎ去ったあとに残されている気配、影響など。なごり。
      1. [初出の実例]「大通りも殆ど渾(すべ)て江戸時代の面影を失ってしまった」(出典:東京の三十年(1917)〈田山花袋〉東京の発展)
    6. 歌などで、余情として浮かんでくる姿、情景。
      1. [初出の実例]「澳津白なみたちわけたらむほど、おもかげおぼえ侍れ」(出典:治承三年十月十八日右大臣兼実歌合(1179)二番)
    7. おもかげづけ(面影付)
      1. [初出の実例]「おもかげは付やうの事也。むかしは多く其事を直に付たり。それを俤(おもかげ)にて付る也。譬へば、草庵に暫く居てはうち破り〈ばせを〉 命嬉しき撰集の沙汰去来〉」(出典:俳諧去来抄(1702‐04)修行)
    8. 香の名。分類は伽羅(きゃら)。香りが蘭奢待(らんじゃたい)を思い起こさせるので名付けられたという。〔山上宗二記(1588‐90)〕
  2. [ 2 ] ( 於母影 ) 訳詩集。一七編。森鴎外ら新声社同人の訳。明治二二年(一八八九)発表。ゲーテ、ハイネらを中心に、バイロンシェークスピア高青邱(こうせいきゅう)など、東西の詩から収録。和語、漢語を使用して新訳を試み、日本の新体詩を発展させるきっかけとなった。

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デジタル大辞泉プラス 「面影」の解説

面影

日本のポピュラー音楽。歌は女性歌手、しまざき由理(ゆり)。1975年発売。作詞:佐藤純弥、作曲:菊池俊輔。TBS系で放送されたドラマ「Gメン'75」の主題歌。

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世界大百科事典(旧版)内の面影の言及

【フェデル】より

…次いでアナトール・フランスの同名の小説(1903)を映画化した《クランクビーユ》(1922)が,ドイツの表現主義映画と30年代のフランス映画の〈詩的リアリズム〉の橋渡しとなった作品として評価され,アメリカでも〈映画芸術の父〉といわれたD.W.グリフィス監督に激賞された。その後,アルプス山ろくの寒村を背景に少年と継母の心理的交渉を描いた《雪崩》(1923),写真屋に飾られた写真の女をもとめてさまようというジュール・ロマンのオリジナルシナリオによる〈ユナニミスム文学〉のロマンティックな映画化《面影》(1924),エミール・ゾラ原作の《テレーズ・ラカン》(1928)などをつくり,28年にはフランス国籍をとったが,ロベール・ド・フレールとフランシス・ド・クロアッセの喜劇をもとにした風刺映画《成上りの紳士たち》(1928)が議会と閣僚の威厳を非難するものとして公開禁止になり(1929年になって解除された),失意のうちにハリウッドへ渡り,グレタ・ガルボの最後のサイレント映画《接吻》(1929)を撮るとともに,ガルボ映画《アンナ・クリティ》のドイツ語版(1930)などをつくるが,ハリウッドになじめず31年に帰国した。 同じベルギー出身の脚本家シャルル・スパーク(1903‐75)との共同脚本と夫人のロゼー主演の《外人部隊》(1934),《ミモザ館》《女だけの都》(1935)は1930年代フランス映画の代表作であるにとどまらず,世界映画史を飾る作品に数えられているが,《女だけの都》はナチの侵入後ゲッベルスによって公開を禁止され,フェデルは戦争の間スイスへ避難することを余儀なくされた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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