ヘラクレス(新興企業向け市場)(読み)へらくれす(英語表記)Hercules

翻訳|Hercules

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ヘラクレス(新興企業向け市場)
へらくれす
Hercules

大阪証券取引所(大証。現、大阪取引所)により、2010年(平成22)10月まで運営されていた新興企業向け市場。アメリカにおいて、新興企業に成長機会を与え、投資家に魅力ある投資対象を提供することで、世界最大規模に発展したNASDAQ(ナスダック)が、日本のソフトバンク社と組んで2000年に設立した、ナスダック・ジャパン前身。ナスダック・ジャパンは当初、アメリカ流の取引システムを持ち込もうと試みたが、結局は大証の取引システムを借りて取引することとなり、大証の一部門のような形態でスタートした。

 ナスダック・ジャパンは、ベンチャー企業や新興企業などを発掘し、当時のJASDAQ(ジャスダック)市場や東京証券取引所(東証)内に設立されたマザーズとの間で、新興企業の争奪戦を演じ、市場間競争の幕開けと称された。しかし、当初に期待されたような成果があがらず、発足後2年ほどで撤退を余儀なくされた。その後、大証がナスダック・ジャパンを引き継ぎ、2002年からはヘラクレス名称変更し、新興企業向けの専門市場として、東証におけるマザーズなどと同様の位置づけとなった。

 2008年、大証とJASDAQ市場を運営するジャスダック証券取引所との間で経営統合に向けた協議がまとまり、2009年には大証がジャスダック証券取引所を完全子会社化した。これに伴い、ヘラクレスは2010年、JASDAQ、NEO(ネオ)(2007年8月に開設されたベンチャー企業向けの市場)とともに市場統合され、新JASDAQ市場となった。さらに、2013年1月に東証グループと大証が経営統合し、日本取引所グループ(JPX)が設立されると、現物市場はJPX傘下の東証に集約されることとなった。この結果、JASDAQ市場も東証で開設・運営されていたが、2022年(令和4)4月の東証再編に伴い、新たなスタンダード市場グロース市場に吸収される形で終焉(しゅうえん)を迎えた。

高橋 元 2023年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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