信託銀行(読み)シンタクギンコウ

デジタル大辞泉 「信託銀行」の意味・読み・例文・類語

しんたく‐ぎんこう〔‐ギンカウ〕【信託銀行】

信託業銀行業とを兼営する銀行の中で、信託業務を主な業務とする銀行。投資家から預かった資産を信託財産として保管・管理し、実際の運用を代行する。長期金融と財産管理の両機能をもっている。→投資信託会社

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共同通信ニュース用語解説 「信託銀行」の解説

信託銀行

預金や融資といった通常の銀行業務に加え、個人や企業などが持つ財産を信託の設定によって移転させ、管理・運用する業務を行っている。遺言書の保管や執行など相続に関する業務や、企業の株主名簿を管理する証券代行不動産の売買仲介も手掛ける。巨額の資金を運用する機関投資家の側面もあり、企業の株主総会で議案に賛成するかどうかでも注目されている。

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精選版 日本国語大辞典 「信託銀行」の意味・読み・例文・類語

しんたく‐ぎんこう‥ギンカウ【信託銀行】

  1. 〘 名詞 〙 普通銀行のなかで信託業務を主業とする銀行。貸付信託金銭信託の資金を貸し付け、その利益を受益証券所有者や金銭の委託者に分配する。
    1. [初出の実例]「祖父の死後財産管理を委せてあった信託銀行へゆき」(出典:沈める滝(1955)〈三島由紀夫〉七)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「信託銀行」の意味・わかりやすい解説

信託銀行
しんたくぎんこう

信託業務を兼営する普通銀行のうち、信託業務を主業とするもの。設備資金または長期運転資金などの貸出業務も行える長期金融機関である。

 信託銀行の業務は、銀行業務、信託業務、併営業務の三つに整理できる。銀行業務は普通銀行の行う預貸業務や為替(かわせ)業務をさす。信託業務は「財産を信託の設定により受託者に移転させて、その財産を管理・運用すること」(信託協会による説明)である。具体的には、財産を信託する委託者が、財産の管理や運用を受託者である信託銀行に依頼する。受託者は委託者の意向に沿って信託された財産の管理や運用を行う。そこから生じた利益を受け取ることを委託者から指定された受益者に利益を渡していく仕組みである。信託される財産は多岐にわたるが、代表的なものは金銭、株や債券といった有価証券、不動産、金銭債権などである。併営業務としては、相続関連、不動産売買の仲介、証券代行などがある。このように、信託銀行は、個人向け、企業向けに幅広くサービスを取りそろえている。

 歴史的には、とくに1952年(昭和27)以降に個人貯蓄を基盤に発展した貸付信託(受託した金銭を貸付で運用する信託業務。現在は新規募集が停止されている)は、信託銀行発展の原動力であり、それによって長期金融分野で長期信用銀行と並んで重要な地位を占めた(長期信用銀行は1990年代後半から2000年代前半に消滅)。さらに1960年代から急速に発展した年金信託(企業年金や国民年金基金の資産運用にかかる信託業務)によって機関投資家としての機能も拡大させた。

 1985年以降の金融自由化のなかで、外資系銀行が続々と信託銀行を設立して信託業界に参入し、さらに1993年(平成5)以降、銀行、信託、証券による子会社方式による相互乗入れが可能になり、数多くの信託銀行が設立された。信託銀行数増加に伴う競争激化のなかで、既存の信託銀行の業界での生き残りをかけた合併、銀行と経営統合による共同持株会社の設立が進んだ。

 金融庁によると2020年(令和2)3月時点では、兼営信託金融機関は53機関となっている。機関数は増加傾向にあり、とくに2010年代ごろより高齢化に伴う信託サービスを顧客に提供していく多角化を進める地方銀行の参入が増えている。

[平田英明 2020年10月16日]

『吉村正男著『日経産業シリーズ 信託銀行』(1988・日本経済新聞社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「信託銀行」の意味・わかりやすい解説

