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日中戦争開始後、日本無産党、日本労働組合全国評議会(全評)、労農派の関係者に対し治安維持法を適用した弾圧事件。1937年(昭和12)12月15日446名(第一次検挙)、翌年2月1日38名(第二次検挙)、計484名が検挙された。また、1937年12月22日には、日本無産党と全評が治安警察法により結社禁止となった。被検挙者の内訳は日本無産党関係265名、全評関係174名、労農派グループ34名、労農派教授グループ11名で、おもな者は加藤勘十(かんじゅう)、鈴木茂三郎(もさぶろう)、高野実、島上善五郎、黒田寿男(ひさお)、岡田宗司(そうじ)、山川均(ひとし)、荒畑寒村(あらはたかんそん)、猪俣津南雄(いのまたつなお)、向坂逸郎(さきさかいつろう)、大森義太郎(よしたろう)(以上第一次)、江田三郎、佐々木更三(こうぞう)、大内兵衛(ひょうえ)、有沢広巳(ひろみ)、美濃部亮吉(みのべりょうきち)、宇野弘蔵(こうぞう)(第二次)らである。検挙理由は、労農派が日本共産党から出生した双生児であり、また日本無産党と全評がコミンテルン第7回大会の方針に呼応して人民戦線の結成を企てたというものであった。この事件は、日中戦争開始後、共産主義者に続いて、これまでは合法的存在であった労農派、社会民主主義者にまで治安維持法の弾圧対象が拡大し、反戦・反ファッショ活動を合法的に展開することはもはや不可能となったことを示していた。裁判では、教授グループについては検察側が犯罪事実を立証できず、多くは第二審で無罪が確定。加藤・鈴木・山川らは第一審、第二審とも有罪であったが、敗戦後治安維持法が廃止されたので、1945年(昭和20)11月免訴となった。
[荒川章二]
『小田中聡樹著『人民戦線事件』(『日本政治裁判史録 昭和・後』所収・1970・第一法規出版)』▽『奥平康弘著『治安維持法小史』(1977・筑摩書房)』
日中戦争開始後の,反ファシズム人民戦線運動を推進した日本無産党,日本労働組合全国評議会(全評)などに対する弾圧事件。共産主義者の組織的な反戦・反ファッショ運動が弾圧で壊滅したのちも,日本無産党(委員長加藤勘十),全評などいわゆる合法左翼団体の反ファッショ人民戦線を目ざす運動が続けられた。しかし当局は1937年12月15日と翌年2月1日,日本無産党,全評の幹部およびその理論的指導者と目された労農派の学者・評論家などを全国いっせいに検挙し,12月22日日本無産党,全評を結社禁止処分にした。被検挙者は,第1次446名,第2次38名で,おもな者は第1次では加藤勘十,鈴木茂三郎,高野実,山川均,猪俣津南雄,大森義太郎,向坂逸郎,黒田寿男ら,第2次では椿繁夫,江田三郎らおよび東大の大内兵衛,有沢広巳,脇村義太郎,法政大の美濃部亮吉,阿部勇,東北大の宇野弘蔵らいわゆる労農派教授グループであった(教授グループ事件)。社会大衆党は事件関係者を除名し,学者・評論家は大学やジャーナリズムの世界から事実上すべて追放された。この事件は,当局が《世界文化》グループ弾圧などとともに,治安維持法の拡大解釈によって共産主義者以外の反戦・反ファッショ運動にも弾圧を拡大するに至った事件で,以後反戦・反ファッショ的運動は合法的に展開することはできなくなった。
執筆者:広川 禎秀
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1937~38年(昭和12~13)の社会民主主義者に対する治安維持法による弾圧事件。34年以降のヨーロッパでの人民戦線運動は,36年のスペイン,フランスの統一戦線政府成立で国際的注目をひいた。日本でも労働組合・無産政党統一運動が進展,とくに左派社会民主主義の全評・労農無産協議会(日本無産党)が熱心であったが,統一運動は右派系の反対で挫折した。両組織の関係者は日中戦争開始後戦争協力体制に転換を図ったが,12月に417人が検挙され,組織は解散を命ぜられた(第1次)。翌年2月大内兵衛(ひょうえ)ら労農派教授11人,佐々木更三(こうぞう)ら24人も検挙された(第2次,教授グループ事件)。
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