精選版 日本国語大辞典「じゃ」の解説
じゃ ぢゃ
〘助動〙 (活用は「じゃろ(じゃら)・じゃっ・じゃ・じゃ・〇・〇」。「である」が「であ」を経て変化したもの) 断定の意を表わす。
① 体言・副詞・ある種の助詞に付く。…だ。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)陳勝項籍第一「にっくい人ちゃぞ」
※虎明本狂言・茫々頭(室町末‐近世初)「げにもさやうじゃ、さらばいなかの男にうたをよふでかけうと云て」
② 活用語の連体形または、文相当の句に付く。…のだ。
※史記抄(1477)五「さらう時は隗状とあるがよからうちゃぞ」
※浄瑠璃・曾根崎心中(1703)「ここで晩まで日ぐらしに酒にするじゃとぜいいひて」
③ (連体の用法) 「…にあたる」「…である」の意の資格を表わす。親族に関して用いることが多い。また、漢字の「者」をあてることもある。
※虎明本狂言・武悪(室町末‐近世初)「してしておやじゃ人はなんとしていらるるぞ」
④ (接続助詞「て」に付いて) 軽い敬意を示す。…ておいでだ。
※歌舞伎・仏母摩耶山開帳(1693)二「ヤイ吉彌、旦那殿〈略〉きつう腹を立ててぢゃ」
⑤ (「…じゃ…じゃ」の形で) 事柄を列挙する。…だとか、…だとか。
※史記抄(1477)五「朝廷では心に非(そしり)出ては巷に議へとはとちゃかうちゃと云ぞ」
⑥ 反語を表わす。多くは「何と」などを受ける。…か。
※虎寛本狂言・枕物狂(室町末‐近世初)「何と此百とせに余る祖父が恋をする物じゃ」
⑦ 疑問語を受け、下に「知る」の打消を伴って用いる。→じゃ知らぬ。
[語誌](1)「だ」に対して、室町末期ごろから、主として京都を中心とする地方で用いられた。「である」の語尾を落とした「であ」が縮約して「ぢゃ」となったもの。近世に至って、「じゃ」と書かれることも多くなった。
(2)室町末期ごろまでは連体形に「ぢゃる」という形もあり、過去の表現として「ぢゃける」の形がみられる。「歌謡・閑吟集」の「ただ人(ひと)には、馴れまじ物ぢゃ、なれての後に、はなるるるるるるるるが、大事ぢゃる物」など。
(3)近世、特に後期の上方語では、過去の推量に「ぢゃあった」「ぢゃあらう」などが多くあらわれる。「虎明本狂言・目近籠骨」の「かのうけ取てきた物はなんじゃあったぞ」、「伎・好色伝受‐中」の「いつぞや乗物の中で聞いた儘ぢゃあろう」、「浪花聞書」の「何じゃあろと、何であろうとなり」など。
(4)現代の方言では、「じゃ」は富山、岐阜、愛知各県以西の地方で行なわれ、それ以東で「だ」が専用されるとともに、日本全土を二分している。この西半部では、地域によって「じゃ」が「だ」と併存し、また「や」の形をとるところがある。
(2)室町末期ごろまでは連体形に「ぢゃる」という形もあり、過去の表現として「ぢゃける」の形がみられる。「歌謡・閑吟集」の「ただ人(ひと)には、馴れまじ物ぢゃ、なれての後に、はなるるるるるるるるが、大事ぢゃる物」など。
(3)近世、特に後期の上方語では、過去の推量に「ぢゃあった」「ぢゃあらう」などが多くあらわれる。「虎明本狂言・目近籠骨」の「かのうけ取てきた物はなんじゃあったぞ」、「伎・好色伝受‐中」の「いつぞや乗物の中で聞いた儘ぢゃあろう」、「浪花聞書」の「何じゃあろと、何であろうとなり」など。
(4)現代の方言では、「じゃ」は富山、岐阜、愛知各県以西の地方で行なわれ、それ以東で「だ」が専用されるとともに、日本全土を二分している。この西半部では、地域によって「じゃ」が「だ」と併存し、また「や」の形をとるところがある。
じゃ ぢゃ
〘接続〙 (接続詞「では」のくだけたいい方)
① 前の事柄を受けて、そう仮定すると後の事柄が起こるということを示す。それなら。じゃあ。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「『なに彼様(あん)な奴に知れたって…』『ぢゃ、ちっとかうしてゐ給へ』」
② 前の事柄とのはっきりした関係がなくてことばを続けたり、話題を転換するときに用いる。それでは。じゃあ。
※何処へ(1908)〈正宗白鳥〉一「『ぢゃ二三日内に』と健次に云棄てて」
じゃ ぢゃ
※浄瑠璃・生玉心中(1715か)上「わしゃ畜生じゃござらぬ」
じゃ ぢゃ
〘感動〙 驚いたり、失望したり、あざけったりするときに発する語。やあ。
※虎明本狂言・鞍馬参(室町末‐近世初)「『やいやいたのふだ人の、くらまへまいらせらるる、をだうぐをおこせひ』『じゃ、お道具とは何の事でござるぞと申』」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報