悩む(読み)ナヤム

デジタル大辞泉 「悩む」の意味・読み・例文・類語

なや・む【悩む】

[動マ五(四)]
決めかねたり解決の方法が見いだせなかったりして、心を痛める。思いわずらう。「進学就職かで―・む」「恋に―・む若者」「人生に―・む」
対応や処理がむずかしくて苦しむ。困る。「騒音に―・む」「人材不足に―・む企業」
からだの痛みなどに苦しむ。また、病気になる。「頭痛に―・む」「持病のぜんそくに―・む」
とやかく言う。非難する。
「御子もおはせぬ女御の后にゐ給ひぬる事、安からぬ事に世の人―・み申して」〈栄花・花山尋ぬる中納言〉
(動詞の連用形に付いて)その動作が思うようにはかどらない意を表す。「伸び―・む」「行き―・む」
[動マ下二]なやめる」の文語形
[類語](1苦しむわずらもだえる思い煩う思い迷う思い乱れる苦悩する懊悩おうのうする煩悶はんもんする憂悶ゆうもんする苦悶くもんする苦慮する頭を痛める頭を悩ます思い詰める

やくさ・む【悩む】

[動マ四]病気になる。
「このごろが身―・む」〈天武紀・下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「悩む」の意味・読み・例文・類語

なや・む【悩】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙 ( 「なえる(萎)」の派生語か )
    1. 肉体的に苦しむ。難儀する。妊娠や出産で苦しむ。また、病気になる。
      1. [初出の実例]「乃ち廐(うまや)の戸に当りて、労(ナヤム)たまはずして忽に産(あ)れませり」(出典日本書紀(720)推古元年四月(岩崎本訓))
      2. 「身にやむごとなく思ふ人のなやむを聞きて、いかにいかにと、おぼつかなきことをなげくに」(出典:枕草子(10C終)二七六)
    2. 精神的に苦しむ。思いわずらう。当惑する。
      1. [初出の実例]「いぶせくも心にものをなやむかなやよやいかにと問ふ人も無み」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
      2. 「数々の文に気をなやみ人しれぬ便につかはしけるに」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)五)
    3. 思いわずらっていることを口に出して言う。とやかく言う。あれこれと非難する。
      1. [初出の実例]「うち続き、春日の神もいかが思さんと世の人もなやめど」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)四)
    4. 動詞の連用形について、その動作が順調に行なわれない意を表わす。「行きなやむ」など。
      1. [初出の実例]「火の神軻遇突智を生まむとする時に、悶熱(あつかひ)懊悩(ナヤム)」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行四段活用 〙
    1. あれこれ思案・工夫をめぐらして行なう。工面(くめん)する。
      1. [初出の実例]「身をなやみおはしけるを、母人見かね給ひ、ぬきまいらせんと、その毛貫を取て暫なやみ給へども、老眼のさだかならず、見付る事かたくて」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)四)
    2. 取り扱う。あしらう。
      1. [初出の実例]「秤なやむ町人(まちにん)の悴子(せがれ)」(出典:浮世草子・男色大鑑(1687)一)
  3. [ 3 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙なやめる(悩)

悩むの語誌

( 1 )[ 一 ]のように肉体そのものを対象として用いた場合、「病む」は病気や怪我が原因であるのに対し、「悩む」は体の不調全般を意味し、特に、妊娠や出産による場合に用いられる。
( 2 )平安時代には[ 一 ]のように精神的領域にも用いられるようになり、近世になると、[ 一 ]挙例好色五人女」の「気をなやみ」のような句表現が現われ、近代以降、もっぱら精神的苦悩を表現するようになる。


なゆ・む【悩】

  1. 〘 自動詞 マ行四段活用 〙 「なやむ(悩)」の上代東国方言。→あなゆむ(足悩)

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