爆薬(読み)バクヤク

デジタル大辞泉 「爆薬」の意味・読み・例文・類語

ばく‐やく【爆薬】

火薬類うち、物を破壊するための爆破薬、および爆弾・砲弾を炸裂さくれつさせるための炸薬のこと。ダイナマイトトリニトロトルエンなど。
[類語]火薬硝薬弾薬

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「爆薬」の意味・読み・例文・類語

ばく‐やく【爆薬】

  1. 〘 名詞 〙 物を破壊するのに用いる火薬の類。ダイナマイト・硝安爆薬・TNTなど。爆破薬のほか武器に装填する炸薬(さくやく)起爆剤などを含む。
    1. [初出の実例]「装置なしたる爆薬の導火線(みちび)に火をば点ぜしめ」(出典演歌・軍神広瀬中佐(1904‐05頃)〈不知山人〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「爆薬」の解説

爆薬
バクヤク
high explosives

破壊的爆発の用途に供せられる火薬類.火薬類取締法によれば,火薬類を火薬,爆薬,火工品に分類したものの一つであり,火薬を緩性火薬類というのに対して,爆薬は猛性火薬類と称している.爆薬には,
(1)DDNP雷コウなどの起爆薬
(2)硝安爆薬,カーリットなどの硝酸塩塩素酸塩過塩素酸塩を主とするもの,
(3)ニトログリセリンなどの硝酸エステルおよび硝酸エステルを主とするダイナマイト
(4)1分子中にニトロ基3個以上を含むTNT(2,4,6-トリニトロトルエン)などのニトロ化合物
(5)液体酸素爆薬
(6)そのほかの破壊的爆発の用途に供せられるもの,
などが含まれる.爆薬は雷管や起爆方法を適当に選べば爆ごうして分解し,破壊的爆発の作用をする.爆薬は用法により,軍事用目的と産業用目的に分けられるが,産業用爆薬として世界的に最大の使用量を占めているのはアンホ爆薬で,1960年ころより使われはじめ,それまで主として使われたダイナマイトに代わってきている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「爆薬」の意味・わかりやすい解説

爆薬 (ばくやく)
high explosive

衝撃波を伴う爆ごう(轟)を起こす爆発物をいい,衝撃波を発生せずに爆発的に燃焼する火薬low explosive(powder)と区別される。爆薬が爆ごうすると,それによって発生する衝撃波によって周囲の物体は破壊作用を受ける。爆薬には一次爆薬と二次爆薬がある。前者は打撃,摩擦,加熱などによって確実に起爆される物質で,起爆薬とも呼ばれる。後者は起爆薬または伝爆薬などの助けを借りて,かなりの量のエネルギーを集中的に与えることで初めて確実に爆発する物質で,爆破作業を目的とする爆破薬blasting explosiveや,砲弾などに装てんして炸裂させるための炸薬bursting explosiveとして用いられる。また,Ⅰ型およびⅡ型爆薬と分類する場合もある。Ⅰ型爆薬は比重が高くなるほど爆速が高くなるもので,TNTやRDXのような高性能化合爆薬がこれに属する。Ⅱ型爆薬は比重が高くなると,ある程度までは爆速が高くなるが,それ以上では逆に爆速が低下し,ついには伝爆しなくなる爆薬である。多くの混合工業爆薬や雷汞(らいこう),ニトログアニジンなどがこれに属する。Ⅱ型の爆薬には,ある程度以上の加圧下では爆発しなくなる死圧現象がみられる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「爆薬」の意味・わかりやすい解説

爆薬
ばくやく
high explosive

火薬類のうち、破壊目的で製造されるものであって、爆轟(ばくごう)とよばれる衝撃波を伴う爆発をおこす物質。衝撃波を発生せずに爆発的に燃焼する物質である火薬と区別される。爆薬が爆轟すると、それに伴って発生する衝撃波および空気圧縮波によって周囲の物体は破壊作用を受ける。爆薬には一次爆薬と二次爆薬がある。前者は打撃、摩擦、加熱などによって容易に発火し、しかも確実に爆発する物質で起爆薬ともよばれる。後者は起爆薬や伝爆薬などの助けを借りて初めて確実に爆発する物質で、爆破薬や炸薬(さくやく)として用いられる。

 Ⅰ型およびⅡ型爆薬として分類される爆薬もある。Ⅰ型爆薬は比重を高くすればするほど爆速が高くなるもので、トリニトロトルエン(TNT)やヘキソーゲン(RDX)のような高性能化合爆薬がこれに属する。Ⅱ型爆薬は比重を高くしていくとある程度までは爆速が高くなるが、それ以上では逆に爆速が低下し、ついには伝爆しなくなる爆薬である。多くの混合工業爆薬や雷汞(らいこう)、ニトログアニジンなどがこれに属する。Ⅱ型爆薬にはある程度以上の加圧下では爆発しなくなる死圧現象がみられる。

吉田忠雄・伊達新吾]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「爆薬」の意味・わかりやすい解説

爆薬【ばくやく】

火薬類のうち,デトネーションを起こすものの総称。打撃,摩擦,加熱など外部からの物理的・化学的作用によって起爆する一次爆薬と,一次爆薬によって発生する強力なエネルギーを集中的に与えることで爆発する二次爆薬に分類される。前者に属する爆薬には起爆薬,後者には爆破に用いられる爆破薬や砲弾に装てんして炸裂させる炸薬(さくやく)が属する。炭鉱用のものは特に炭鉱爆薬という。→火薬
→関連項目地雷

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「爆薬」の意味・わかりやすい解説

爆薬
ばくやく
high explosive

デトネーション (爆轟) を呈示しうる火薬類で,爆発的に物を破壊・変形などするのに使用するものをいう。ニトログリセリンを基剤とするダイナマイト,硝酸アンモニウムを基剤とする硝安爆薬,過塩素酸アンモニウムを主剤とするカーリットなどは代表的な爆薬である。ジアゾニトロフェノール,アジ化鉛,アセチレン銀などは比較的少量のエネルギーにより容易にデトネーションを起すので,これらを起爆薬といい,一般の爆薬のデトネーションを誘導するのに用いられる (雷管の作用) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の爆薬の言及

【火薬】より

…広義には火薬類のことを,狭義には発射薬や推進薬のことを火薬と呼ぶ。日本の火薬類取締法では火薬類は火薬,爆薬,火工品の3種に分類され,次のように定義されている。火薬とは推進的爆発の用途に供せられるものであって,火薬類取締法および同法施行規則(以下法令という)で定めるもの,爆薬とは破壊的爆発の用途に供せられるものであって,法令で定めるもの,火工品とは,火薬,爆薬を使用して,ある目的に適するように加工したものであって,法令で定めるもの。…

【軍用爆薬】より

…軍事目的に主として使用される爆薬high explosiveで,砲弾,爆弾,魚雷,ロケットの弾頭,核兵器などに充てんして用いられる。その性能としては,単位容積または単位重量当り大きな威力があること,爆ごう(轟)速度が大きいこと,貯蔵安定性が良いこと,打撃に対する感度が低いこと,などが要求される。…

※「爆薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android