百科事典マイペディア 「鳥羽藩」の意味・わかりやすい解説
鳥羽藩【とばはん】
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志摩(しま)国鳥羽(三重県鳥羽市)周辺を領有した藩。鳥羽城は1569年(永禄12)、九鬼(くき)水軍を率いて志摩国一円を支配した九鬼嘉隆(よしたか)が築城した山城(やまじろ)で、彼は97年(慶長2)鳥羽3万石の封を嫡子守隆(もりたか)に譲る。関ヶ原の戦いで守隆は東軍に属し、西軍にくみし自刃した父の隠居料5000石とほかに2万石加増され、ついで大坂の陣での功で1000石を加えられ5万6000石を領有した。1632年(寛永9)守隆没後、三男隆季(たかすえ)と五男久隆(ひさたか)の間で家督争いが起こり、幕府の裁決により、翌年、久隆(3万6000石)は摂津三田(さんだ)、隆季(2万石)は丹波綾部(たんばあやべ)へそれぞれ転封となった。かわって内藤忠重(ただしげ)が常陸真壁(ひたちまかべ)から入封した。内藤氏治世下、志摩一宮(いちのみや)伊雑宮(いざわのみや)と、藩主・伊勢(いせ)皇大神宮との間に神領をめぐる「寛文(かんぶん)事件」が起こった。以後、忠重、忠政(ただまさ)、忠勝(ただかつ)と在封したが、1680年(延宝8)忠勝は4代将軍家綱(いえつな)法会の席上、私憤から丹後宮津城主永井尚長(なおなが)を殺害したため切腹を命ぜられ、所領は没収、一時幕領となる。1681年(天和1)土井利益(とします)が下総古河(しもうさこが)から入封、91年(元禄4)肥前唐津(からつ)へ移封となる。これと交代で唐津より松平乗邑(のりさと)が入封、1710年(宝永7)伊勢亀山(かめやま)へ国替となる。入れ替えに亀山より板倉重治(しげはる)が入封、1717年(享保2)ふたたび亀山に転封。かわって松平光慈(みつちか)(7万石)入封、8年後信濃(しなの)松本へ移封。領主交代の激しかった当藩も、1725年下野烏山(しもつけからすやま)より稲垣昭賢(てるかた)(3万5000石)が入封し、昭央(てるなか)、長以(ながもち)、長続(ながつぐ)、長剛(ながかた)、長明(ながあき)、長行(ながゆき)、長敬(ながひろ)と8代、147年間在封。長続のとき、難破船の貢租米隠匿の「波切(なきり)騒動」(1830)が起こっている。1871年(明治4)廃藩となり、鳥羽県、度会(わたらい)県を経て76年三重県に編入された。
[原田好雄]
『『磯部郷土史』(1963・同書刊行会)』▽『中岡志州著『鳥羽志摩新誌』(1970・中岡書店)』
志摩国(三重県)に置かれた藩。伊勢国司北畠氏に属した九鬼嘉隆が土豪を制圧し,1580年(天正8)鳥羽に入って築城,城は大手を海に開き,〈鳥羽の浮城〉といわれた。〈水軍の将〉として織田信長,豊臣秀吉に仕えて3万5000石の大名となり,守隆のとき5万5000石,久隆のとき3万6000石になって移封。以後,内藤忠重(46年),幕領(8ヵ月),土井利益(10年),松平乗邑(19年),板倉重治(8年),松平光慈(1年)とめまぐるしく藩主が交替したが,1725年(享保10)稲垣昭賢が入り,明治維新まで3万石の譜代藩として続いた。城下町は北側の岩崎,奥谷が侍屋敷で,本町,大里町,横丁,中之郷,藤之郷が町人町であった。町方は,町奉行-町年寄-町名主の機構で支配された。水軍の根拠地であった鳥羽浦は,前面に幾つもの島が横たわって天然の防波堤となり,その間に通じる水路でどこからでも出入りできる良港である。また黒潮に乗って遠州灘を渡り伊豆へ1日で航海できるので,江戸~大坂航路が盛んになるにつれ,廻船の風待港としてにぎわい,〈はしりがね〉と呼ばれる遊女も多数いた。領内は山稼ぎ,漁稼ぎをする貧しい農村が大半で,収穫の不安定な漁村も多く,藩財政は安定しなかった。そこで役家を設定して,夫米,水主米を定量で徴収したが,藩債は累積し,1761年(宝暦11)には伊勢の射和(いざわ)村(現,松阪市)の豪商から1万両の献金を受け,永久に年禄300俵を与える約束をしている。藩札は鳥羽札といわれ,新田開発を試みたが大きな成果はなく,廃藩まで財政難にあえいだ。
執筆者:深谷 克己
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…【稲本 紀昭】
【近世】
戦国時代からこの地を拠点とした九鬼氏は文禄・慶長の役にも出軍した。関ヶ原の戦で東軍に属した九鬼守隆は,1601年(慶長6)所領を安堵されて鳥羽藩主となった(5万5000石)。その後鳥羽藩は内藤忠重,菰野藩預り,土井利益,松平乗邑,板倉重治,松平光慈,幕府直轄,稲垣昭賢と藩主の交替をみ,譜代藩として明治に至った。…
※「鳥羽藩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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