精選版 日本国語大辞典 「カブ」の意味・読み・例文・類語
カブ
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アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の越年草。カブラともいい、またスズナともよばれ、春の七草の一つ。ヨーロッパあるいはシベリア温帯にわたる地域が原産地とされる。中国へは約2000年前に伝播(でんぱ)し、『斉民要術(せいみんようじゅつ)』(530ころ)には栽培や利用に関する詳細な記述がある。『三国志』で有名な蜀(しょく)の軍師諸葛孔明(しょかつこうめい)が行軍の先々でカブをつくらせ、兵糧の助けとしたので、カブのことを諸葛菜(しょかつさい)とよぶというエピソードがある。日本へは中国を経て、ダイコンよりも古く渡来した。『日本書紀』には、持統天皇(じとうてんのう)の7年3月に、天下に詔して、桑、紵(からむし)、梨、栗、蕪菁(あをな)などを植え、五穀の助けとするよう勧めるとの記載がある。平安時代の『新撰字鏡(しんせんじきょう)』や『本草和名(ほんぞうわみょう)』には阿乎奈(あをな)とあり、『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』では蔓菁、和名阿乎菜、蔓菁根(かぶら)、加布良(かぶら)とある。『延喜式(えんぎしき)』には、根も葉も漬物にして供奉されたとの記載があり、種子は薬用にもされていたほか、栽培法の概要も記されており、平安中期にはかなり重要な野菜であったことがわかる。平安末期の『類聚名義抄(るいじゅうみょうぎしょう)』では、蔓菁根、蕪菁、蕪菁子(なたね)と使い分けの生じたことが知られる。江戸時代には『本朝食鑑』『和漢三才図会』『成形図説』『百姓伝記』『農業全書』『菜譜』などに品種名を伴った記載があり、当時すでに品種が分化していたことがわかる。
夏に播種(はしゅ)すると秋に発芽し、根出葉を茂らせ、根を肥大させる。越冬した翌春にとう立ちして高さ1.5メートルになり、黄色の十字花をつける。根は球形や大根形、勾玉(まがたま)形などに肥大し、その大きさ、形、色彩は品種によりさまざまである。現在都市の市場に出る品種は主として白色の丸カブであるが、地方在来品種のなかには鮮紅色のものや長カブもあり、主として漬物用としてふるさとの味になっている。外国の品種には紫や黄色のものもある。日本在来品種群(アジア系)と西ヨーロッパ系品種群に大別され、ほかに近年の改良育成品種群がある。大まかにみて、在来品種群は西日本、西ヨーロッパ系品種群は東日本に、中部地方を境界にして分布しており、カブの伝播、品種分化を考えるうえで興味ある事実といえる。ただし、例外的な分布をする品種もいくつかある。現在、80ほどの品種があり、千葉、埼玉両県が主産地で、あとは全国で広く栽培されている。
カブの旬(しゅん)は秋から冬であるが、時無(ときなし)カブの系統は周年栽培されて市場に出回る。ダイコンと異なり、耕土がそれほど深くない土地でも栽培できる。間引きと苗のときの害虫防除が重要な作業である。日本在来のカブのなかには、山形県庄内地方の温海(あつみ)カブのように焼畑栽培でつくられるものがあり、文化史的にも興味深い。
[星川清親 2020年11月13日]
おもに漬物として利用される。各地に郷土名産のカブ漬けがあるが、なかでも天保(てんぽう)年間(1830~1844)に始められた京都の聖護院(しょうごいん)カブの千枚漬けや、同じく京都の酸茎菜の漬物、滋賀県の日野菜の桜漬け、長野県の野沢菜の漬物などはとくに有名である。一般に煮物、汁の実、塩漬け、ぬかみそ漬け、酢漬けなどにする。時無系の小カブは盛夏を除いてほぼ一年中市場に出るが、中形から大形のカブは秋から冬にかけて出回る。根部は100グラム中にビタミンCを17ミリグラム含む。葉はビタミンA、Cをそれぞれ1000IU、75ミリグラム含むので、捨てずに有色野菜としていっしょに利用するとよい。かつては米飯の増量材料に、また凶作時のいわゆる「かてもの」として重要であった。家畜飼料用の品種もある。
[星川清親 2020年11月13日]
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