香美(町)(読み)かみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「香美(町)」の意味・わかりやすい解説

香美(町)
かみ

兵庫県の北西部、美方郡(みかたぐん)にある町。2005年(平成17)美方村岡町(むらおかちょう)、美方町、城崎(きのさき)郡香住町(かすみちょう)が合併して成立。北は日本海に臨み、南西部は鳥取県と接する。南半の東部は蘇武(そぶ)岳、妙見山、鉢伏(はちぶせ)山、赤倉山など1000メートル級の山が続き、町域の8割以上が山林原野である。ほぼ中央を矢田川が北流し、中央部南寄りの地点で北流してきた湯舟川と東岸で合流する。海岸部をJR山陰本線、国道178号が横断し、湯舟川、矢田川の中・上流に沿って国道9号(旧山陰道)、482号が走る。海岸部は香住海岸(国指定名勝)、西接する新温泉町にかけての但馬御火浦(たじまみほのうら)(国指定名勝・天然記念物)などの景勝地に恵まれ山陰海岸国立公園に指定。中・南部は但馬山岳県立自然公園、氷ノ山後山那岐山国定公園(ひょうのせんうしろやまなぎさんこくていこうえん)に含まれる。

 湯舟川、矢田川の中・上流域には縄文早期から弥生古墳各時代の集落が営まれた。湯舟川西岸に前方後円墳高井古墳や線刻壁画をもつ円墳、東岸に金銅装大刀、馬具など豪華な副葬品を出土した円墳の文堂(ぶんどう)古墳などがある。古代には山陰道に沿う高井付近一帯が七美(しつみ)郡衙と考えられており、円面硯などが出土している。なお、1896年(明治29)まで村岡地区・美方地区はほぼ全域が七美郡、香住地区は美含(みくみ)郡に属した。中世は美含荘や皇室領の佐須(さす)荘、七美荘、菟塚(うつか)荘、射添(いそう)荘、小代(おしろ)荘などが成立。矢田川下流域の大乗寺(木造聖観音立像、木造観音立像、木造十一面観音立像は国指定重要文化財)、帝釈寺(海中より拾い上げたと伝える木造聖観音立像は国指定重要文化財)などが知られる。江戸時代には七美郡を領した旗本交代寄合の山名氏が山陰道沿いの村岡に陣屋を設け、村岡は町場も形成されて繁栄した。香住地区は出石藩領、幕府領などで推移した。

 現在の産業は海岸部が漁業と水産加工業が中心で、香住漁港で水揚げされるマツバガニは著名。内陸部は米作のほか山地を利用した二十世紀ナシ、高冷地野菜の栽培、スッポン・アマゴの養殖、「あつた蔓(づる)(優秀な特質を有する但馬牛の系統群を蔓牛という)」に代表される繁殖牛の生産、但馬牛の多頭飼育など。また、海水浴場、キャンプ場、温泉、スキー場など、自然環境を生かした四季型の観光開発にも力を入れている。前述の大乗寺は別名応挙寺とよばれ、円山応挙らの障壁画165点も国の重要文化財に指定されている。北西海岸部にある山陰本線余部橋梁(あまるべきょうりょう)は、1912年(明治45)開通した全長309メートル、高さ41メートルのトレッスル型鉄橋であった。1986年(昭和61)突風のため回送中の列車が転落、工場を直撃して死者6人を出している。2010年、現在のエクストラドーズドPC橋が供用を開始した。面積368.77平方キロメートル、人口1万6064(2020)。

[編集部]


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