信託銀行 (しんたくぎんこう)

信託業と銀行業を兼営する銀行で,長期金融機関でもある。高利回りの貯蓄商品を取り扱う金融機関としても知られている。信託銀行の前身は,1922年に制定された信託業法により営業免許を得た信託会社である。信託会社は第2次大戦前長期金融機関としての地位を誇っていたが,戦後顧客であった資産家層が崩壊し,主力商品であった長期貯蓄の金銭信託がインフレーションにより不振を続けたため苦境に陥った。そのため短期金融業務により局面の打開を図ろうとして,48年に当時の信託会社6社(安田,三井,三菱,住友,日本,第一)は名称を信託銀行と改称して,これまでの信託業務のほかに銀行業務を併営することになった。しかし支店数が少ないため銀行業務の併営のみでは十分でなく,52年に創設された貸付信託によってようやく経営の安定を得,以後再び長期金融機関としての道を歩むことになった。金融機関としての特色は,普通銀行は動的な営業性預金をおもに扱い短期の金融が中心であるのに対し,信託銀行は長期貯蓄である貸付信託や金銭信託を主として扱っているので長期の金融が中心である。また戦前の信託会社は資産家層の財産運用機関の性格が濃かったが,信託銀行は貸付信託を中心に大衆の貯蓄機関としての性格が強くなっている。なお法律上は信託銀行の名称はなく,1943年に制定された〈普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律〉により,普通銀行が信託業務を兼営する形になっているが,実際上は信託業務と関連の付随業務が主業務である。なお,信託銀行には上記の6社(第一は1962年中央と改称)と東洋(1959設立)の7社がある(1996年末現在)。
信託
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「信託銀行」の意味・わかりやすい解説

信託銀行
しんたくぎんこう

信託業務と銀行業務を兼営する銀行のうち,信託を主要業務とし,商号に信託銀行という名称をもつ銀行。長期金融機関の一つ。1922年の信託業法(2004全面改正)に基づいて設立された信託会社は,1943年の「普通銀行等の貯蓄銀行業務または信託業務の兼営等に関する法律」により普通銀行の信託兼営が認められたため,大部分が普通銀行に併合され,信託会社として残ったのは 6社にすぎなかった。さらにこれらの信託会社は 1948年金融機関再建整備法によって普通銀行に改組され,三井信託銀行三菱信託銀行住友信託銀行安田信託銀行日本信託銀行が発足,主として信託業務を行なう今日の信託銀行となった。その後,信託銀行以外で信託業務を兼営する銀行は,しだいに信託部門を分離統合し,東洋信託銀行(→UFJ信託銀行),中央信託銀行が設立された。1990年代に発生した金融危機以後,信託銀行同士の統合が相次いだ。2000年に中央信託銀行と三井信託銀行が合併して中央三井信託銀行を設立,2005年には,すでに日本信託銀行を合併していた三菱信託銀行と UFJ信託銀行が合併して三菱UFJ信託銀行となった。2012年中央三井信託銀行,中央三井アセット信託銀行,住友信託銀行が合併して三井住友信託銀行となった。

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百科事典マイペディア 「信託銀行」の意味・わかりやすい解説

信託銀行【しんたくぎんこう】

信託業務を営む銀行のうち,信託業法に基づく免許を受けていた信託会社が,1948年より銀行法に基づく銀行に転換して信託業務を兼営する形になったもの,および戦後新たに信託銀行として設立されたものをいう。法制上は普通銀行と区別はないが,信託業務を中心にして資金を得,当初は主として設備資金貸出しを行った。その後,貸付信託や財形信託などへと展開し,最近では年金信託などが業務の多くを占めるようになった。現在,安田・三菱・三井・住友・日本・東洋・中央の7信託銀行があり,大和銀行は信託を兼営する。
→関連項目貸付信託銀行市中銀行信託適格年金

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