日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シャン(ミャンマーの地名)
しゃん
Shan
ミャンマー(ビルマ)東部、シャン高原を占める州。面積15万8222平方キロメートル、人口546万1500(2003推計)。州都はタウンジー。シャン高原は構造的には中国雲貴(うんき/ユンコイ)高原に連続し、その基盤はおもに結晶岩と石灰岩からなり、標高は900~1200メートルである。その上を南北の走向をもつ標高1800~2400メートルの山脈群が走り、一方、サルウィン川とその多くの支流およびイラワディ川水系ミツゲー川などの河谷に帯状の低地が刻まれている。住民は、言語、宗教、生活様式が異なる10に近い民族に分かれる。州人口のなかばを占める仏教徒のシャン人は、高原上に点在する大小の盆地で水稲耕作を行う。彼らは12世紀以来、世襲制首長が統治する多数の小国に分かれていた。山の斜面や稜線(りょうせん)付近には、パラウン人、ワ人、ラフ人、アカ人など狩猟採集と移動農耕に従事する山岳民族が閉鎖的な生活を送っている。産業は、イラワディ川沿岸低地にはみられない温帯気候を利用して茶、コーヒー、タバコ、柑橘(かんきつ)類の栽培、家畜の飼養が行われるほか、サルウィン川流域にはチーク材の伐採、管流(くだなが)しがみられる。北部のボードウィン、南部のマウチで鉛、亜鉛を産し、金や銀も採掘される。鉄道は北部にマンダレー―ラシオ線、中部にタージー―シュエニャウン線があり、道路は州都タウンジーを経てタイ国境に達するものと、ラシオからムセに至るビルマ公路があるが、一般に交通は未発達である。
[酒井敏明]