サクラ(桜)(読み)サクラ(英語表記)cherry tree

翻訳|cherry tree

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

サクラ(桜)
サクラ
cherry tree

バラ科サクラ属 Prunusのなかで,美しい花を咲かせる十数種の総称。昔から日本の国花として愛好され,古くはヤマザクラ (山桜) 系統のものが主であったが,今日ではソメイヨシノ (染井吉野) が圧倒的に普及している。葉は互生し,楕円形または倒卵形,縁に鋸歯があり,葉身の基部両側に1対の蜜腺がある。春,葉に先立って,あるいは葉とともに開花する。萼片は5枚,花弁は紅色または白色で,普通5枚が萼筒の上端につく。おしべは多数,めしべは1本。日本の山野に自生したり栽培される種類には,ヤマザクラ,オオシマザクラ,カスミザクラ,サトザクラ (里桜) ,ヒガンザクラ,マメザクラ (豆桜) などがあり,ソメイヨシノはオオシマザクラヒガンザクラとの雑種と考えられている。

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百科事典マイペディアの解説

サクラ(桜)【サクラ】

バラ科サクラ属の樹木の中で花が美しく,観賞されるものを一般にサクラと呼ぶ。アジア東部〜ヒマラヤに固有で,日本にはヤマザクラ,エゾヤマザクラ(オオヤマザクラ),カスミザクラ,オオシマザクラなどのヤマザクラ系の種類と,これに似たチョウジザクラマメザクラミネザクラヒガンザクラが自生し,中国大陸南部,台湾原産のカンヒザクラ(ヒカンザクラ)も暖地に植えられている。 これらのほか,日本では古来観賞用に栽培されていただけに園芸品種が多数あり,これらはその細かい系統いかんにかかわらずサトザクラ(里桜),としてまとめられる。そのうち大多数は広い意味のヤマザクラ系のサクラで,特にオオシマザクラ系統の品種が多い。またヤマザクラ系以外のサクラとの間種と推定される品種も多い。花には一重咲(ソメイヨシノ,寒桜(かんざくら)),八重咲,菊咲,二段咲があり,また種子から数年で開花する幼型(ワカキノサクラ)もできている。花色も白色から,やや濃い桃色までが多いが,緑化して黄緑色となったもの(鬱金(うこん),御衣黄(ぎょいこう))も知られている。子房は1個が多いが,まれに2個のものや,また葉化した品種(普賢象(ふげんぞう),一葉(いちよう),関山(かんざん))もある。 サクラは古来万葉集など詩歌にうたわれ,愛されてきた。ウメに代わって左近の桜が植えられたのは桓武天皇の時代といわれる。八重咲のサクラは平安時代にすでに知られていたが,特に江戸時代に入ってからは多数の品種が育成され,今日に残っているものが多い。用途としては,材は版木として重要で,細工物にもよく,樹皮はタバコ入れなどの細工物となるほか,これから咳(せき)止薬が作られる。八重咲の品種の花を塩漬にしたものは熱湯に入れて祝事に飲用,オオシマザクラの葉は桜餅(もち)を包むのに使う。繁殖は実生(みしょう),接木,挿木などによる。大気汚染には弱い。なおサクランボは同じサクラ属の果樹オウトウ(セイヨウミザクラ)の果実をさす。
→関連項目指標植物万葉植物

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世界大百科事典 第2版の解説

サクラ【サクラ(桜) Prunus】

サクラは古くから日本人に親しまれ,日本の花の代表として海外にまで知られる。一般にサクラと総称しているものは,主として北半球の温帯と暖帯に分布しているバラ科サクラ属サクラ亜属の主として落葉性の樹木で,花がいっせいに開花して美しいものが多く,広く観賞されている。日本にはヤマザクラ,オオヤマザクラをはじめ,カスミザクラ,オオシマザクラ,マメザクラ,エドヒガン,チョウジザクラ,ミヤマザクラタカネザクラなど10種類ほどの自然種を基本として,変種や品種をあわせると約100ほどの種類が野生している。

