愛知[県](読み)あいち

百科事典マイペディア 「愛知[県]」の意味・わかりやすい解説

愛知[県]【あいち】

中部地方南西部,伊勢湾の北および東部を占める県。県庁所在地は名古屋市。東西両文化圏の交錯地にあたり,中部地方の産業・文化の中心県で,名古屋市は中京圏の中核をなす。5172.48km2。741万719人(2010)。〔沿革〕 かつての尾張国三河国2国にあたり,関西と関東の中間に位置する要衝であった。戦国時代織田信長,豊臣秀吉徳川家康輩出家康の子義直が名古屋城を築き(1610年),以後尾張1藩,三河10藩の統治が続いた。また東海道通じ,宮(熱田),吉田(豊橋)など宿場町が発達,東三河は信州を結ぶ三州街道の要地であった。明治以後,尾張が愛知県となり,三河の額田県を合して現在に至った。〔自然〕 知多湾奥に流れ込む境川を境に,西の尾張地方,東の三河地方に分けられる。尾張地方の西半は関東平野に次ぐ日本第2の面積の濃尾平野で一宮市付近を境として東は扇状地洪積台地高燥,南西は低湿で海岸に干拓地が見られる。三河地方との境は知多半島に続く丘陵地。三河地方は矢作(やはぎ)川流域の岡崎平野と豊川流域の豊橋平野のほかは起伏のゆるやかな三河高原で,高い山はない。県南部は知多半島と渥美半島三河湾を囲む。気候は寒暖の差が激しい尾張地方に対し,温暖な三河地方と対照的である。〔産業〕 産業別人口構成は第1次2.8%,第2次34.4%,第3次61.3%(2005)で,典型的な工業県。中京工業地帯にあって各種の工業が発達し,製造品出荷額では35兆4837億円(2003)を上げ,全国1位を占める。尾西(びさい)地域の毛織物,知多市と蒲郡(がまごおり)市の綿織物,名古屋・岡崎両市の化学繊維・綿紡に代表される繊維工業と,瀬戸・常滑(とこなめ)・名古屋各市の窯業在来の代表的産業である。1960年代以降名古屋港南部埋立地を中心に大きく発展した重化学工業では東海市の製鉄トヨタ自動車を擁する豊田・刈谷両市の自動車,名古屋市の車両・航空機などの生産があり,県の輸送用機器の製造品出荷額は全工業の5割以上(2003)を占めている。そのほか高浜市,碧南市の三州瓦,名古屋市緑区の有松絞,半田市の醸造食品の生産も有名。農業も名古屋の大市場をひかえて集約的多角農業が行われ,野菜,豚,鶏は全国の上位を占める。名古屋市近郊の苗木,渥美半島の電照菊,安城市周辺のスイカも特産。水産業では伊勢湾・三河湾のノリ,弥富市のキンギョの養殖に特色がある。観光地では三河湾,愛知高原,飛騨木曾川,天竜奥三河の4国定公園,日本ライン鳳来寺山などがある。〔交通〕 東海道本線・新幹線,東名・名神高速道路など交通幹線が集中し,特に名古屋市は中央本線・関西本線のほか名鉄・近鉄などの私鉄や市営地下鉄が通じ,大交通網を形成している。西春日井郡豊山町に名古屋空港(現・県営名古屋空港)があり,名古屋港は中京経済圏を背景に貿易量が多く,神戸,横浜と並ぶ大貿易港に発展した。2005年2月常滑市に中部国際空港(セントレア)が開港した。
→関連項目中部地方

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報