ヌマエビ(読み)ぬまえび

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌマエビ」の意味・わかりやすい解説

ヌマエビ
Paratya compressa

軟甲綱十脚目ヌマエビ科 Atyidae。緑褐色ないし青緑色で,体長は雌 3cm,雄 2cm。額角は長く,まっすぐに突出し,上縁に 13~30棘(多くは 19~22棘で,このうち後方の 1~5棘は頭胸甲上に位置する),下縁に 0~8棘(多くは 2~3棘)をもつ。第1胸脚,第2胸脚は鋏を形成し,先端部には多数の剛毛が密生する。主として河川に生息し,ときに河口汽水域にもすむ。産卵期は夏を中心として相当長く,1回に 1000~5000粒,数回産卵する。孵化した幼生は海で育ち,稚エビになって川をさかのぼる。新潟県千葉県以南の本州,四国,九州,南西諸島に分布する。近縁ヌカエビ近畿地方以北の本州に分布する。釣餌としての需要が高く,養殖も試みられている。ヌマエビ科はおもに熱帯・亜熱帯地域に多くみられ,日本産の代表種として,西日本に分布するミナミヌマエビ Neocaridina denticulata,ヤマトヌマエビ Caridina japonica沖縄県以南の島々に広く分布するトゲナシヌマエビ C. typus などがある。2005年には小笠原諸島に固有のオガサワラヌマエビ Paratya boninensis新種記載され,その後環境省の「絶滅のおそれのある種のレッドリスト」(→レッドデータブック)の絶滅危惧I類に指定された。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌマエビ」の意味・わかりやすい解説

ヌマエビ
ぬまえび / 沼蝦
[学] Paratya compressa

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目ヌマエビ科に属する小形のエビ。体長3センチメートル。北海道を除く日本全国に分布するが、本州中部以南に多い。池沼、湖、川の下流域にすみ、幼生は海で育つ。額角(がっかく)は上縁に14~34歯、下縁に0~8歯をもつが、上縁の後方0~5歯は頭胸甲上にある。第1、第2脚にはさみをもつが、先端に毛の束があり、また腕節の上縁が深くくぼんでいる。西日本の河川に多いいわゆるタエビはミナミヌマエビNeocaridina denticulataで、釣り餌(え)として高価である。

[武田正倫]


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