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世界大百科事典内のサクラ(桜)の言及

【サクランボ(桜坊)】より

…バラ科の落葉果樹。園芸上は核果類に属し,オウトウ(桜桃)という。サクラ類の果実は1個の核をやわらかく多汁な果肉が包みこんでいるので,多くのものが食べられ,ソメイヨシノやヤマザクラの果実も苦くて美味ではないが,子どもが遊びに食べることがある。また食用にするために栽培されるサクラの種類もいくつかある。広い意味でのサクランボはサクラ類の果実を総称するが,園芸上では栽培種の果実をサクランボと称している。そのなかで日本の果樹として重要なものはセイヨウミザクラ(甘果オウトウ)P.avium L.(英名sweet cherry)で,サクランボの名称で市販されている果物は大部分が本種である。…

【ウメ(梅)】より

…中国原産の落葉小高木で,バラ科サクラ属のウメ亜属に分類される(イラスト)。ムメともいう。…

【挿頭】より

…古く男女が自然植物の花や枝葉をめで,これを頭髪にさして飾りとした風習があったが,のち中国から伝わった冠の飾りにつけた髻華(うず)と習合して,ながく年中行事のうちの一部にこの風習が伝えられた。そのおもなものは大嘗会(だいじようえ),賀茂や石清水の臨時祭(使いや舞人,陪従など),政治的な行事では列見や定考(こうじよう)のとき,また踏歌節会(とうかのせちえ)のときなどで,さす花にはフジ,サクラ,ヤマブキ,リンドウ,キク,ササ,カツラなどがあった。これらは,さす人や行事によって種類がちがい,フジの花は大嘗会のとき天皇および祭使が,また列見のとき大臣などが巾子の左にさす。…

【国花】より

… 日本の場合は法律で定められた国花はない。しかし,一般にはサクラないしキクが日本を表徴する花として用いられていることが多い。【野村 通年】。…

【花見】より

…桜の花を観賞するために野山に遊びに行く行事。酒や馳走を用意し,花を見ながら宴を催す。特定の庭園の桜のもとで行う例も多い。現代も盛んで,花の時期には桜の名所は花見客でにぎわう。露地に敷物を敷いて席を設け,飲み食いをし,歌い踊ってさわぐのは,江戸時代に,江戸,大坂,京都などの大都市を中心に発達した庶民の花見の風俗の継承である。元来,花見は個人の趣味ではなく,社会慣習になっていたところに意味がある。中国・近畿・関東地方では,旧暦3月3日か4日に,山に登って飲食をする行事を,花見と称した。…

【吉野】より

…大和国南部の地名。狭義には吉野川流域の吉野山など表吉野をさすが,広義には十津川・北山川流域など奥吉野も含まれる。吉野川沿いの宮滝遺跡は,縄文・弥生以来の複合遺跡であるように,原始以来文化の発展がみられた。《日本書紀》には神武紀から吉野が登場し,吉野国神(くにつかみ),吉野国栖(樔)(くず)などの伝承が著名。宮滝遺跡にあったと推定される吉野宮(よしののみや)は同応神紀に初見し,壬申の乱において大海人(おおあま)皇子(天武天皇)は吉野に逃れてから挙兵,吉野宮にはとくに持統朝にしばしば行幸が行われた。…

【吉野山】より

…奈良県吉野郡吉野町の山。大峰山脈の北端で,金峰山(きんぷせん)(青根ヶ峰)から北西方向につらなる約8kmの山稜部分を称する。大峰山の入口で,金峰山修験本宗の総本山金峯山寺(蔵王堂)があり,また源義経や南朝ゆかりの史跡や伝承地に富む。役行者(えんのぎようじや)によって蔵王権現の神木とされたという桜は,参詣者などの献木により一山を埋め,吉野神宮付近の下千本,如意輪寺付近の中千本,吉野水分(みくまり)神社付近の上千本,西行庵付近の奥千本として有名。…

※「サクラ(桜)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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