キリスト教会の教義において,小罪を犯し地獄に行くまでに至らないがすぐには天国へ行けない霊魂が,苦しみを受けながら浄化され最後の審判を待つとされる場所,およびその状態。〈煉獄〉というラテン語purgatoriumはpurgare(〈浄化する〉の意)に由来し,浄罪界とも訳す。ドイツ語でいうFegefeuerは〈浄めの火〉の意。聖書には煉獄について明示した記述はないが,旧約外典の《マカベア書》や,新約の《マタイによる福音書》《ルカによる福音書》などの解釈を根拠に,アウグスティヌス,グレゴリウス1世らラテン教父によって唱えられた。カトリック教会も東方正教会も共にこれを受け継いだが,西方ではとくにスコラ学者によって整備・体系化された。プロテスタント教会は聖書の教えに戻る立場から煉獄を否定した。
煉獄が美術に表されるようになるのは,中世後期以降である。アウクスブルクの祭壇画(16世紀)には,裸体でひしめき,業火の苦しみを受ける霊魂が描かれている。またダンテの《神曲》の中で,ウェルギリウスに導かれたダンテが煉獄をさまようくだりは有名である。ボッティチェリは《神曲》の挿図下絵90余点(1480-1503)でその情景を描いている。
執筆者:浅野 和生
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…また新約聖書にはゲヘナのほかにギリシア以来のハデスの語も用いられているが,これはもっぱら死者の霊の赴くところとされ,ゲヘナが悪しき者に永遠の刑罰を加える場所とされているのと好対照をなしている。 キリスト教の地獄の観念を体系化し,それに感覚的な肉付けを行ったのはカトリック神学であるが,とりわけ地獄と天国のあいだに煉獄(れんごく)を設定したところに特徴がみられる。煉獄は死者が一時的な浄(きよ)めのために赴くところであるが,このような地獄―煉獄―天国の三界遍歴を主題にした宗教文学の代表がダンテの《神曲》である。…
…また新約聖書にはゲヘナのほかにギリシア以来のハデスの語も用いられているが,これはもっぱら死者の霊の赴くところとされ,ゲヘナが悪しき者に永遠の刑罰を加える場所とされているのと好対照をなしている。 キリスト教の地獄の観念を体系化し,それに感覚的な肉付けを行ったのはカトリック神学であるが,とりわけ地獄と天国のあいだに煉獄(れんごく)を設定したところに特徴がみられる。煉獄は死者が一時的な浄(きよ)めのために赴くところであるが,このような地獄―煉獄―天国の三界遍歴を主題にした宗教文学の代表がダンテの《神曲》である。…
※「煉獄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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