(読み)とんび

精選版 日本国語大辞典 「鳶」の意味・読み・例文・類語

とんび【鳶】

〘名〙
① 「とび(鳶)」の変化した語。《季・冬》
※かた言(1650)四「鳶(とび)を、とんび
② 通りがかりに店先門口のものなどをかすめとる者。鳶が餌をさらうのに擬していう。
※雑俳・あかゑぼし(1702)「覗き居る盗賊(すり)巾着を鳶(トンビ)坂」
③ 「とんびガッパ(鳶合羽)」の略。《季・冬》
※新聞雑誌‐二号・明治四年(1871)五月「袈裟衣、腹かけ股引、トンビブランケットを着る者」
④ 芝居で用いる笛。
※自由学校(1950)〈獅子文六〉不同調「堀君のトンビ(笛)だって、悠長を極めたものでしたな」
⑤ 紙、髪、神をいう人形浄瑠璃社会隠語
※洒落本・金枕遊女相談(1772‐81頃)「なじみの座敷たりとも鉢さかなにかんざしなど入るは、あたまにはしを置き御ぜんすへるといふはんじものか、つねに心懸けたし。トンビタツホニスケシロウ」

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デジタル大辞泉 「鳶」の意味・読み・例文・類語

とび【×鳶/×鵄/×鴟】

タカ科の鳥。全長約60センチ。全身茶色で、翼の下面に白斑がある。尾は凹形。ピーヒョロロと鳴きながら羽ばたかずに輪を描いて飛ぶ。ユーラシアに広く分布漁港市街地に多く、魚や動物の死体を食べる。とんび。
鳶職」の略。
鳶口」の略。
鳶色」の略。
[類語]犬鷲大鷲尾白鷲禿鷲禿鷹

とんび【×鳶】

とび(鳶)1」に同じ。
用もなくうろつく者。また、通りがかりに店先や門口のものを盗む、こそ泥。「廊下
鳶ガッパ」の略。 冬》

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改訂新版 世界大百科事典 「鳶」の意味・わかりやすい解説

鳶 (とび)

建築や土木作業で足場の組立てなど雑務を行う者。鳶職,鳶の者,鳶人足,仕事師ともいう。トビという職名は,彼らが鳶口または鳶と称する樫棒の先に鋼鉄製の鉤(かぎ)をつけた道具を携行することに由来する。鳶口は川狩や木場など木材を扱う者の道具で,火消にも使用され,火消人足も鳶とか鳶の者と呼ばれた。《守貞漫稿》には〈火消人足は平日土木の用を業とし,京坂に云手伝と同き也。火場に出るに各自必ず鳶口と号す具を携ふが故に,彼輩を鳶の者とも云,又仕事師と云〉とある。実際,江戸,大坂ともに火消人足は土木建築の鳶で組織されており,両者は同義で使われた。しかし,建築人足の鳶は必ずしも鳶口を使う者とは限らず,大工の手伝いや杭打ちなどをするため,京坂では手伝い,手伝い人足とも呼ばれた。

 鳶は今日でも土建業者の下請作業に従事しているが,それぞれの縄張りを有していて正月の松飾や祭礼の際の飾付けを請け負ったり,正月の注連飾を売る店を出したりする。頭(かしら)に統率された縄張仕事は,江戸時代に町抱人足だったころの名残とされている。鳶は印袢纏,腹掛,股引姿という粋な服装をし,かつての作業唄に由来する〈木遣り〉を職業歌としてうたい,出初め式に勇壮なはしご乗りを披露するなど特異な風俗や任俠の気風を残している。しかし,社会や生活事情が激変しつつある現在では,鳶風俗は珍しいものになってしまった。
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鳶 (とんび)

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百科事典マイペディア 「鳶」の意味・わかりやすい解説

鳶【とんび】

インバネス

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動植物名よみかた辞典 普及版 「鳶」の解説

鳶 (トビ)

学名:Milvus migrans
動物。ワシタカ科の鳥

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳶」の意味・わかりやすい解説


とび

鳶職

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